<1981年3月15日発行 第295号>
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目次
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1. 健康相談室 血管神経症
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医学博士 遠藤 仁郎
22才の女子事務員。寒いと手指が白っぽくなり、ひどく冷える。しかし、紫色になったり、シビレたり、痛むなどということはない、とのこと。その日は、3月下旬の暖かい日だったので、手や指に変ったことはなく、脉も血圧も正常。尿にも異常はない。氷水に浸ける試験もやってみたが、特別の反応はなかった。これは、血管に来ている神経の興奮性がたかまって感じやすくなっており、寒さにあって、血管が強く収縮・痙攣するためにおこるものだ(血管神経症)。
軽いうちは、このように、白くなり、つめたくなるだけだが、症状が進むと、紫色になったり、シビレたり痛んだりしだす。さらに進行すると、すっかり血行がとまってしまい、ついには乾いてミイラのようになる(脱疽)こともある。いまのところはただ、それがかんがえられるという程度だから、少しも心配はいらない。しかし、同じ状態がつづいていれば、しだいに亢じてゆくかも知れないし、そうなると、なかなか治りにくくもなるから、いまのうちに予防的の手立てを講じておくのが賢明というものであろう。
原因はなにか
さて、原因はなにか。あるいは、そういう体質に生れついているのかも知れないが、多くは、むしろ、現在の日常生活、あまりにも不自然化されている文明生活、なかでも、食のみだれによっておこる血のにごりや、精神的ストレスにあるようだ。
たべもの
魚をよく食べ、菓子が好き、味つけはふつうだが、野菜ことにナッパ類が少ない、とのことだから、酸性食品が多く、カルシウムが不足がちになっていることが最大の原因らしい。(カルシウムが不足すると神経の興奮性がたかまる。)また、こういう食事では栄養のバランスがみだれており(熱量・蛋白質が多く、それに釣り合わねばならぬミネラル・ビタミン類が不足している)、血がにごってくることも手伝っているだろう。できあいの食べもの、インスタントものなどが多ければなおさらだ。だから、カルシウムが十分にあること。全体としてバランスがよくとれていること。そして、なるべく安全な食品をえらぶことが肝要だ。
カルシウムをとるには
カルシウムにとんだものを食べること。そして、同時に、カルシウムをへらす酸性食品をひかえ、カルシウムを節約するアルカリ性食品を多くすることだ。
ところで、主食品のうち、穀類はカルシウムが少なく、酸性度がつよい。豆類はカルシウムが多く、酸性度はやや低い。イモ類はアルカリ性で、カルシウムもやや多い。蛋白食品では、肉(獣鳥魚介)・卵類は酸性度がつよく、カルシウムは少ない。
もっとも、骨・内臓とも食べられる小魚類はカルシウムにとんでいる。乳はカルシウムにとみアルカリ性。大豆はカルシウムにとみ酸性度はやや低い。野菜・くだものは、いずれもアルカリ性だが、カルシウムの多いものは良質ナッパだけ。すなわち、カルシウムにとって有利なのは、主食では、豆、ことにイモ類。蛋白食では大豆、乳、小魚。そして、野菜・くだもの、とくに良質ナッパを多く、ということになる。
つまり、緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食がよいわけで、せめて青汁だけでも十分に(少なくとも1日2合、もとのナッパ400〜500グラム)のむことだ。なお、調理の際のカルシウムのロスを防ぐため、なるべく簡単にし、自然のままか、自然にちかいかたちで食べること。また、味つけをうすくすること。味つけの砂糖や菓子、ジュース類がすぎるとカルシウムのロスが多くなる。
安全食品にすること
農・蓄・水産用薬や産業廃棄物、あるいは食品添加物の中にも、神経の興奮性に影響するものがないとはいえないから、それらに汚染された食品・加工食品、できあいのインスタントものなど、つとめてさけること。
なお、適度の運動、たんれん、ことに手足の運動、マサツなどで血のめぐりをよくすること。精神的ストレスはつとめてさけること。など、など、日常生活の自然化、合理化をはかってゆけば(つまり、正しい養生法)、病状の進行はおそらく防げるだろう。(55・3)(遠藤)
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2. 食後すぐの胃痛
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医学博士 遠藤 仁郎
22才の若妻、妊娠2ヶ月。食後すぐに胃が痛む、との訴え。
レントゲンで検査したいところだが、妊娠初期なので、うっかりやれない。
食後の胃痛、正しくは胃部(みぞおち)の痛みにもいろいろの原因がある(胃腸、胆のう、膵臓、その他)。胃腸に限ってみても、同じ食後といっても、食後すぐ、箸をおくかおかないうち(あるいは、食事中のこともある)か、せいぜい10分内外のものから、30分〜1時間たってから、というのもある。
胃炎や胃潰瘍など胃の痛みは、早くて30分〜1時間して出るのがふつうで、食後すぐ、あるいは間もなく出ることはあまりない。こういう痛みはたいてい胃ではなくて大腸、つまり便秘によるものだ。食事をし、胃がふくれてくると、反射的に大腸に運動がおこる。それが強いと痛みとして感じられる。
この方は、3日にやっと1回。時には薬をのまねば出ないほどの便秘がある。おそらく、そのための痛みだろう。主食は白米で、副食は動物食品が主で、野菜はきらいでほとんど食べない。味はうすく、菓子は食べないとのこと。これだと、消化のよいものばかりだから、便の分量はどうしても少なくなり、腸の運動がおこりにくいことが原因であろう。
便秘は、母体にだけでなく、胎児にとっても望ましいことではない。それは、便秘そのものによる血のにごりと、便秘をおこすような食事がもともと栄養的に不完全(欠陥)食になっているからだ。だから、妊娠中はとくに便秘しないよう心がくべきであり、それも、薬によってではなく、食べものと運動と習慣とで調節すべきだ。
たべもの
なるべくカス(繊維)の多いものを食べ、便の量をますことと、ナッパ(青汁)を十分そえて栄養的に完全にすること。
主食には、玄米飯、黒パン。イモ、マメ。
蛋白食には、動物食品だけでなく、大豆、ゴマ、ナッツ類を利用。
良質ナッパを主とする野菜類、山菜、海草。オカラ、コンニャク、トコロテンもよかろう。
調理は簡単に。自然のままか、自然にちかいかたちで食べ(調理に手がこむだけビタミン・ミネラルや繊維が失われる)、つけ味はうすく。
間食にはクダモノ。
運動
つとめて運動。とくに腹部の運動。毎日排便の習慣。こうして便通がよくなれば、食後の痛みはなくなり、体調ととのい、胎児の発育にも好影響をあたえる。ただし、ながい習慣はとても一朝一夕にはなおらない。習慣には習慣と気永に根気よくつづけてほしい。(54・10)
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3. 青汁食養生で考えること(5)―食物選択の自由について
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前回参照 |
友成 左近
こういうわけで、食物選択の自由というのは、それも、人々だれしも本性心の底から希求している本当の意味での自由は、食物本来の目的や方法を自ら確かと筋道たてて考えて、それを由りどころにして選択することです。
そしてそれは、食物本来の目的や方法には自然の厳然とした不変の法則があるからです。従って、食物が多種多様にわたって豊富に供給されているからといって、それをよいことに、あれが食べたい、これが食べたいと、ただ思うがままに選択する自由では、とうてい本当の自由は享受できず、従って、心身ともに健やかに生活していくことはできないのです。
あれが食べたい、これが食べたいと思うのは、自らそう思う由りどころが、めいめい生来身につけてきた習慣、とりわけ好き嫌いであり、さらにそれが市販の動向、とりわけ専ら営利を目的にしている企業の情報宣伝にあやつられているからです。そしてそれは、たえず移り変わっていき、それも傾向として、食物本来の法則からますますはずれていくからです。
ところで、こういってしまえば、それはだれにもよく分かっていることであるかも知れませんが、本当の自由は、ただ分かっているだけで享受できるものではなく、日々の実践によって初めて享受できるようになるのです。けれども、この実践はそうは決して容易なことではなく、あれが食べたい、これが食べたいという思いに、絶えず抵抗していかねばならず、そしてこの思いは、たとえば仏教でいう悪業、キリスト教でいう原罪のように、なんとも執拗なのです。であれば、幸い縁あって青汁食養生に心がけている私たちは、こうした本当に自由な食物選択の意義を、より深く理解もし自覚もして、よりいっそう行き届いて心がけたいものです。(つづく)
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次回参照 |
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4. サルの手足に先天性奇形 複合汚染の犠牲?
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【名古屋】
全国31地域52群中、15地域22群のニホンザルに裂手、裂足など先天性四肢奇形が見られた。水や食物が農薬などに複合汚染された結果ではないか―
このほど愛知県犬山市の財団法人モンキーセンターで開かれた「第21回プリマーテス研究会」で「ニホンザル奇形問題研究会」のメンバーがこんな発表をした。人間に最も近いサルの世界にも、環境汚染の“犠牲者”が大量に出てきたわけで、参加者の注目を浴びた。同研究会は昨年8月若手研究者で結成、これまでに31地域52群(約5000匹)を対象に調べたところ、北は房総半島から南は大分県まで、15地域22群のニホンザルに奇形が見られた。その内訳は餌(え)づけ群は16群(32群中)飼育群3群(8群中)捕獲群2群(8群中)野生群1群(4群中)だった。
大分県高崎山などでは餌づけ後2―3年で、京都・嵐山でも7年後に手足の指がない奇形が現れた。最も顕著な例は、兵庫県淡路島と長野県志賀高原の地獄谷。淡路島では、出産固体中に占める奇形固体の割合は45―46年には70%前後に達した(51年は20%に低下)。地獄谷では47年に50%の子ザルが四肢奇形で生まれ、現在も15匹が野園公園で生活している。
同研究会メンバーの好広真一京大動物学教室研修員は「47年のミカン大暴落で淡路島の農民がミカン作りの意欲をなくし、農薬の量を半分に減らした結果だと思うが、その後先天性奇形ザルは減った」と、食物と環境汚染の“因果関係”を説明する。また地獄谷のサルについては、リンゴの除草剤が関係あるのでは、と推測している。同研究会の発表に対し「餌づけをしたため奇形子ザルの死亡率が減り、奇形ザルが増えた」とか“遺伝要因”を重視する反論も出た。しかし、あくまでも環境要因を重視する同研究会では「専門学者の協力を得て発生関係をはっきりさせたい」と強調。外から見えない内臓筋肉、骨などの先天性奇形については「将来全国のニホンザルの死体を集めて十分調べていく必要がある」といっている。
(52・3・14 山陽夕刊)
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5. 大事にしたらアカン
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医学博士 遠藤 仁郎
ふつう、どこでも、患者さんには「お大事に」という。大事にせねばならぬ病人が多いからではあるが、いまは、「お大事」にといわない方がよいばあいが少なくない。「この夏はひどくバテた。そのうえ、時々、足がはれる。心臓か腎臓でも悪いのではないか」といってみえた60才のご隠居。
ご飯はおいしく、よく食べる。肉や魚が好き。ひまで何もすることがないので、コタツにあたってテレビを見ながらお菓子をたべている、とのこと。少しふとり気味だが、血色はよく、どこにも悪いところはない、血圧にも、尿にも異常なし。食べすぎと運動不足のためだ。菓子をへらし、飯や肉や魚もへらし、ナッパをしっかり食べ、つとめてからだを動かすことだ。
うまいものばかり食べて運動しないと、食べたものがあまって脂肪がつく。脂肪がつくと、血管がいたんで心臓や脳の事故のもとになる。なるべく粗末なものを控え目に食べて、せいぜい動く。からだはいじめることが養生で、大事にして、あまやかしたらアカン。(54・11)
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6. うまいものは身につく
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昔から、うまいものは身につく、という。これは、うまく味つけしたもの、というのではなくて、もともとうまいものは、という意味。おなじナッパでも、化学肥料でつくったものと、昔流の自然健康農法でつくったものを、そのまま食べくらべてみると、それが、よくわかる。
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7. ケールのトウ
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これからケールのトウがたちます。種とり用の若干を残して、あとはせいぜい食べることだ。やわらかいところをポキリと折って、サラダに、漬物に、油いため、いり菜、汁の実にしても、とてもおいしいし、次々に出てくるので、かなりの間利用することができる。
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8. 機能が完全
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山田 守之亮
此頃、自家製で1日4合程、多い時は5合近く飲みます。家内が作るのに大変ですが、量が多い程調子がよく、顔にしわがない、顔色が良い、朝から酒を飲んでいるのかといわれる程です。機能が完全に働いている証拠です。有難う存じます。
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9. 老人とカルシウム
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10. みんな弱い
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岡山県 K.K.
3才半の男の子。野菜ぎらいの甘党で、カゼをひきやすく、長びきますとゼンソクのようになり、からだには、いつもシッシンが出て、痒がってガリガリかいては、ひどいキズができてしまいます。ぬり薬をいただいてつけても、一時的なもので、なんとか体質の改善をしてやりたいと思います。私の家は、両親と弟、主人と子供2人の7人家族ですが半健康人ばかり。家事いっさいをまかされていますので、毎日の食事には気をつかっておりますが、みんなの健康管理には頭をいためております。
野菜嫌いと糖分過剰とのためアレルギー体質になっているからです。ご家族みんなの健康がかんばしくないのも同じでしょう。なにはともあれ食改善が大切です。まず、間食の菓子やジュース類をやめて、クダモノにすること。主食のご飯をひかえ、肉や魚や卵などもすぎないようにし、野菜ことに良質ナッパを十分とること。その手はじめとして、家族みんなそろって、毎日青汁をのむこと(こどもは1合、大人は2合以上、多いほどよろしい)。そのためには、ケールを堆肥、石灰、油カス、鶏フンなど有機質肥料で(化学肥料や農薬はいっさいつかわずに)、また年中切らさないよう、つくることをおすすめします。
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11. 青汁でよくなったネフローゼ、コーラで再発
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塩釜市 S.K.
セガレはながい間ネフローゼで悩んでいましたが、青汁食にきりかえて、52年1月には、すっかりよくなり、安堵していました。ところが、また、蛋白が出はじめ、顔がはれて来だしました。いぜん通り、青汁5合、イモ・マメ・ナッパ、ミカンという食事で、お米のご飯は一粒も食べずにいるのに、と不思議でなりませんでした。あるとき、つとめ先へ行きましたら、「お宅の息子さんは、ずいぶんコーラ好きですね」といわれ、ハッとしました。問いただしてみますと、「店の方にたのまれ、買っていって飲んでいた」とのとこ。かねて、コーラはよくないものと聞いていましたが、自分の家で、じっさい、その害を経験し、おどろいています。いらい、プッつりやめ、自然のものばかりの食にして、今では、よほどおちついて来ています。(55・8)
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12. 韓国だより
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釜山市 匿名
先生や、故金重甲氏(ソウル)の青汁運動にならい、ここ釜山で、青汁供給をはじめ、はや6年たちました。初めの頃は、1日わずか1〜2キロのケールを消費する程度でしたが、今では100キロにもなっています。昨年は、TV放送に出演しましたし、新聞にも数回掲載されました。
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13. 私が何時も思うこと
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倉敷市 A.Y.
近所の人が血圧が高いからお医者へ行って薬をもらって毎日飲んでいる。薬をやめたら頭がふらふらするとか。ある人は今年の風邪はひつこいとか。便秘をしてこまるとか。色々のなやみを言っています。青汁を飲んだらと進めて見ますが、にがいとか、飲みにくいとか、言って飲もうとはしません。皆んな病気でくるしむのがよいのかと何時も思います。私は少なくとも青汁を毎日2合は飲まなくてはと思い、遠藤先生のおっしゃるイモ・マメ・ナッパを毎日心掛てたべておれば血圧も高くなく風邪も人が10日かかれば私は4、5日でなおるように思います。毎日便通はあるし身体の調子はよいし出来るかぎりあるく様にして毎日を健康にくらしています。これからも青汁、イモ・マメ・ナッパをつづけるつもりです。
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14. 私も息子も
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福岡県 A.T.
青汁をのみはじめて2年くらいになります。いまでは家族3人のんでいます。わたし(65才)はいぜんから血圧に悩んでいましたが、いまは、全然上りません。手や足にたくさんあった老人アザがすっかりとれてしまい、顔色がよいと皆がほめてくれます。病弱な私ですが、いぜんほど疲れなくなりました。息子(40才)も、仕事がら酒飲む機会が多く、二日酔で困っていましたが、それがなくなったので大変よろこんでいます。
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15. 質問箱
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問
ラジオの栄養解説で、パセリにはビタミンAが多いから、沢山たべるとよくないといっていましたそうでしょうか。
答
本当のビタミンAはとりすぎるとよくありません。しかしパセリのAは、プロビタミンAといって、ビタミンAの前段階のもので本物のAではなく害のない形のものです。なお、本物のAでも、ビタミンCがあれば害作用がなくなります。パセリにはそのCがすごく多いですから、この点でも、心配ないわけです。
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コラム紹介
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