<1974年11月15日発行 第219号>
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目次
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1. 不妊症
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医学博士 遠藤 仁郎
ちかごろ、特別病気がないのに不妊外来を訪れる夫婦がふえているという。
不妊症といえば、これまでは女性に原因があるとされていたが、最近では男性側に原因のあるもの(男子不妊症)が少なくないそうだ。(不妊夫婦の40〜70%に上っている)
いずれの場合にしても、その障害は、先天性や後天性など、いろいろのものがあるのだろうが、そのあたりどうもまだあまりハッキリしたことはわかっていないし、治療法も確立していないようだ。
私どもは、すべて、そういうわけのわからないものには、ともかく環境や日常生活の影響に注意すべきだと考えているが、食べものも少なからず関係があるらしい。
だいたい子供がないか少ないというのは、多くは裕福な家庭だ。
貧乏の子沢山、というように、貧しいものはよく子を生む。
国家でも民俗でも同じで、経済的にゆとりのある先進文明国では人口の減少が憂慮されているのに、乏しい生活を余儀なくされている未開の後進国では、いよいよふくれ上る人口に悩まされている。
そして、その人口の調節には、かれらに十分の食を、しかも文明国なみの食をあたえることだ。
そうすれば人口は確実に減る、といっている学者もある。
もちろん、戦時や飢饉などの、甚しい食糧不足では性機能は衰える。
しかし、貧困者の食不足といった程度では、性機能はかえって旺盛になる。
国家・民俗の興亡の歴史をみても、窮乏に堪え、粗食に甘んじ、興国の意気さかんな時には出産率も大きい。
けれども、繁栄をきわめ、怠惰となり、美食を飽食するようになるとともに、人口は減って来る。
これは、享楽生活にふける女性が、子を生むことをいとうようになる故でもあろうが、根本的には、体力・精力の衰え、つまり、国家・民俗のエネルギーの減衰にある。
すなわち、貧困者の生活が自然的であり、その栄養がずっと合理的であるのに反し、富裕者は身心の錬磨、鍛錬の不足と、精製穀・肉・卵・脂・糖・アルコールに偏った不完全な贅美食の飽食。
タバコ・酒あるいは薬品類の乱用という、不自然不合理な日常をおくっている結果、抵抗力のよわい性細胞がおかされるためであろう。
さらに、また、公害いっぱいの今日では、環境ならびに食品を汚染している、農薬、洗剤、産業廃棄物、各種の食品添加物などの及ぼすところも見のがされないであろう。
絶滅にひんし憂慮されているトキやコウノトリの卵の孵化が、地域の人々や専門家の、心をこめた、また科学の粋をあつめた懸命の努力にも拘らず、なぜ成功しないか。
これは、すでにアメリカのカーソン女史が指摘されているように、まさに農薬の影響にほかならぬ。
農薬によって多くの鳥が生命を奪われたが、さいわいに生き残った鳥たちも、生命だけはたすかっても、抵抗力の弱い性細胞はいちはやくおかされ、生殖能をうしない、繁殖不能に陥っているのだ。
これが、ただ鳥類だけのことで、人間にはおこり得ないとは、誰れが保証できるだろうか。
洗剤、産業廃棄物、食品添加物についても、同じことがいえるだろうし(PCBでも鶏卵の孵化率の著減、ミンクで産仔数の激減が知られている)、少なくとも、これらの複合した影響には、おそらく、無視しえないものがあるにちがいない。
このままでは、人類の滅亡も、そう遠くあるまいといわれているのももっとものことで、不妊症の多発は、その不吉な前兆といっても、少しもいいすぎではあるまい。
それはともあれ、性機能をさかんにするには、つまり、健康な精子・卵子をうるためには、何としてもまず、健康的な素朴な自然生活、とくに自然的な食生活にかえらねばならない。
食品はすべて良質安全なものとし、農薬や産業廃棄物、添加物などに汚染されたり、そのおそれのあるもの、あるいは高度に加工されたもの(精製品、既成品)はなるべくさけること。
良質ナッパを主とする野菜・山菜・海藻を十分に配し、バランスのよくとれた食とすること。
そして、調理はなるべく簡単に、味はうすく、つとめて自然のままか、自然にちかいかたちで食べることだ。
この意味で、私どもは、緑葉食・青汁を中心とした合理的自然生活をすすめているが、青汁や生ナッパ食だけでも、確かに性機能はさかんになる。
月経が順調になり、月経障害がなくなり、精力を増し、もり上って来る。栄養が完全になるためであろうし、緑葉中に多いビタミンEのせいかも知れない。
(ビタミンEには、動物実験で不妊を防ぐ作用があることが知られているが、さいきんの臨床実験からも、性機能を皷舞し、精子数を増し、運動が活発になることが確認されている)。
なお、生食ということ、つまり、生の力、科学のまだ解明しつくされない神秘の力にもよるのでもあろうか。
「行気の大要、多食し及び生菜肥鮮の物を食ふことを欲せざれ。人をして気強くして閉ぢ難からしむ」(抱朴子)と、
仙道で生食を禁じているのも、それと思われる。
事実また、このようにして、永年まちのぞんでいた子宝をめぐまれた幸な家庭も少なくない。
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2. 小便の出方
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医学博士 遠藤 仁郎
小便の出方は、便所に立つとすぐ出はじめ、しかも、初めから勢いのよい強い線で出、出終った後は、すぐに完全にとまるのが最上。
出だすまでに時間がかかったり、初め、細々とよわくしか出ないというのも、出終ったあと、ポタポタ落ちたりするのも、ともに、正常ではない。
これらは、いずれも、前立腺肥大とか、老人にみられる出方だ。
しかし、必ずしも、そうとばかりはいえず、出はじめの時間のかかるのは、神経質な若い人にも、よく見かける。
実は、私もそれで、中学時代よくやった「つれない小便」にはいつもおくれをとったし、その後も、この傾向はずっと続いている。
ひとりの時は割とらくに出るのに、人と並ぶと仲々出ない。
気が急ぐだけいっそう出にくい。
一緒に筒口をむけた人がサッサとすまして行く頃、ようやく出始めるといったぐあいだ。
もっとも、尿線の太さはふつうだが。
これは、神経の過敏なものの特長で、膀胱括約筋の緊張の強いための、純然たる神経的のもので、以前ほどではないが、今も同じだ。
ちか頃、とくに感じるのは、ながく我慢して、ギリギリのところまでたまった時の排尿のばあいだ。
やっと出だしても、初めはポトポト落ちたり、ごく細い線がよわよわと出るだけ。
しだいに、いくぶん太くはなるが、時には、まだ十分出切らぬうちに、もう止ってしまう。
たびたび、しぼり出すようにして、また、少しづつ出るには出る。
そして、出終りもきまりがつかず、ながくポタポタが続き、力むとまた少し出る、というぐあい。
まことにだらしがない。
しかも、時間をかけて、もう終ったと思って帰って来るのに、パンツを濡らしていたりもする。
まったく、前立腺肥大の時の出方そのままなんだが、程よくたまっている時には、すぐに出、初めからふつうの太さで気持よく出るし、後でポタつくことも殆んどない。
どうも、前立腺のせいばかりとも思えない。
おそらく、小便がたまり過ぎたため、膀胱がのびて収縮力がよわって来ることと、出口の括約筋の緊張が反射的につよくなりすぎた結果であろう。
けれども、以前には無かったことなので、やはり、年のせいではあろう。いずれにしても、ひと年とったら、小便のため方の程度に気をつけ、あまりひどく張り過ぎないうちに、むしろいくぶん早目に排尿することだ。
(45・10)
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3. 胃下垂用の腹帯
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胃下垂は、それを気にするのが病気で、下垂そのものは少しも心配はないものだ。
しかし、気になれば、胃を支えて、おし上げておけばよろしい。
うまく支えが出来ると、たしかに気持はよい。
いろいろ方法はあり、出来合いのが間に合えば、まことに簡便だ。
しかし、市販の腹帯は、すばらしく効きそうな名がつけてあり、見かけも立派だが、どうも、うまく行かぬものが多い。
それも無理のない話。
あれは誰れにでも向くようにつくってあるわけで、既成服と同様、誰れにでも合うということは、誰れにもうまくは合わぬということ。
つまり、腹の条件は各人各様、規格どおりにはゆかぬからだ。
そこで、それぞれ自分の腹に合うよう工夫する他はない。
私も胃下垂には、ながく悩んだ。
そして、四〜五米もあろうという洒木綿の布を二重に折り、腹の中央で2回うらがえし(ゲートルのように)、支えになるように巻きつけた。
私の腹では、それでよかったが、腹がひどく凹んでいる場合など、全然ささえにならぬこともあるし、しばらくすると、ずり上ってしまって役に立たなくなることが多い。
そういう場合、ちょうどうまく合うくらいの大きさの、やや平たい小枕をつくり、強い布にぬいつける。
そして、胃をおし上げるように下腹にあて、布でしっかりしばる。
それでも、ずり上るようなら、紐を2本つけて、両股にかけるなど、ずり上りをとめる工夫も必要だ。
(遠藤)
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4. ケールの青汁
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ケールはキャベツのような野菜である。
日本各地のことは知らないが、東京では主婦の友農場に栽培しているだけである。
そのケールをジューサーにかけてしぼった青汁を、何年も前から私は毎日のんでいる。
これはたしかに健康保持に効能がある。
高血圧と痛風に悩まされていた私が元気でいられるのは、ケール青汁のおかげらしい。
ケール青汁を提唱されたのは、倉敷市の遠藤仁郎博士である。
私は遠藤博士と面識はない。
パリ時代からの友人であるフランス文学者の小松清君を通じて、ケール青汁療法を知ったのである。
小松君は無理に無理を重ねたため、昭和37年にバンコクで若死しているが、その以前に故郷の神戸でケールの青汁を教えられたそうである。
彼が頼まれて講演をしていると、聞きにこられた一婦人が、小松君はどうも病身のように見えるというので、このケール青汁をのんでみなさいと言って、毎日とどけてくれた。
のんでいると大変きくようである。
それで小松君はケール青汁療法をパンフレットに仕立てて、東南アジアへ旅立っていった。
そのパンフレットがブリヂストン美術館においてあったのを私は読んだ。
パリ以来の相棒の書いたものではあり、またなんとなく効能があるように思えたので、倉敷の遠藤博士に自分の身体のことを書いて問い合わせた。
そして返事をまって、今日まで毎日この青汁をのんで、大いに健康に役立たせているというわけである。
けさもケールの青汁をのみながら、そんなことを思い出しつつ、亡友小松君のこともいろいろ思い出されてきた。
書けば長い話になるので書き尽くすことはできないが、まず第一には私がパリにいたころは、日本人といえば「ジャポネ、きたねえ野郎だ」と言って、カフェーなんかでも相手にされなかったことである。
日中戦争のころである。
それから三十余年、日本人は大もてときくが・・・。
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5. マルサス主義
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マルサス主義では、人口増加が飢餓を来すというが、ブラジルのカストロ博士は、「人口過剰は飢餓の原因ではなく、飢餓が人口過剰の原因だ」という。
支那やインドでは、たびたび飢餓におそわれて、人口は増加しつづけている。
経験は人口増加の調節で飢餓をさけることは不可能ではないにしても困難なことをおしえ、逆に飢餓を去ることが人口の増加を調節することの可能をおしえている。
一旦人々が貧困水準の上にのぼることが出来ると、出産率は常に減ずる
((Lancet,1952.1.351より)
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6. 男子不妊症とアスピリン、タバコ、アルコール
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アスピリン、タバコ、アルコール類がすぎると男子不妊症をおこすおそれがあると、シドニー大学のShutt博士が発表した。
博士は、精液中のプロスタグランディン(以下プロ)量と男子不妊症との関係について研究しているが、約100人の不妊症(原因不明の)夫婦の調査で、1/3は、精液中のプロの濃度が非常に低かった。
ところで、アスピリンには、女子でも男子でも、プロの合成を阻止する作用があり、英国での最近の実験で、1日10〜20錠のアスピリンでプロ量が8%も下がることがわかった。
これは、プロ量も精子量も少ない男子のばあい、アスピリンが受精率を低めることを意味するもので、不妊症が増すという証拠も得られた。
また、タバコや酒ののみすぎも、プロ代謝を狂わせ、受精率を低下させる可能性がある、という。
(メジカル・トリブューン、49・5・16日号より)
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7. 健康法と治病法
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健康法と治病法は本質的には同じ。健康者はこれによってますます強壮となり、病弱者はこれによって治癒をはやめ健康を回復する。
健康法は同時に治病法でなければならず、治病法は同時に健康法でなければならぬ。
健康法は健康者の治病法。
治病法は病弱者の健康法。
健康法でない治病法は真の治病法ではない。
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8. 豆粕(大豆粕)
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油をしぼりとった大豆の粕、豆粕。以前、大きな円盤状にかためられたのが満洲から大量に輸入されていた。
主に肥料用だったようだが、戦時中には、すぐれた蛋白源として配給されたこともある。
これは、ただ、大豆を圧搾してしぼっただけのものだから、何の心配もなかった。
しかし、現在のしぼり方は、大豆粉から、溶媒によって抽出するので、溶媒によっては問題がでる。
一時つかわれたトリクロールエチレンでは、大豆の蛋白と結合して、一種の有毒分が出来、動物に再生不良性貧血をおこす、といわれた。
今は、ヘキサンという石油製品がつかわれているそうだが、これには、発癌性のある多核芳香酸炭化水素が含まれているおそれが多分にあるという。
ところで、この大豆粕は、肥料にもされるが、豆腐や味噌、醤油の原料になっているそうだ。
もし事実とすれば、豆腐の味が少々おちるくらいは我慢するとしても、発癌物質を食わされているかも知れないということは、聞捨てできない。
それを、当局が、承知の上で許しているのだとしたら、ただ、その無神経さにあきれるだけではすまされまい。
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9. 肥満婦人の妊娠
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ふとっている婦人には、無月経や過少月経、その他の異常が多く(50%もある)、やせるとよくなる。
ふとりすぎの不妊症も、やせると治り、妊娠するようになる。
また、ふとりすぎには、妊娠中毒も多いし、分娩時に故障がおきがちだ。
だから、つとめてやせるよう工夫すべきだ。
しかし食欲をおさえる薬をつかうことは考えもの(胎児への影響が、まだハッキリしていないから)。
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10. 総会に出席して 私の土産、酒とすねの痛み
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越智 廓明
今回の総会に出席出来たことは、私にとって、命拾いに近い幸運であった。
青汁と食養が心深く勉強できた。
昼食の美味かったこと。
私は二人前位いただいた。
皈って、好きな晩酌1合をやめ、職業柄、連日の用に飲む機会の多い私は、体の都合でと一切酒の飲用を中止した。
このところ2〜3ヶ月位以前より両方のすねが坂道を上る時、階段に特に痛く歩行不能になるのではないかとオーバーに考えもした。
この足が、先日、大阪生駒の聖天様、信貴山等、石段を相当上ったのに、忘れたように痛みを感ぜず、つい先日迄、顔をしかめて階段を上っていたことを思えば、大変なかわり方である。
毎朝、5時半位より2時間と夕方2時間、ケールを中心の野菜畑作業に疲れ方が半減して、夜も机に向って10時過ぎても平気である。
私は今日も、2回ジューサーを、ケールが花が咲き乏しくなったので、代用のキャベツに夏柑を皮ごと青汁に混用、合せて5合位飲用。
私にとって、この上ない感激の総会であった。
私は、このまま酒を続けていたら、命を縮めること必定であると思う。
口内炎も、数日患っていたのが、全く速やかに、以前のように1ヶ月も2ヶ月も長引かず。
この上は、更に、あの昼食のような献立に食養を一歩前進を期する者である。
病気になる責任は自分にある。
総会での先生のお言葉。東洋哲学的な玩味深い言葉である。
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11. 潰瘍性大腸炎
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治りにくい病気だが、青汁をうんと飲んで(下痢があれば少量のバターと一緒に)、思いがけぬ効果があることがある。
青汁で体力・抵抗力・自然治癒力がたかまること、また青汁の緑葉素の直接の影響もあるのだろう。
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12. お蔭で好調
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島根県 H.U.
5年前から入会いたし、今日まで、1日も欠かさないで、青汁を実行してまいりました。
おかげさまで、5年まえのゼンソクの発作まったく全治。
5年間に、2〜3回風邪にかかり、その都度医療をうけましたが、その治りのはやいことに、何より嬉しく思います。
また、本年で79才となりましたが、一昨年は、相当ひどい打撲傷をうけましたが、これも短時日で全快いたしました。
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13. ニンニクとかぜ
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14. 庭を持つ幸せ
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川崎市 G.S.
66才の老輩となりましたが、毎日1合の青汁のおかげで、元気で、私立高校の非常勤講師として、教壇に立っております。
昨年度は1日の病欠もしませんでした。
以前には、2月頃から5月頃まで、胃の痛み(胃炎の診断でしたが)に悩まされましたが、今は、胃の痛みなど全く感じません。
知人にも、すすめているのですが、マンションやアパート暮しの多い都会では、材料のケールを栽培する土地がないとて、実行できないでいるようです。
僅か数坪ながら、庭を持つ幸せをつくづく感じます。
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15. 調子がよいようだ
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16. 大変快調
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17. もっと雅量を
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東京都 Y.T.
戦後二十余年を経過しました今日、未だ青汁などと軽視する医学者も尠くないことを、大変遺憾に存ずる一人です。
その理由は推測するに、必ずしも困難ではありませんが、もっと冷静に、耳を傾けるだけの雅量を持たれんことを切望するものです。
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18. 質問箱 ガスが
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東京都 H.
問
青汁をはじめて、からだの調子は大変よくなりましたが、ガスがしきりに出て困っています。
何とかなりませんか。
答
便通をもっとよくして下さい。
ガスが多いのはガスのもと、つまり便が残っているからです。
青汁をもっとふやすか、野菜をうんと食べ、菓子をやめ、味つけの砂糖をへらしてみて下さい。
そして便通がうまくつけばガスは自然に出なくなる筈です。
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コラム紹介
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