健康と青汁タイトル小 <1979年1月15日発行 第269号>
 目次




1. 高血圧

     医学博士 遠藤 仁郎 

     高血圧には、腎炎や妊娠中毒、あるいは、ある種の内分泌疾患などのばあいにみられる症候性高血圧と、そういう特別な原因のない、ふつう、ただ高血圧といわれている本態性高血圧とがある。
     この本態性高血圧は、いまや、代表的現代病ともいうべきもので、さいきん非常にふえ、中・高年層はもとより、若(青・少)年層にも、しだいに多くなりつつある。
     その成因については、確定的なものはわかっていないが、遺伝的・体質的の傾向(素質)のあることと、食塩(ナトリウム、Na)やカロリーのとりすぎとの関係がいわれている。
     しかし、どうも、それだけではなく、もっと広い、食のあやまりをはじめとする近代的日常生活のあり方そのものに由来しているように思われてならない。

    食塩(Na)のとりすぎ
     食塩を食べないところに高血圧がないこと。
     実験的に、動物ことに幼若動物に食塩を多くあたえると、高血圧をつくることができることなど、たしかに、塩分のとりすぎと高血圧との関係はふかい(唯一の原因とみているものもある)。
     そして、治療的には減塩食・無塩食がすすめられており、予防的にも、なるべく早く、幼児期からの制限が強調されている。
     しかし、体質により、同じ高血圧でも、食塩に過敏なものと、そうでないものとがあり、その制限の効果も、決してすべてにあるわけではない。

    食べすぎ、ふとりすぎ
     高血圧が大食家・肥満家に多いこと。
     戦時中から戦後にかけて食糧が不足し、一般に痩せていた当時は、殆んどないか、ごく少なかった高血圧が、食糧の豊富になるにつれてふえてきたことは、ともに、食べすぎ(ふとりすぎ)との関係をしめしている。
     また、ふとったままでは治りにくく、減食と運動による体重減少が、治療・予防のカギであることも、よく知られている。
     しかし、この影響とて、食塩制限と同様、決して一様ではない。
     つまり、食塩(Na)、カロリーのとりすぎだけが、高血圧の原因のすべてではない。

    生活の不自然化
     ところで、高血圧が、一般に、未開国ほど少なくて、文明のすすんだ国ほど多いこと。わが国でも、以前、開化の度が低く、経済的にもめぐまれず、質素な生活をしていたころには少なかったが、国がひらけ、経済力は充実し、西欧先進国なみの贅沢なくらしができだし、同時に、生存競争は激化し、環境が悪化してくるとともに、急増してきたこと。
     これらの事実からすると、高血圧の多発には、体質的因子(素質)はもとよりだが、ただ食塩やカロリーだけでなく、食全体としてのみだれ、さらに、運動の不足、精神的ストレスの増大、環境のよごれなど、現代文明社会の、あまりにも不自然化し不合理化した日常生活に、より重大なかかわりがあるのではないか。

    食のみだれ
     高血圧家の食は、穀・肉(獣鳥魚介)・卵・乳製品・糖・脂など、高熱量・高蛋白食品にかたより、野菜・果物に乏しい。
     しかも、高度に加工(精製・調理)され、雑多な調味料(食塩・糖・脂のみならず、各種香辛・刺戟物や化学調味料)により濃厚に味つけされた贅美食を飽食し、菓子・酒類も愛好されている。
     つまり、こってり味つけされたご馳走の食いすぎの病気、ともいえるわけだが。
     こういう食では、カロリー、蛋白質ばかりが多く、それらの代謝になくてはならぬアルカリ・ミネラル・ビタミン類ははなはだしく乏しい、という不完全きわまる欠陥栄養になっている。
     ために、蛋白質・脂肪・糖質などの体内処理(代謝)が完全に行われず、いろいろ有害なものができる(血のにごり)だろうが、その際、血管を痙攣し血圧をたかめるようなものができるのではないか。
     それには、また、乱用されているタバコや薬品、氾濫している有害有毒食品、あるいは、運動不足、公害いっぱいの環境、精神的ストレス過剰、などの影響もあろう。
     なお、精神的ストレスは、そのほか、神経性に、血管の反応性をたかめ、痙攣しやすくもするだろう。
     ともあれ、こうした現代の文明社会における諸般の不良因子が、素質(遺伝的・体質的)と複雑にからみあっているところに、その真因はひそんでいるのであろう。
     そして、その予防にも、治療にも、食を中心とするこれら日常生活諸般の合理化・自然化をはかり、代謝を正常化して、「血のにごり」を除くことが根本であろうとかんがえられる。

    食の合理化(完全安全食の少食)
     食の合理化には、減塩、減食(蛋白質・脂肪・糖質は必要の最低限にとどめ)とともに、アルカリ・ミネラル・ビタミンはなるべく豊富に、むしろ、多すぎるくらいにする。
     つまり、バランスのよくとれた、しかも、熱量・蛋白質にたいし、アルカリ・ミネラル・ビタミンに十分余猶のある、完全食にすること。また、なるべく安全な自然食品を主とし、危険な農薬や産業廃棄物に汚染されたり、有害有毒な薬剤・色素・人工調味料などの添加されたもの、そのおそれのある加工・貯蔵・既成食品、インスタントものは、できるだけさけること(安全化)。
     すなわち、完全・安全食の少食がのぞましい。

    食品の吟味

      主食品
       白米はアルカリ・ミネラル・ビタミンが少なく(完全食にするには良質ナッパ約3倍が必要)、腹ごたえが少ないので、つい食べすぎる。
       玄米は、この点でも、栄養の点でもずっとよい(同量のナッパで完全)。
       小麦粉は、ビタミンは多いが(2倍量のナッパで完全)、加工品には添加物の害がないとはいえない。
       ソバ粉はミネラル・ビタミンも多い(同量のナッパで完全)。
       マメ類(同量のナッパで完全)、イモ類(半量のナッパで完全)はさらにすぐれているし、満腹価も大きい。
       で、主食には、米よりは小麦もの。
       むしろ雑穀がよく、マメ・イモはさらによい。

      蛋白食品
       肉類は、一般に、アルカリ・ミネラル・ビタミンに乏しく(完全にするには良質ナッパ2〜3倍が必要)、危険な薬品(飼料中の農薬や添加物など)の汚染があり、加工品は特にそのおそれが大きい。
       また、陸棲動物の脂肪が動脉硬化を原因することは周知のとおり。
       魚介類はこの点安心だし、全体食べられる小魚類は栄養的にもすぐれている(五分の一量のナッパで完全)。
       しかし、海水の汚濁(養殖ものでは飼料にも)には注意せねばならない。
       卵や乳は栄養的にすぐれているが(鶏卵は二分の一量のナッパで、牛乳は十分の一量のナッパで完全)、脂肪は陸棲動物のそれと同じ性質があり、農薬その他の汚染のおそれがないではない。
       そこで、質的には乳もっともすぐれ、次が小魚・卵の順で、肉類はもっとも劣っており、しかも、いずれも、必ずしも安全とはいいきれない。
       大豆には動物蛋白にちかい蛋白質があり、ミネラル・ビタミンにもとむ(同量のナッパで完全)優秀食品であり、農薬その他の汚染の少ない、良質かつ安全な蛋白源だ。

      野菜・果物
       アルカリ・ミネラル・ビタミンともにそろって多いものは良質ナッパ類(ホウレンソウ・フダンソウ以外の、緑色のつよい葉菜類)だけで、果物や白い(無色)野菜はもとより、比較的よい黄色菜でも、とても青ナッパ類には及ばない。
       で、農薬汚染の心配のない良質ナッパ類を主とした野菜・山菜・海藻類を十分多くそえ、なるべく多くを生で食べ、青汁にもする。

      調理・調味
       調味は簡単に。自然のままか、なるべく自然にちかいかたちで食べること。
       調味はうすく。
       塩分だけでなく、香辛・刺戟物はもとより、糖分や化学調味料も少なくする。
       糖分は目にみえない主食、ずいぶんのカロリーになる。
       化学調味料のグルタミン酸ナトリウムは、食塩ほどではないがNaをますことになるから、いずれもすぎると血圧をあげる。

      嗜好品
       ことに菓子には十分気をつけること。
       酒やタバコの害については、よく知られているが、菓子には存外無関心。
       三度の食事は厳重にやっているのに、どうもよくならぬ、といったようなばあい、ここに手ぬかりのあることがよくある。
       菓子・餅・団子・オカキ・パンなど、みな主食。
       カロリーの多いものであることを忘れてはならない。
       酒また同じ。
       やめるかひかえ、少なくとも飲みすぎはつつしむ。

      茶・コーヒー類
       抹茶・緑葉・番茶はよいが、お茶うけの菓子、紅茶・コーヒーでは砂糖に注意。

      タバコ
       血圧をあげる。
       あまり影響はないとの説もあるが、動脉硬化を原因する。
       禁煙。
       せめてできるだけ節煙。

     以上、大ざっぱにいって、食べものの総量をへらし、主食には米よりは雑穀、むしろマメ・イモ。
     蛋白食には肉類よりは乳・小魚、むしろ大豆。
     良質ナッパを主とした野菜類をうんとそえる。
     調理は簡単に、味はうすく。
     嗜好品にも十分気をつける。
     というので、昔から健康長寿食としていわれている食べ方――粗食・少食・淡白食・菜食・生菜食・乳菜食と一致する。

    その実際
      (1)緑葉食・青汁
       まず、青ナッパを主とする野菜・山菜・海藻類をうんと(生ナッパもせめて50〜100グラムはサラダにして)食い、青汁は少なくとも1日3合(もとのナッパ750グラム)はのんでみる。
       4〜5〜6合と多いほど結構。
       そして、蛋白食はすぎないよう、適宜とし、主食の米飯は毎回軽く一杯程度とし、理想体重(身長cmから100〜110をひいたキロ)に保つよう加減する。
       なお、そのためには、食事回数や食順序の工夫も大切。
       すなわち、同じ食量でも、少量づつ頻回に分けて食べる方がふとりにくい。
       また、まず、青汁をのみ、野菜・果物類を食べ、そのあとで主食や蛋白食をとると、十分の満腹感がえられて、実際には、かなり減食することができる。

      (2)しかし、それでも下らなければ、主食をイモかマメ、せめてソバ粉に、肉類をやめて大豆ものにかえてみる(イモ・マメ・ナッパ・青汁食)。

      (3)それでもダメならば、思いきって、2〜3日か数日、青汁だけ1日5〜6合のむか(青汁絶食)、青汁と生ナッパ、果物だけにする(野菜果物日)。
       ついで、イモ・大豆・小魚と、しだいに増して様子をみる。
       これで、大抵は下ってくるものだ。

     血圧が安定してき、調子がよければ(2)にもどし、さらに(1)にもどす。また、逆に、(3)の青汁絶食からはじめてみるのもよい。(血圧が急に上ったときなど特に)。
     これまでも、高血圧の食事としては、減食・菜食ことに生菜食・減塩食がいわれているが、その実行は相当むつかしく、また、ながく続けにくいうらみがあった。
     いったい、高血圧の食の影響は原因的とみるべきものだから、一時的な食療法では、単なる対症薬剤療法と何等えらぶところはない。どうしても、ながく続けられるもの、つまり、常食となるものでなければならない。
     それには、通常食にちかく、しかも、本症にたいし合理的に組合わされたものであることが望ましい。
     緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食は、まさにこの条件をみたすものであり、邦食の欠陥である、穀・肉・糖の偏食を改善するため、野菜ことに緑葉菜を十分に配し、熱量・蛋白質をアルカリ・ミネラル・ビタミンとの間の均衡をはかった完全食だから、ながく続けることは望ましくこそあれ、決して障害をまねく懸念はない。
     なお、ナッパには、食を完全にする栄養分だけでなく、その他にもいろいろな有効成分があって、頭痛・頭重、耳鳴り、メマイなどは早くおさまり、睡眠も便通もよくなって、からだ中がいかにも爽かになる。
     もとより、すべての高血圧にきくわけではないが、熱心にやると、多くのばあい、馬鹿にならぬ効果がある。
     せめて、青汁だけでも十分――少なくとも1日3合以上のんでみてほしい。4〜5〜6合でも多いほどよい。

    その他の合理化運動
     つとめてからだを動かす。
     ことに運動の不足しているばあい、適度の運動はきわめて大切で、この励行によって、最高・最低血圧ともに、しだいに下がってゆく。
     運動そのものの効果(浄血、体重調節など)のほか、精神的リラックスの効も大きい。
     体操、散歩、テニス、ランニング、水泳、その他体力に応ずる運動。
     但し、過激な運動はさけること。

    呼吸運動
     深呼吸、発声、朗笑、歌唱などでも血圧は下がる。
     歌手などつねに呼吸をさかんにするものには高血圧が少ないと、毎日、5分間歌を唱えと、いわれている(Tirala氏歌唱法)。
     呼吸運動による浄血効果や、精神的効果によるものであろう。

    心のやすらぎ
     イライラ、不安緊張など心労がつづくと血圧は上がる。
     なるべくリラックスすること。
     入院して雑事から解放されるだけでも血圧は下がるものだ。
     能力に適応する仕事と十分の休養。
     なお、健康管理には十分細心でなければならないが、病気のことは気にしないこと。
     とりこし苦労するほどつまらぬことはない。

    ねむり
     十分のねむり。

    便通
     毎日快通すること。
     排便時怒責で血圧は急騰する。
     繊維にとんだ完全食、運動ことに腹部の運動とで、毎日、気ばらずに出す習慣をつける。(むつかしければ緩下剤・浣腸もやむをえない)

    入浴
     熱風呂、長風呂をさけ、適温、短時間。

    とくに注意すべきこと
     はげしい運動、はげしい興奮、セックス。
     寒冷時の外出、入浴、便所。
     寒さにさらされると血圧が上がる。
     脱衣するだけ、室外・戸外に出るだけでも急騰し、しばしば事故のもとになる。
     また、冬の夜の排尿にはし瓶使用が無難。


     よく効く薬がいろいろできている。
     そして、血圧が高いとすぐに薬をのむ。
     それで、脳や心臓の血管事故はへったといわれる。
     しかし、降圧剤の売れゆきに見合った死亡率の低下、あるいは余命の延長は、残念ながら、まだ明らかではないようだ。
     しかも、薬はあくまで薬。
     ともすると、厄介な副作用がつきまとう。
     それに、高血圧の多くは、食を中心とした日常生活をあらためることで、かなりよくなる。
     だから、日常生活の建直しをはかることが望ましい。
     いきなり薬に手を出すのは余り賢明とはいえない。
     たとえば、それは、柿の木にのぼっている子供を、引きずりおろすようなもの。
     のぼる必要のないようにしてやらないかぎり、手を放せばまたすぐ上るだろうし、うっかりすると大けがをさせてしまう。
     そんなものだ。
    (53・7)



2. のぞき見記(1)

     医学博士 遠藤 仁郎 

     去年8月、南ドイツのハイデルベルグにいる娘のところに行き、その近郊と、スイス、オーストリをのぞき、帰途、ロンドンにもちょっとたちよってきた。

    樹木と葉の色
     まず目についたのは、大きな樹木が多いことと、その葉の色のよいことだった。
     公園その他、いたるところ、ボダイジュ、プラタナス、カスタニエン(マロニエ)、カシワなどの巨木がそびえたっている。
     ロンドンの公園にはクリの大木もあった。
     山はもとより、平原や丘陵にも森があり、モミ、マツ、カラマツ、ブナなどがうっそうと茂っている。
     木の葉、草の葉は大型でやや部厚い。
     スイス、レマン湖畔のシヨン城の壁をはいのぼっていたツタ、オーストリー・ザルツブルグのモーツァルトの家の裏庭にあったヤブガラシの葉は、ともに、倉敷で見なれたものの倍はあったろう。
     ボダイジュの葉も、私の山の畑のものより、ずっと大きい。
     ロンドンのハイドパークにあった呂桑に似たクワの葉も、はじめ、ボダイジュかと思ったほどで、部厚くてかたそうに見えた。
     そして、もっと目をひいたのは、それらの葉の色。
     黒々とした深緑色をしており、艶が、また、実によい。
     ドイツの南部に、黒い森(Schwarzwald)というところがあるのも、なるほどとうなづけたしだいだ。
     これらは、地味にもより、また、緯度のせいでもあろう。

    老人が多い
     つぎに目をひいたのは、老人の多いこと。
     たいてい夫婦づれだったが、みな、よくふとっており(とくに女性)、杖をもっているもの、ビッコをひいているものも多かった。
     中には、肩にすがってようやく歩いているもの、坂道や階段で難渋しているものも少なくなかった。

    ノッポの若もの
     かれらの多くは、バランスのよくとれた頑丈な体格をしており、背をのばし胸をはって堂々とあるいている。
     そして、頭は比較的大きくみえる。
     ところが、10〜20代の若いところとなると、いやにノッポが多く(日本でもそうなりつつあるが)、きゃしゃで、なで肩の、いかにもひ弱わそうなからだつきだ。
     そして、頭は、比較的小さく、体の中心はももの上部にあり、肩・胸よりは腰〜腿部がよく発達しており、なかには、まるで恐龍を思わせるような超ノッポもいる。
     恐龍といえば、もと、小型で敏捷だったらしいが、ああしたとてつもないドンガラになり、運動が鈍ってくるとともに、急速に滅亡したといわれているが、この若ものたちの姿こそ、まさにそれでないか、と、人類の将来を暗示する不吉な兆しかといった気さえした。

    食料品店
     西欧先進国の一般食が、肉食に偏っていることは、いまさらいうまでもないが、ともかく、その実際を見たいものと、百貨店の食料品売場へつれていってもらった。
     なるほど、生鮮品の大部分(60%くらいか)を占めているのは動物性食品。
     ことに肉類。
     なかでも牛肉ものが主で、つぎに豚・鶏もの。
     魚はごく少ない。
     卵・牛乳(大きなパック入り)もうんとある。
     30%くらいがパン・コーナー。
     さすがパンの国、ずいぶんいろいろならんでいる。
     あと10%くらいのところに野菜と果物。
     トマト、ピーマン、キウリ、ナス、インゲン、レタス、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、パセリ、ニンジン、ダイコン(日本のと同じもの)、赤カブ、タマネギ、ジャガイモ、などなど。
     種類はかなり多いが、青ナッパは少ないし、ダイコンも葉っぱは切りとってあった。
     果物には、リンゴ、ナシ、モモ、ネクタクン、スモモ、アンズ、バナナ、メロン、スイカなど。
     なお、教会や市庁舎の前庭にも野菜・果物市場があったが、内容はだいたい同じ。
     その他、肉類・卵・乳製品やインスタント食品、コーヒー・紅茶類、菓子・酒・ジュース類と、加工食品・貯蔵食品のはんらんしていることは、あるいはわが国以上であろう。

    Reformhaus
     その反動としてだろうかレホルムハウスという、さしづめわが国の自然食品の店といったものがあった。
     健康によいと思われる食べもの、飲みものなんでもある。
     全穀パンの類、小麦胚芽、碾割り麦製品、ビール酵母、ヨーグルト、玄米、大豆、落花生やナッツ類、薬酒など。
     高麗人参もあった。
     むかし、健康食品としてすすめられていた扁桃乳(マンデル・ミルヒ)(扁桃からつくった豆乳ようのもの)のことを聞いてみたが、今はないらしい。
     代りに、マンデル・ムスという、ピーナッツ・バターようのものを見せてくれた。こうした大雑把な観察からだけでも、一般に、肉・乳(蛋白質・脂肪)・糖にかたむき、野菜が不足していることや、加工・貯蔵食品の多いことがうかがえるわけだし、年配のものに肥満体や心臓・足の悪いものの多いこと、若ものにノッポの多いことも、そうした不完全食の結果であることも、よく理解できる(もちろん、運動の不足、その他、あまりにも不自然・不合理化した日常生活の影響があづかっているにちがいなかろうが)。
     そして、これを防ぐためには、肉・脂肪・糖の過食をさけ、野菜・果物、ことに良質ナッパを十分にとるべきだが、ハイデルベルグにものすごく大盛りのサラダを食わせる店があったのは、こうした意味で、興味がふかかった。

    大盛りサラダ
     それは、古くからよく知られている学生カフェ「赤い雄牛」にすぐとなっているSud.Pfanneという店。
     よほど繁昌しているとみえ、なかなか急には席がとれぬところだという。
     私どもが行ったときも、超満員の盛況で、ようやく、いちばん奥まった、調理場のカマド(炭火がたいてある)のわきに陣どることができた。
     目のまえで、注文に応じて、次々に調理してゆく。
     名だいの大盛りサラダは、径30センチもの大皿に、生野菜や、軽く味つけしたサラダの数種類(7〜8種あったろう)を、径7〜8センチの杓子に山もり1杯づつ盛りつけた、祐に1キロはあろうという凄いやつ。
     外人客は、さすが、からだが大きいだけに、平気で平らげていたが、私などようよう半分ちょっとしか食べられなかった。

    気になること
     これにつけても気になるのは、いま、わが国で、あまりにも無批判に西欧風をまね、やたらに肉や脂肪(バター、牛豚脂)や砂糖づくめのご馳走を食って得々としていることだ。
     この状態がこのままつづけば、おそらく、遠からず、わが国も西欧と同じ運命をたどること必定であろう。
     しかも、当の西欧人自身、そのあやまりを反省し、もっと菜食――肉の代りには大豆・ナッツ類、バター・牛豚脂は植物油にするなど――しようとしているほどだのに。
     かれらの二の舞を演じないためには、わが国伝統食のよさはあくまで守り、さらに、十分の良質ナッパをとり、バランスのよくとれた完全食にすること。
     そして、運動の奨励その他、日常生活の自然化・合理化をはからなければならぬ、とつくづく私は思った。

    (つづく)


次回参照

3. 戦慄の恐怖 癌、ガン、ガン

     医学博士 遠藤 仁郎 

    食肉保存剤に発ガン性
    亜硝酸塩 米政府、対策に苦慮

    【ワシントン11日=AP】
     米政府は11日、食肉保存用添加剤としてソーセージ、ハム、ベーコンなどに米国で広く使用されている亜硝酸塩が動物生体にガンを引き起こし、人体に対しても発ガンの可能性があると発表した。
     これは米食品医薬品局(FAD)がマサチューセッツ工科大(MIT)に委託した3年がかりの研究成果として発表したもの。
     しかし米政府はこの研究成果から同添加剤の使用禁止に踏み切るかどうかは未定という。
     この理由として米政府は?亜硝酸塩が危険なボツリヌス中毒に対し有効であり、発ガン性と中毒防止が微妙なバランスにある?亜硝酸塩は米国の全食品の7%を占める食肉、魚肉加工品に使用され、禁止すれば食品流通機構に混乱をもたらし、長期間にわたりこれらの加工食品入手が不可能となる?亜硝酸塩はホウレンソウなどの葉野菜や飲料水に天然の状態で存在し、人体が摂取する亜硝酸塩の80%は、これら天然に存在するもの−を挙げている。
     しかし法律的には、発ガン性物質の食品添加は禁じられており、この問題を管轄するFADおよび農務省は、使用禁止の是非をめぐり困難な選択に直面することになった。
     これまでの研究で、亜硝酸塩は天然のアミノ酸と結びついて強力な発ガン性を有するニトロサミンとなることが知られており、この合成は例えば、ベーコンを強火で焼いた場合、引き起こされる。
     このため消費者運動の間から、乳幼児用食品などへの添加禁止を求める声が上がっていた。
     しかし米政府は、亜硝酸塩そのものは無害との見方から、この要求には応じていなかった。
     だが今回のMITの実験では、亜硝酸塩が動物のリンパセン(腺)に起こしたガンは、ニトロサミンによるものとは明らかに異なったもので、亜硝酸塩そのものにも発ガン性が実証されたとしている。

    (53・8・13 サンケイ)

    脂肪過多は大腸ガンを助長
    予防には繊維質を

    【京都】
     肉類など脂肪分を多く摂り過ぎると大腸ガンにかかりやすくなる−。
     米国ウェイン州立大医学部のN・ナイグロ教授はラットによる動物実験で、体内の脂肪分が直腸、結腸ガンを進行させる大きな要因で、これを防ぐには繊維質の多量摂取が有効なことを突き止めた。
     身近な食事が大腸癌の助長に一役買っていたことが初めてわかったわけで、同教授は27日、京都市での国際大学結腸直腸外科学会で発表した。
     直腸や結腸にできる大腸ガンはこれまで日本では比較的少なく、欧米に比べ約5分の1程度だった。
     しかし最近急激に増え始め、特に若い世代の発症が多くなっている。
     世界的にみると、欧米、オーストラリアなどの肉食国に多く発症し、アジア、アフリカ、南米などでは少ない。
     ナイグロ教授はこうした発生率分布の地理的不均衡に着目。
     大腸ガンと食生活との間には密接な因果関係があると考え、ラットで動物実験をした。
     他の栄養分を一定にしたうえ、脂肪分30%と繊維質10%のえさを与えたラットにアゾクシメタンという発ガン物質を皮下注射、4−5ヵ月後にラットの大腸を調べると、1匹当たり平均8.5個のシュヨウができていた。
     これに対し脂肪分5%のえさだけを与えたラット群で同じ実験をすると、シュヨウは平均4個に半減、さらに脂肪分なしで30%の繊維質のえさだけを与えたグループでは、平均2個のシュヨウしかみられなかった。
    (53・10・27 山陽夕刊)

    たばこに新発がん物質
    強力でしかも多量

     ガンセンター杉村所長は、火をつけたたばこから1分間に2秒だけ35ccずつの煙を吸い込ませる人工喫煙装置を考案。
     ガラス繊維でできたフィルターに付着した物質を、杉村所長らが開発したサルモネラ菌の変異株を使った発がん物質のチェック方法でテストした。
     この方法はサルモネラ菌が発がん物質にふれると突然変異を起こす性質を応用したもので、これまでの研究で、突然変異物質と発ガン物質はほぼ一致することがわかっている。
     普通、たばこには1本当たり17−20ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)のベンツピレンが含まれているとされている。
     ところが、この検査の結果たばこ1本分で、ベンツピレン220−370マイクログラム(1マイクログラムは百万分の1グラム)に相当する突然変異をサルモネラ菌に起こすことがわかった。
     つまり、ベンツピレンが肺がんに寄与しているのは全体の1万分の1以下で、あとはこれまで発見されていない未知の物質が関係しているというわけだ。
     喫煙と肺がんとの関係については、これまで、たばこを吸う人には吸わない人に比べて10倍も肺がんの発生率が高いなどの事実が出されており、これまで原因物質としてたばこのタール分に含まれるベンツピレンのほか、ニコチンの化合物、ニトロソノルニコチンがあげられている。
     このため日本専売公社では最近はタール分やニコチンの少ないたばこの開発に力を入れている。
     しかし、杉村所長らの指摘したナゾの物質が、これまで研究がかなり行われているタール分に存在するかどうかについては否定的な意見が強く、タール分だけを少なくすることで肺がんを少なくできるかどうかはあやしくなった、といえそう。

    杉村国立がんセンター研究所長の話
     まだ正体については見当もつかないが、ぜひ研究したい。
     タールやニコチンを減らす努力はむだではないだろうが、もっとほかの大魚を逃がしているという気がする。
    (50・10・2 朝日)

    サッカリンは発ガンを促進
    米科学アカデミー結論

    【ワシントン4日=AP】
     サッカリンの発ガン作用について研究を進めていた全米科学アカデミーは4日、
    1. サッカリン自体に弱い発ガン性がある
    2. サッカリンには他の物質の発ガン性を高める働きがある
     の理由から、「サッカリンは人間にガンを起こす可能性のある物質とみなすべきである」との結論をまとめた。
     この研究は米議会の要請で行われ、実験にはラット(ネズミの一種)が使われた。
     この結論について同アカデミーでは、サッカリン自体の発ガン性は他のよく知られた発ガン物質に比べると低いとしながらも、他の物質の発ガン性を促進する作用の方がずっと重要な意味を持つかもしれないと指摘。
     また米国の10歳以下の子供の3分の1はサッカリンを口にしており、非常な危険にさらされている、との懸念を表明している。
     サッカリンは米国で販売が許可されている唯一の人工甘味料だが、同アカデミーは政府がサッカリンについてどのような対策をとるべきかは提案していない。
     しかし食品、薬品担当の行政当局は、77年春ごろからサッカリン規制の方向に動いており、今回の結論でこれに一層拍車がかけられることになった。
    (53・11・16 サンケイ)



4. 教育原点の中核(3)
前回参照

    食習慣の形成上から
     第二に、人間は「習慣の束」といわれているように、生活はめいめい身につけている習慣に従って営んでいるのですが、この習慣はいうまでもなく、備えて生まれてきたものではなく、生後の生活でだんだんと身につけてくるものであって、発育成長するというのは一面、生活各面にわたって習慣を身につけていくことです。
     従って乳幼児の間は、この習慣を初めて身につける時期であり、従ってまた、その後の習慣の変遷を軌道づける基礎が形成される時期です。
     そこで、乳幼児の間の養育で、どんなものをどう食べさせるか、それが栄養の法則にかなっているかどうか、ということは、その間の発育成長だけでなく、食習慣の形成に、従ってまた、その後の発育成長に極めて重大なのです。
     ――なお念のため、習慣というのは生活処理の行動様式であって、生後の生活で知能的に学習した常識に裏づけられ、また生得的生理的な欲求が生後の生活で感情的に分化派生した好みに着色されています。
     そしてこれは、「3年たてば三つになる」といわれているように、生後2、3ヶ年間の生活でひと通り身につけて、心身ともに一応一人前の恰好・格式を備えてきます。
     そして、いったん身につけてくると、「三つ子の魂百まで」といわれているように、その後の生活で多少は変わっていきますが、それを基本的に方向づけるようになります。
     そしてこれは、食習慣で格別著しいのです。

    精神面の発達上から
     第三に、乳幼児の間は心身未分化であり、とりわけ精神活動の生理的な土台が発達する時期であって、文字通り「健全な精神は健全な身体に宿る」のです。
     従って、養育で食事をあやまって身体面の発育成長が阻害されると、それだけ精神面の発達が阻害され、そして、いったん阻害されると、身体面と同様に、あとでは容易に取り返せません。
     それに、乳幼児の間の最大の欲求・関心は、食べることと愛護されることであって、栄養の法則にかなった食事を、それも親身にさせると、この欲求・関心がうまくみたされて、心身ともに健やかに発育成長すると共に、円満な性格が形成されます。
     そしてこれは、その後の性格変遷を軌道づける基礎であって、もし食事のさせ方をあやまって、ゆがんだ性格が形成されると、あとでは容易に矯正できません。

    実施上から
     乳幼児の間の養育で食事が最も重要であるのは、この他いろいろわけあることですが、もう一面この食事は、その他の養育面に比べて、実施上とかく不行届になりやすく、間違うことも少なくないので、これには格別細心の注意と非凡の努力が必要であるからであって、それはつぎのようなしだいです。

    養育とりわけ食事には非凡の努力が必要なのは
     人々めいめいの生涯教育で、乳幼児の間の養育が、いうなればその原点として最も重要であるが、この養育で、いうなればその中核として最も重要なのが食事である、というのは前記のようなしだいです。が、このうち、とくに食事は、その他の養育面に比べて、実施上とかく不行届になりやすく、間違うことも少なくないので、これには格別細心の注意と非凡の努力が必要である、というのは要約つぎのようなしだいです。

    食事にはとりわけ手数がかかるため
     まず第一に、乳幼児の間は、早い時期ほど、生活全面にわたって養育されなければ、自分自身では片時も生きてさえいけないほどカ弱いので、この養育は多面にわたり、そのいずれも、それ相当に手数がかかり、この手数には細心の注意が必要です。
     が、このうち(水分の補給も含めた)食事は、哺乳に始まって、補食、離乳食を経て普通食になるのですが、そのいずれも、その他の養育面より、はるかに毎日毎度の手数がかかり、そのうえ、実際どんなものをどう食べさせるか、という点で複雑多岐にわたっています。
     それに乳幼児の胃腸は未発達で、間違った食事の作用が著しいので、この手数には、その度毎に格別細心の注意が必要です。
     もしこれを怠ると、たった一度のことでも、たちまち病気にかかり、生命にかかわることもあります。
     それほどでなくても発育成長が阻害され、また間違った食習慣が身について、心身ともに生涯厄介なハンディをせおうようになります。

    養育にあたる母親に理解が不十分であるため
     第二に、この食事をはじめ、さらに広く養育にあたるのは、早い時期ほど、よほど特殊な事情がない限り生みの母親ですが、それはいうまでもなく、この母親には、乳児の間の栄養に必要な、それも成分その他の性質上、これに代わり、これに優るものが他にない母乳が出るからであり、そのうえ、乳幼児の間の養育に必要な、しかも、これなしには心身ともに健全に成長しない愛情が備わっているからです。
     とはいっても当の母親としては、全く未経験のままに、あるいは一度や二度の経験で養育にあたるので、経験者に見聞もし助言もしてもらい、さらに専門家の指導書もみて、その理解につとめるわけです。
     が、なにぶん経験不足であり、また家事その他にかまけることがあり、それにほかならぬ人間であれば、行き届いて間違いなく理解することは至難です。
     そのうえ経験者の助言にしても専門家の指導書にしても、程度こそあれ、やはりあれこれと不行届や間違いがあるので、なおさらです。
     従って、経験者についての見聞も専門家の指導内容も、格別細心の注意を払って取捨選択すると共に、みずからよく考えて、道筋たてて理解し、さらに、この理解には不行届もあれば間違いもあることを弁えて、たえず補正していくように非凡の努力を払わなければなりません。
     なお念のため、こうした注意と努力で当節とくに重要なことのひとつは、人工乳や離乳食や、さらに広く乳幼児食品などを製販する企業の、専ら営利をねらった巧妙な宣伝にわざわいされないことです。
     従ってまた、経験者の助言も専門家の指導書も、そうした宣伝をそのまま伝え、神学的な理由づけまでしている場合があるので、そこは賢明に分別することです。

    乳幼児は意思表示が微弱である
     第三に、よく心がけて理解しても、乳幼児にはめいめい個人差があるので、それは、見聞した経験者が養育した乳幼児についてであり、また、平均化し標準化した乳幼児についてであって、当の乳幼児にはそのままあてはまらないところがいろいろあるわけです。
     それに、養育にあたる母親の生活条件が、家族関係や職業関係その他で、これまためいめい異なっているので、なおさらです。
     そこで、養育とりわけ食事で、どんなものをどう食べさせるかについては、当の乳幼児の個性と実状をたえずよくみて、それにうまく適合するように工夫していかねばなりません。
     ところが、乳幼児は、なにぶん意思表示が微弱であり、しかも日々の変わり方もはげしく、それに母親としても、つい他事にかまけることがあるので、これにはつねづね細心の注意と非凡の努力が必要です。
     なお念のため、こうした点で間違いやすいことのひとつは、毎日毎度の食量を専門家の指導書などできめてかかって、食事の度毎にムリに食べさせることです。
     もしこんなことをすると、肥満をまねいたり、心理的に拒否反応を示すようになることがあるので、当の乳幼児の個人差に適合する食量にすることが大切であって、そのひとつの目安は、きげんがよいこと、快活に活動していること、食事の度毎においしそうに食べることです。

    食習慣の是正が母親に容易でないため
     もうひとつ第四に、これが最も重大なことですが、食事はなにぶん日常卑近なことであるため、どんなものをどう食べさせるかということは、養育にあたる母親の食習慣、とりわけ好みのままになるのが実状です。
     たとえ乳幼児だけには特別なものを食べさせ、そこをよく言ってきかせても、そうはうまく食べてくれないのであって、それは、しつけることができるのは、当の乳幼児が周囲の人々のまねをするからです。
     従って、健全に発育成長をするような正しい食事をさせるには、周囲の人々、とりわけ親しく養育にあたる母親が、平素から栄養の法則にかなった正しい食事をすることが肝要であって、もし間違っていたら是正しなければならないのですが、これが容易なことではないのが実状です。
     そこで、乳幼児の食事には、当の母親としては、どんなものをどう食べさせるか、ということだけでなく、そのまえに(自分自身の健康増進のためにも)自分の食習慣をトクと反省して是正するように非凡の努力を払うことが肝要です。
     乳幼児の養育とりわけ食事には、格別細心の注意と非凡の努力が必要であるというのは、この他いろいろわけあることですが、それでは実際、どんなものをどう食べさせたらよいかというと、その要領はつぎの通りです。

    (つづく)


次号参照



5. 健康と病気の分れ道(3)
前回参照

    東京都 T.T. 

     人が取り入れる食物は、水分と共に口の中で破砕され、唾液を加えて胃に送られ、更に胃液が追加され、3時間以内には小腸まで送り出されます。
     ここでは膵液、胆汁、腸液から成るビタミンその他の消化液の作用で、澱粉は葡萄糖に、蛋白はアミノ酸に、脂肪はグリセリンと脂肪酸に分解され、水分に伴われて腸壁から吸収されます。
     毎日分泌される消化液は予想外に大きな量で、略々唾液が1リットル、胃液が2乃至3リットル、胆汁並に膵液が1リットルと言われています。
     これ程大量のものを消化吸収するため、小腸内壁には沢山の凹凸があって、これを平面に引延ばすと百畳敷位の面積になるそうです。
     日本人がとる食物の特長は繊維分が多いために、排泄物の量は欧米人の2倍が普通とのことであります。
     元来人の臓器は食物の中から必要な栄養素を吸収し、過剰なものは選択的に排泄処理される機能を備えていますが、その能力にも当然限界がある筈です。
     勿論食品中の有害成分についても、たとえ添加物や人為的に導入された残留農薬等がないとしても、自然食品中の有害成分を選択排除する作用があると思われます。
     最近国立ガンセンターの研究から、自然界の殆んどの植物に可成り多量のフラボン誘導体というフルーツのカビ防止剤と同じ成分が発見されて問題になっています。
     従って食品から有害物質を完全に駆逐することは不可能であります。
     要するにこれらを臓器の選択能力の限界内に止めるために、なるべく混食に心掛けてバランスを取り乍ら、その影響を少なくすることが必要ではないでしょうか。
     根強い自然食信仰は世界的な傾向のようで、米国のスーパーではフランス産の天然ミネラルウォータがブームを呼んでいると聞いています。
     然し天然の地下水でもすべて安全とは言えない訳で、現在九州の地熱発電所で汲上げられている熱水には、最も危険な砒素が発見されて放流することができず、わざわざこれを地中深く返して公害を防ぐ方法を講じています。
     また数億円の工費を見込んだ脱砒素プラントを開発して、熱水の熱量を熱交換器を通じて温泉に移し、これを利用しようとしています。
     このように天然物質でさえ有害成分の選択が必要であるのに様々な添加物が人為的に食品に加えられたり更に洗剤、農薬、殺虫剤等の残留成分が人体に流れ込むことを考えますと疾病の危険はもはや容易に避けられないような気がいたします。
     一度病気にかかれば勿論医療の力を借りて、これを恢復せねばなりませんが、治療に欠かせない投薬がまた副作用という機能障害を伴う危険があります。生体の機能を一方的に食物だけで論ずることは間違いであるかも知れません。
     実際にはその時々の体の状態や、生活環境例えば空気や日光、運動等が大きく生理作用を支配するものと思われます。
     この点で北九州折尾に開設される産業医科大学の教育方針は大いに注目すべきではないでしょうか。
     労働行政の面から新しい産業医の養成を目的にしていますが、臨床医学の上に、労働衛生、生態学、人間工学等を幅広く取り入れて、治療だけに片寄らない福祉対策のための予防医学に重点が置かれています。
     現状では環境公害を完全に取除くことは不可能でありますが、少なくとも環境因子と人間の健康との関係が追求されてゆく中から、予防医学の思想が力強く芽生えて来ることが期待できるからであります。


次号参照

6. 高血圧と食塩

     T.Kawasaki氏らが、本態性高血圧の19名を、Na過敏群と非過敏群とに分けて、Na(食塩)負荷の影響をしらべたところによると、過敏群では、高Na食で、Naの排出が悪く(多く残留し)、体重が増し、血圧は著明に上った。が、非過敏群では、Naの排泄がよくて、体重の増加は少なく、血圧の上昇も著明でなかった。

    (Am.J.Med.64:193.1978)



7. 高血圧と日常

     気温が下ると血圧は上る。
     とくに、温い室内から寒い室外に出るとき、急に上る。
     食事や運動でも上る。

    飲酒
     はじめ上り、のみしだいに下る。
     酔いざめの時、また上る。
     タバコはあまり影響しないらしい。

    排尿
     尿意があると上り、排尿で下る。
     深呼吸数回で下る。

    入浴
     脱衣で急に上り、入浴を終えた後から1〜2時間は下っている。



8. 高血圧

     正常血圧と高血圧とを画する明確な線はひきにくい。
     WHO(世界保健機構)では、一応の目安として、

        最高140−最低90以下を正常。
          160−  95以上を高血圧。

     年令別では、男性も女性も、

        20〜29才で、150−90以上、
        30〜64才で、160−95以上、
         65才以上は、175−95以上

    を高血圧とすべきだ、
    としている。



9. 私のばあい

     おやじは酒好きで、53才の若さで脳溢血。
     おふくろは、明治9年9月9日生れの、ねっからの苦労性だと自分でもいっていたが、おやじの死後、いっそう気苦労が多かったのであろう、50代から、260以上もの高血圧。
     食養生はあまり守らず、秋にはけわしい山の茸狩りに出かけたりなどしていたが、75才で脳溢血。
     父方の祖父母についてははっきりしないが、母方は二人とも脳溢血。
     そして、男2人、女4人の6人兄弟のうち、兄と妹3人(いずれも肥満型)に高血圧があるから、遺伝関係はかなり濃厚。
     そこで、これをいかに防ぐかは、中年以後の私にとっては、いわばライフ・テーマだったわけだが、43〜4のころから、ナッパ、青汁中心の食をつづけているためか、あるいは痩せだちのせいか(高血圧のない妹の一人もやせ型)、最高血圧140以上になったことは一度もなく、78才の今でも120〜30/70〜80というところで、至極快的な毎日をおくっている。

    (53・7)



10. 流感にもかからず

    高知市 H.K. 

     今年は、大流行した流感にもかかりませず、元気にすごすことができました。
     ケールのおかげとよろこんでおります。



11. 巨大潰瘍が40日で

    札幌市 H.T. 

     主人が、胸やけがする、胃が痛い、食べられないといい出したのは3月下旬。
     近くの医院で薬をいただき。粥や軟かいものを食べながら、1週間すぎても、10日過ぎてもよくならず、血液、血圧、尿、肝臓など検査しても異常なく、心因性のもの、様子をみよう、とのことでしたが、吐気を伴うようになり、会社にもビニール袋持参でゆくようになりました。
     チョコレート色のものを吐いたので、残る検査はレントゲンと、バリウムをのんで胃を写し、巨大な胃潰瘍が発見され、すぐ入院をいわれました。
     こんな大きいの見たことがない、と先生が驚かれるくらいで、指3本ははいると申しておりました。
     食事はすすまず、吐くのくりかえして、体力は衰え、痛みもあって起き上ることもできなくなりました。
     出血をとめるため絶対安静。止血、栄養補給、痛みどめの点滴が毎日つづけられました。
     昼間はいくぶんよいのですが、夜は痛みのためねむれず、注射しても2〜3時間、という日が続きました。

     入院の6日目、青汁がよいと聞き、「青汁と健康」という本をもとめ、さっそく試してみました。
     北国の4月、どこにも青いものはなく、市場で青いキャベツ、ミツバ、春菊などをもとめ、ミキサーで2合位の青汁をしぼり、飲ませました。
     その夜から、ピタリと痛がとまり、あまりのききようにびっくりいたしました。

     それからは、毎日、青い野菜を夢中で買求め、せっせとのませました。
     本の後の方に、胃潰瘍がなおった体験が出ておりました。
     これを何度も何度もくりかえし読み、青汁で切らずになおせると、主人と二人して励ましあいました。
     本当に、青汁とめぐりあい、青汁のことを知ってよかったと思っております。
     痛みがとまると、食欲は出る、寝れるというぐあいで、快方にむかい、検査、検査で1週間で3キロも減った体重も、少しづつ増えだし、一安心できるようになりました。

     先生は、破れて腹膜をおこさないかと、そればかり心配され、手術をすすめます。大きく深いので、内科的にはながくかかる、はやく退院したいなら手術と、回診のたびにいわれる。
     入院2週間後のレントゲンで、潰瘍は半分くらいになっていました。
     先生は、信じられず、こんな極端に小さくなるものでない、半分になったといってもまだまだ大きい。
     とまたしても手術をすすめます。

     青汁がよいことは十分分かりましたが、市販の野菜しかないので、農薬のことが心配になり、粉末の青汁を大阪からとりよせ、大サジ山もり1杯づつ1日3回、オブラートに包んでのみました。
     病院の食事といえば、健康人とまったく同じなので、青汁とともに、イモ、マメ、牛乳中心の徹底した食事とし、砂糖をひかえ、食欲はあっても腹七〜八分におさえ、退屈もてつだって、あれこれ食べたがりましたが、我慢してもらいました。
     体験記に、40日でなおったとあったので、それを目標にと心にきめ頑張りました。

     5月8日レントゲン、入院して丁度40日目です。
     結果は大変良好、ほとんどないとのことで、お医者様もびっくり。
     「新幹線なみでしたね。今だからいうけれど、切らずにすむものはその方がよいのです。手術すると10年くらいは寿命が縮まるし、手術後食物が少ししか食べられず、体力がおちる。生命保険でも、内科的になおした人は健康人並の扱いだが、手術した人はいろいろ制約がつけられる」
     と話されるのです。
     切らずで本当によかったと、しみじみ思いました。
     2日して会社へ出ましたが、心配した疲れもなく、元気いっぱい通勤しています。

     薬はつづけていましたが、退院して3週間のレントゲン検査では、全く異常なしというので、薬もやめました。
     手術をすすめられ、内科的になおしても3ヶ月はかかるといわれたのを、40日で退院できたのも、みな青汁のおかげと感謝いたしております。
     こんなによいものを知らずに手術されてる方々がお気の毒で仕方ありません。
     今後は、ひろく、知人、友人にご紹介したく思っているところでございます。
     主人は、これからも、ずっと続けると、せっせと飲んでおります。
     市販品を考慮中とありましたが、一日もはやく、誰れでも、何処でも、入手できるようになることを願っております。



12. 東北へ出張

     会長は、去る10月下旬、東北へ出張。
     新庄では、子供の健康と青汁について、山形と塩釜では、青汁よもやま話をし、その間、晴天に恵まれた1日、全山紅葉の葉山でナメコ狩をたのしんだ。
     なお、新庄では再生不良性貧血によかった、と報告された方があったし、山形にはクッシング病のよくなった方がいられた。
     また、塩釜では不治といわれたネフローゼの快癒例の話があり、いずれも難病であるだけに、感銘がふかかった。



13. 質問箱 冬には毎年ツグミに……

    岡山県 K. 


     冬には毎年ツグミに食い荒らされます。どうすればよいでしょう


     農協に鳥よけの網があります。これをかぶせてみて下さい。。



 コラム紹介

     仙法はひろく八荒を愛し、
     人を視ること己の如くならんことを要す

    抱朴子



     誰れも彼れも欲呆けて何も彼も狂ってしまった。
     このままではやがてわが国も亡ぶほかないだろう。
     しあわせのもとは健康
     そのまたもとは良質ナッパ
     うんと食うこと
     医の理論が論じられるのは、
     そのみだれの目にあまるものがあるからであり、
     健康図書が氾濫しているのは、
     不健康なものが多いこと、
     そして、医療にたいする不信不満の多いことをしめすものだ



    心正しければ事正し
    心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神やまもらん

    ソクラテス曰く
    若者は学ばねばならぬ。
    成人は善行にいそしまねばならぬ。
    老人は文武すべての職より身をひき
    悠々自適何の努めにも拘束されずに在らねばならぬ
     モンテーニュ 随想録より








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