<1977年3月15日発行 第247号>
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目次
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1. ケールに癌の危険
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医学博士 遠藤 仁郎
さいきん、ケールには硝酸塩が多いので癌になる危険があると、どこかの大学教授が発表されたという、まことにショッキングなニュースが二、三の新聞に出た。
その切り抜きとともに、これについての私の見解をもとめる手紙が数通とどいたが、なかには、惜しいことに、青汁を飲むのをやめたとか、折角立派にそだっているケールを切り捨ててしまった、とも書いてあった。
硝酸塩と癌
食べ物の中の硝酸塩は、そのままでは別に何の害もない。
しかし、それが還元されて亜硝酸塩になると、アミン(動物食品や薬などにいくらでもある)と結合してニトロサミンが出来、その中には発癌性のものがある。
そこで、硝酸塩の多いものを食べると癌になるおそれがある、ということになる。
食品中の硝酸塩
ところで硝酸塩は、硝酸塩肥料や窒素肥料をつかった農作物には、野菜・果物その他のすべてに多いので、決してケールだけに限られてはいない(24D(除草剤)でも多くなるというから米にもきっと少なくないだろう)。
また、動物食品、ことにその加工品には、肉の発色(たとえばハムの淡紅色を出すため)や、殺菌(ことにポツリヌス菌にたいし)の目的に添加されている。
そして、ハム、ソーセージはもとより、チーズ、塩蔵魚介、タラコ、乾物や燻製品などにはニトロサミンさえも検出されている。
還元作用
しかし、たとえ硝酸塩があっても、これが還元されて亜硝酸にならなければ、発癌の心配はないわけだが、この還元作用は、食品を冷蔵することと、ビタミンCとで妨げられることがわかっている。すなわち、2〜4度の低温では亜硝酸への還元作用がとまるので、発癌性ニトロサミンもできない。
欧米先進国で胃癌がへったのは、そういう性能のよい冷蔵庫や冷凍食品が普及したためだ、といわれている。
ビタミンCにも、同じ作用があるので、Cが多いだけでもこの心配がなくなるわけだが、すべての食品中もっともCにとんでいるのは良質ナッパ類だ。だから、硝酸塩があっても、Cの多いケールその他の良質ナッパのばあい、Cの少ないその他の農作物や、全然Cのない穀・肉・魚・乳製品などのばあいにくらべ、亜硝酸、したがって発癌性ニトロサミンのできる可能性は、ずっと少ないか、全然ないともいえよう。
ナッパを恐れるのは
だから、癌になるかも知れないと、ケールその他の良質ナッパ類をさけるのは、ちょうど、むかし、虫(寄生虫)をおそれてナッパを食べない衛生家が(そのため不完全栄養に陥り抵抗力をなくして)かえって、すごく虫をわかしていたことにも似ていよう。
もっとも、虫では、たとえ少々わかしても、そう大した問題でもなかったが、硝酸塩では、ことすこぶる重大だ。
というのは、ナッパを敬遠することで、栄養のバランスをうしない、一般抵抗力だけでなく、癌にたいする抵抗力もよわめられる(ナッパに多いビタミン・ミネラル類には発癌を防ぐ作用もある)うえ、ビタミンCが乏しくなればニトロサミンができやすくもなる(硝酸塩はナッパ以外からもはいって来る)から、その結果、かえって発癌をたすけることにもなりかねない、とかんがえられるからだ。
この意味で、硝酸塩ゆえにケチをつけられているケールをはじめ良質ナッパにビタミンCがズバぬけて多いのは、あまりにも見事な、そして少々皮肉ともうけとられそうな、天の配剤の妙というものではないだろうか。
こと食べ物に関するかぎり、いろいろの成分の相互関係こそ、大切なのであって、この硝酸塩にしたところが、その一つだけをとりあげて、野菜はあぶない、青汁なんてとんでもない、ときめつけるのは、素人ならともかく、その道の学者先生のお言葉としては、なんともいただけない。
硝酸塩をへらすには
ともあれ、こういういかがわしい代物のとりこみは、なるべく少ないにこしたことはあるまい。まず、硝酸塩の添加されているような食品は、つとめて避けよう。
農作物にも、なるべく硝酸塩を少なくしよう。
そのためには、栽培にあたって、化学肥料ことに硝酸塩肥料や窒素肥料はさけ、昔ながらの堆肥、鶏糞、油粕(石灰、木灰)を主体とする有機質肥料の健康農法によることだ。
そうすると、ビタミンやミネラルにとんでいるうえ、硝酸塩も比較的少なくなる。
なぜそうなるか。次の事実は、あるいはその解明に役立つかも知れない。
アフリカのトランスケイは食道癌の多いところだが、そこの土壌にはモリブデン(痕跡ミネラルの一つ)が欠乏しているため、植物の硝酸塩が多くなっているという。
これは、土壌の痕跡成分が植物の硝酸塩に影響することをしめすものであろうが、
- 痕跡成分の不足しているところには癌が多いといわれていること、
- わが国の耕地にもその不足がないでもないらしいこと、
- 化学肥料には不足がちであるが、堆肥その他有機質肥料には豊富であること、
- 有機質肥料でも窒素分の多いものがすぎると、硝酸塩はどうしても多くなること、
などのことから、なるべく堆肥を多く施し、鶏糞や油粕などはすぎないよう心がくべきであろう。
なお、煤煙や排ガスに出る窒素酸化物も硝酸塩源となりうるだろうから、工場や交通量の大きい道路に隣接した耕地は、なるべくはさけたいものだ。
も一つ大切なのは中耕。土壌中に酸素が欠乏すると亜硝酸菌がふえて、土壌中に亜硝酸塩が多くなる。
土がかたまると、ことに降雨のあとなど、中耕が必要とされているのは、それを防ぐためであろう。
また、堆肥がよいのは、土壌がやわらげられることで、その中にふくまれる空気量が多いことにもよるのであろう。
(52・1)
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2. 食物はつとめて家庭の手作りで(3)
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前回参照 |
友成 左近
栄養面について
つぎに主として栄養面については、すべて食品は、加工前には各種の成分が(すべてよく調和している良質青野菜以外は不調和ながらも)あれこれとそれ相当量に含まれています。
が、加工後は、高次になればなるほど精製度が高くなって、それが(実状ミネラルとビタミンの方がより多く)消失して、ますます不調和になっています。
また、とくに既製食品では殆んどすべて、(栄養上実状有害無益な砂糖その他の甘味品をかなり多量に加えているので、ますます不調和になっています。
そしてこれは、乳幼児の人工乳や離乳食や間食にはとかく著しいのであって、まだ味覚の発達していないうちに、こんな甘いものを与えると、甘味の感覚が鋭敏に発達して、甘いものでなければ食べない間違った好みが身についてきます。(なお乳児食には、もっとも自然な母乳より甘いものも塩からいものも、栄養上からも好みの発達上からも不的確なのです)。
さらに既製食品では、多くの場合その原材料が分かりにくいので、成分の劣った代用品や増量剤を加えて、成分も味も名目より著しく劣っており、そのうえ増量剤に有害有毒物が含まれている場合があり、ときには発ガン性の強いカビたピーナッツや黄変米などの危険な材料を使っている場合もあります。
ために、加工食品とりわけ既製食品に依存すればするほど、栄養がよりいっそう不調和になるわけです。
それに実状とかく、これを補足する食物(とりわけ良質青野菜)を省略するようにもなるので、なおさらです。
単身生活で自炊している学生などに(インスタントラーメンなどを重宝して)、毎日ハラ一杯食べているのに栄養失調になって(そのうえ有害有毒物も多量に食べこんで)厄介な病気にかかる場合があるのは、このためです。
そこで毎日の食物は、栄養上からも既製食品は極力さけて、つとめて原材料を(加工品では粗製品を)買い入れて、調理は家庭ですること、それも、各種の食品を(とくに良質青野菜は必ずそれ相当量)取り合わせて栄養がうまく調和するように、そして成分の損失を最少限にとどめるようにすること、
また、甘味その他の有害無益な調味は極力ひかえ、添加物などはいっさい使わないことが大切なのです。
が、こうすると、毎日手数のかかるのもさることながら、人によっては食事がまずくなるかも知れませんが、それはひとつには、食事に重要な好みが間違っているからです。で、これは是正しなければならないわけですが、それには、日々こうした手作りの食物を辛抱して食べ続ける以外に打つ手はないのが好みというものです。
野菜の手作りについて
なお原材料も、野菜などのように非農家でも作れるものは、屋敷内外の余地を最大限に活用して自作することが大切です。
そしてそれには、主としてコマツナ、カキバダイコン、シソなどのように成分が最高に優れた良質青野菜で、しかも坪当たり収量の多いものを作ること、そして成分も味も優れるように、有機質肥料を十分施して、石灰以外の化学肥料は極力使わず、ましてや危険な農薬はいっさい使わずに作って、ほどよい食べごろに取って、つとめて生のまま食べることが大切です。
良質青野菜は栄養上それ相当量に必要不可欠なのですが、市販ではなにほども手に入らず、それも殆んどすべて危険な農薬が多少とも残留しており、また、見た目はよくても成分も味も劣っているからです。
そして、ふつう広く趣味と実益をかねてと作っているトマト、キウリ、ナス、ピーマン、シュンキク、レタスなどは成分がケタちがいに劣っているうえに収量も少ないので、せっかく作っても、趣味の点はともかく、栄養上なにほども実効がないからです。
なお、屋敷の美化といってハナを作っている場合も多いようですが、それはほどほどにして、つとめて広く「ハナよりナッパ」と良質青野菜を作ることが大切です。ハナは市販で間に合うが、良質で安全な青野菜は間に合わないからです。
(51・5・9)
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次回参照 |
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3. ドクダミ
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名のいわれについて、大言海には、毒痛の意が、とあるが、何のことやらわからぬ。
私の郷里ではドクハミという。
諸毒をとるというので、火にあぶって腫れ物に貼りつけたり、いろいろの病気に、煎じ、茶代りに飲んだり、風呂にしてはいる(ドクダミ湯)。
で、毒を食みとる、といった意味ではないか、と私は理解したいのだが、どうだろうか。
十薬ともいう。これは大和本草に、
「和流の馬医、之を用ひ馬に飼ふ、十種の薬の能ありとて十薬と号すといふ。」
とある。むかしは食べたらしいが、今でも、食べるところがあるそうだ。
青汁にもなる。
しかし、本草綱目には、
「多く食へば、人をして気喘せしむ」(別録)。
「小児食へば、三才にして行歩しえず」(誥)。
「俗に、之を食へば、脚が利かなくなるといふ」(弘景)。
とか、
「久食すれば、虚弱を発し、陽気を損じ、精髄を消す」(誥)。
などとあるのは少々気がかりだし、何分にも、あの臭味と刺激性で、いかにも飲みづらい。
まあ、少し混ぜるくらいが無難だろう。
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4. 硅肺にもよい
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医学博士 遠藤 仁郎
さいきん聞いた話だが、硅肺で入院している知人にすすめたところ、「青汁をやめるとぐあいが悪い」といって、熱心に飲んでいるとのことだ。
硅肺というのは、鉱山や石切り場で働いている人、あるいは石工などにみられる病気。
吸いこまれたかたい石の粉塵が肺にたまり、そのため、肺のはたらきが悪くなって、呼吸が十分できなくなり、(ついには心臓もよわって)僅かな運動にも息が苦しくなる。
ところで、そうした病気では、体力をつけようとして、とかく食事は白米飯に肉・魚・卵といったご馳走になりがち。
こういう食事は、ふつう、栄養があるということにはなっている。
しかし、実のところ、ミネラルやビタミンの不足した、大変かたよった不完全食で、いわゆる血の濁りをおこしやすいので、よわった肺や心臓にとっては、まことに都合のわるい食事だ。
ところが、ミネラルやビタミンにとんでいる青汁をのむと、栄養が完全になり、濁っていた血がきれいになる。きれいな血がめぐると、しぜん、肺や心臓のはたらきがよくなって来る。そこで、青汁をやめると、ぐあいが悪い、ということになるのだろう。
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5. レイノー症
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寒さにあたって、指先がひどく冷え、白くなり、ジンジンしたり痛む。
たいてい、白米飯、肉魚、濃厚味食、菓子好き、野菜きらいの人に多い。
こうした不完全食のために、神経が感じやすくなったため。
また、諸種の公害、ことに有害有毒食品の影響もあろう。
あたためたり、マッサージ、温浴なども一時的の効果だけ。
根本はこの悪習慣をあらためること。
イモ・マメ・ナッパ・青汁食の完全・安全食に徹底してみること。
青汁絶食が卓効を奏することがある。
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6. ケールのトウ
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春になると、ケールのトウがどんどん出て来ます。
種子とり用の少しを残して、やわらかいうちに折りとり、せいぜい食べて下さい。
サラダによく、煮物にもよし、漬物にしても、とてもおいしい。
なお、アリマキ(アブラムシ、ゴマ粒くらいの小さい虫)がつくと、種子はとれません。
トウのとっ先きに、まずつきますから、早目に見つけ出して、指でつぶして下さい。
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7. 呼吸器疾患患者の喫煙は止めさせ得る
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慢性の呼吸器疾患の患者の過去および現在の喫煙状態を、カルテと電話での調査からまとめてみた。
対象はフィラデルフィヤの5人の胸部疾患専門医が少なくとも過去1年以上経過を観察している症例である。
111人の喫煙者の内、64人(57.6%)が最早や喫煙を止めていた。
また、なお煙草をつづけている例でも、消費量が平均1日35.2本より24.6本と減っていた。
禁煙に成功した例は、急に思い切って止めた例で、徐々に減らすというのは余り成功しない。
禁煙時の主な問題は、神経質でいらいらするようになり、なお煙草を熱望し、体重増加を訴える者が多い。この成績はもっと医師が積極的に、そしていろいろな角度から、煙草の害を説くなら、禁煙に成功する患者数は増加するはずであることを示している。
(Mausner,J.S.,Amer.Rev.Resp.Dis.102:704,1970)
(中外医薬24:8 1971)
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8. もっと多くの方にさしあげたい
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静岡県 A..H.
ケールの種子を採取して本部へご恩返ししたいと考えていますのに、健康を害している人にあえば、即座に種子を差しあげてしまいますので、いつになったら、小さな私の畠のケールが結実することやら。現在、9本が青々と繁茂しています。
それを3人でのんでいます。1日おき1合くらいです。一人は67才の婦人。大きな腹をして顔にも浮腫がありましたが、のみだしてから日が浅いのに、もとの顔になり、さしものお腹も多少へこんできました。
もう一人の婦人は、良質の甲状腺疾患で、のべつに貧血で寝こんでいましたが、さいきん、とみに元気で、先日など、病人看護で徹夜をして帰宅したのに、ただねむいというだけで、けろっとしております。
もっと多くの病身の方達に普及したいと考えていますが、畠がないので思うにまかせません。
現在、家の裏に埋め地を借り(約30坪)、掘りおこして、10月にまいた苗をうえ、もっと多くの人に差し上げたらと、開こんに励んでいますが、もともと腰を痛めており、そのうえ、若くもないものですから、なかなかはかどりませんが、青々と茂った様子を思い浮べて、たのしみにしております。
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9. 肝臓が青汁2合で
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岡山県 T.S.
8月に肝臓機能検査をうけ、少々悪いとのことで、毎日注射に行き、薬ものんでいたんですが、
月1回の検査は全く変りません。検査のたびに80、90という数字でした。約1年ほど前から青汁ものんでいました。
11月の中頃、電話しましたら、「分量が少ない。もっと飲まなければ」との注意をうけ、それから毎日2合くらいづつ飲みましたところ、約1ヶ月後の検査では、GOT31、GPT57に下ったではありませんか。
これまで、注射と薬を毎日つづけて変らなかったのが、青汁2合で下ったのです。いまは、毎朝青汁つくりを楽しみに、主婦として私の仕事だと思い、家中のものが飲んでいます。肝臓のわるい主人が2合。私と子供は5勺。この寒さ、青葉も少なく、はやく春の来るのを待ち遠しく思っています。ケールの種、ありましたらお願いします。
(青汁は、少なくとも2〜3合のまなければ本当の効果はあらわれません)
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10. 高血圧と糖尿
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千葉市 R.Y.
「青汁と健康」を拝読いたしましてから、毎日、青汁をのんでおります。三年来、薬をのみつづけました高血圧と糖尿が、すっかりよくなり、お医者さまから、今後は、月に1度検査にだけ来るように、といわれました。ほんとうに有難うございました。
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11. 体組織の更新
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体の組織は、つねに更新されているが、その速度はまちまち。皮膚はたえず脱落しているし、小腸の粘膜は、おそらく、1〜2日であたらしくなっている。
赤血球の寿命は、大体、120日。アイソトープの研究で、血液アルブミンは、大凡、一日に10グラム、フィブリノーゲンは2グラムづつ更新されている。
(Davidson栄養学1975)
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12. 追いかけた青汁
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越智 廓明
二日間多忙の連続で、遂に、青汁の調製を休まざるを得なかった。
三日目の夜半、いつにない便意に便所へ行き、排便後床に皈るや、排尿中残尿感や尿道口の鈍痛に、思わず床にうつ伏せにふせた。尿道の炎症か、厄介なことになったと案じたが、一夜あけ、おそるおそる排尿したところ、何のこともなく、平素と全く異ならない。それは、三日目の夕方、やっと青汁を調製して飲用した後であった。尿道のくせ者を、青汁が追いかけて退治してくれたものと私は思った。
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13. ケールをバリバリ
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14. 油をつかわないホス族
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Mitra氏らが調査した、インド・ビハール州のホス族は、250家族のうち200は油をつかわない。彼らの調理は煮るか焼くだけ。家畜を飼っているが、荷駄用で、乳も肉も食べない。1日の脂肪摂取量は僅か2.4〜3.8グラム。総カロリーの2%にすぎない。健康状態は理想的とはいえないが、脂肪不足によると思われる徴候はないし、油を食べている近在のものにくらべ、栄養状態も体力も決して劣っていない。
(Davidson 栄養学 1975年版より)
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15. 質問箱
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高知県 E.
問
チクノウで度々手術しましたが、どうもスッキリしません。青汁がよいそうですが?
答
からだが膿みやすくなっているからです。白米飯糖分(菓子、味つけの砂糖)をへらし、野菜ことに良質ナッパを多くし青汁は少なくとも1日2〜3合(もとの材料500〜800グラム)以上のんでみて下さい。
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コラム紹介
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