<1968年6月15日発行 第142号>
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目次
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1. カビと健康
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医学博士 遠藤 仁郎
カビはなかなか有用なものです。さいきんの有力な新薬、抗生剤はみなカビのつくったものです、
われわれの遠い先祖の時代から食べなれてきている酒、味噌、醤油、いずれにもカビの力によってできたものです。しかし、一面、非常に危険なものであることも、しだいにわかって来ました。
たとえば、われわれにもっとも関係の深い米につくカビにも、十何種類あるそうですが、中には、脚気様の神経マヒをおこすものがあったり、腎臓を悪くするもの、また肝臓をおかし、肝硬変をおこし、長い間には癌さえもつくるような毒素をつくるものもあります。
先年騒がれた黄変米もその一つです。また、南京豆につくカビの一種から出る毒素は、肝臓を障碍し、癌をつくります(アフラトキシンといい今まで知られている肝癌原のもっとも有力なもの、アフリカに多い肝癌との関係がいわれています)。
同じように、小麦、大麦、栗、トウモロコシ、綿実などにつくカビにも危険な毒素の出来るものがあります。生の牧草や雑草、ワラなどについて、家畜に害をあたえるカビもあります。もちろん、すべてのカビが有毒ではありませんが、有毒か無毒かの見分けは出来ませんから、ともかくカビたものは食うべきではないわけです。
ところで、食品加工のさかんな今日では、殆んどあらゆる食品に殺菌剤、防腐剤など各種の薬剤が添加されており、中には危険なものがないとはいえず、その害にも測り知れないものもあること。したがって、健康を保ち、病気の治りをよくするためには、つとめて純正良質の安全食品をとるべきである、その目安として、私共は、いつまでも変化しないものよりは、むしろ、腐ったり、カビたりするようなものの方が安全だ、といっているのですが、カビたものに、こうした危険があるとわかってみると「カビるようなものを、カビないうちに食べるべきだ」といいかえねばならなくなったわけです。
また現に、昔の人はそうしています。味噌も醤油もカビのないところを食べ、餅のカビは削りおとして食べました。米粉、小麦粉、ソバ粉なども、カビで酸っぱくなったものは、捨てて食べることはしませんでした。
そしてまた、カビのはえないように注意もしました。カビは温度がたかくて湿気が強いとき、たとえば、梅雨時などに、もっともよく繁殖します。そこで昔の人は、食物の乾燥に細い注意を払いました。ことに、毒素のうちには紫外線によって破壊されるものもあるのですから、日光による乾燥が、もっとも合理的なわけですし、昔の人はこれを実行していました。
他の食料への流用
カビた米は搗くと砕けます。また、よく洗えば糠とともに取り除かれる。ですから、飯に炊いて食べることは、まずありません。しかし砕米は餅についたり、炒ってコガシにしたり、粉にして団子にします。で、オカキやオコシなどは、そうした危険なカビ米が混りこむおそれはないでしょうか。
家畜飼料への転用
また、カビた穀、豆、芋などは、とかく家畜にあたえられます。しかも、そうしたものは家畜には却ってよいのだ、とさえいわれたこともあった程です。
しかし、それが間違いであったことは、しだいにハッキリしてきたし、ものによっては、その毒素が、家畜の供給する食品の中に、たとえば、肉の脂肪の中にたまっていたり、乳に出る(おそらく卵にも出るだろう)ものもあります。
ですから、直接、カビた食品は食べなくても、それをあたえられた家畜を介して、間接に毒素をとり入れることにもなるというものです。われわれになじみ深い酒、甘酒、味噌、醤油をつくるカビにも、いろいろの種類があり、経験上、安全なものがつかわれているのだろうと思われるが、ふつうのコウジでも、動物実験の結果では、やはり毒性(肝腎毒)があるといいます。
味噌やモロミ、ヒシオのカビも恐らく同じではないでしょうか。これらは昔から食べなれて来たものですが、それが、日本人に肝癌(肝硬変や肝癌)の多いことの原因ではなかろうか、とみている学者もいるほどです。
これらの製造用のカビについては、その性質を十分に検討し、毒素の心配のない、安全性の確実なものの撰出につとめてほしいものです。ともかく、カビたものは食べないこと、カビぬよう注意すること。また、カビたものを他に転用――他の食料品や、家畜飼料にふりむけぬよう、業者の良識と、当局の厳重な監視が願わしいこと。
コウジカビについては、絶対安全な品種の供給が望ましいわけです。
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2. (青汁教室) 食養生についての断想(12) 心身ともに健やかに
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前号参照
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食べ物に好き嫌いがはげしく、毎日の食物に間違いが著しい人は、体が丈夫でないだけでなく、心も、どこか、はればれとしていないようだ。
毎日せっせと青汁を飲み、さらに、だんだんと食物を改めていくと、必ず丈夫になる。とともに、おのずから心もおだやかになり、ヤタラとハラがたたなくなる。そして、毎日はればれと仕事に精が出る。
しょっちゅうあちこち体具合が悪いといって、うかぬ顔をしているのに、どんなに青汁をすすめ、また食改善をすすめても、なんとかかんとかいって、いっこうに聞き入れようとしない人がいる。別に体具合が悪いこと、うかぬ心をたのしんでいるわけではあるまい。じめじめとした頑固な心にわざわいされて、人のすすめがすなおに聞けないのであろう。
毎日の食物を改め、わけても、せっせと青汁を飲んでいると、必ず、だんだんと体が丈夫になる。これは、科学的にも十分解明されている、人の体の自然の事実であって、これに従った人々が、等しく身をもって実証しているところである。
たとえ、そのわけがよく分からなくてもよい、疑いながらでもよい、とにかく、心を開いて、すなおに従わねばならないことがらであって、どんな事由をつけようとも、これに従わなければ、とうてい体は丈夫になれないのだ。
とにかく毎日せっせと青汁を飲み、さらに、だんだんと食物を改めていくと、おのずから体が丈夫になり、心もおだやかに、はればれとしてくる。とともに、自然の事実に、心を開いて、すなおに従う知恵が養なわれてくる。とりわけ青汁は、とくに初めの間は、なんともまずく飲みずらいだけに、みずからわがままに打ちかって、この知恵が深く体験されるようだ。
毎日せっせと青汁を飲み、さらに広く食改善につとめて、だんだん心身ともに健やかになってくると、おのずから接する人の健康を気づかい、欲得なしに青汁をすすめ、食改善をすすめて親切をつくすようになる。
そして、いよいよ食改善に精出して、ますます心身ともに健やかになり、いよいよもって青汁キチガイとなる。欲得なしに人に親切をつくしていると、おのずから心ゆたかに健やかとなる。これは、人の世の心の真実であって、青汁キチガイどもは、ささやかながらも、これを体験しているようだ。
いったい、神経病や心身症にかかって、別に体に、これといった異状はないのに、さも異状があるかのように、ヤタラと気やみしたり、また、そのあげく、いよいよ異状が起こってくるのは、もともと、平素の食べ方に間違いが多く、栄養状態が悪く、体のあちこちが神経過敏となっているからである。
そして、正しい上手な健康法に理解と信念を欠ぎ、いたずらに、あれこれと健康に気を使うからだ。その上、自分のことばかり考えて、いっこうに他人のことには気を配らず、人の親切なすすめに、ありがたく耳を傾けず、人に親切をつくす心のゆとりがないからである。
すなわち、わがままというか、なにか自分の考えにこだわる頑固なところがあり、これを打ち破って、人の体の自然の事実にも、人の世の心の真実にも、すなおに従わないからだ。
そして、それが自分によく分かっていないのである。
(付記)この断想は、毎度の青汁教室で、遠藤先生がたえずお話しになっていること、それに学んで参会者が自ら体験して話し出したことどもです。
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次号参照
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3. ここにも不安な商品 その3 出回る有害輸入食品
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前号参照
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検査不合格、5分の1
舶来品ブームに乗って、食品衛生法で禁止されている漂白剤や防腐剤を使った有害食品がどんどん輸入されている。
市販前に厚生省の検査で発見され、廃棄処分になっているものも多いが、職員の不足から、検査の目をくぐって国内に流れているものも少なくない。
横浜、川崎、横須賀、千葉、宮城県塩釜の各港輸分を受持つ厚生省横浜食品衛生監視員事務所へ去年一年間に持ち込まれた許可申請は42011件。
このうち実際に細菌、化学、異物混入などの検査をしたのは2%強の917件だけだが、その約5分の1に当る223件が有害食品として廃棄されたり、輸出国へ送り返されている。
不合格品の多くは、食品衛生法で品物によって使用量などがきびしく決められている防腐剤の安息香酸、ソルビン酸や漂白剤を同法に違反して使ったものだが、中には黄変米や腐った冷凍エビ、ダニの入ったビールや学校給食用脱脂粉乳などもあった。
残り98%の輸入食品は細菌検査などは全く受けず、書類審査だけでフリーパスして国内で販売されており、かなりの有害食品が町に出回っているとみられる。
事実、英国製イチゴジャムに禁止されている色素が使われていたことが、ある雑誌で指摘され、国立衛生研究所で検査したところ指摘通りだったので輸入禁止になったり、今月初めには横浜市内で安息香酸入りの香港製かきソース約3000カンがみつかり回収された。
これに対して同事務所は「検査したものの不合格率が高いのは、書類審査で疑問の残ったものや、これまでに有害物が混入していた“前科”のある食品をひろい出して検査に回しているためで、書類審査をパスして市販されているものは“危険性”は低いはず」と説明しているがそれにしても4万件の輸入許可申請をさばく技官がたった4人では年間900件を検査するのが精いっぱいという悩みもあるようだ。
黄変1−2% 中国から輸入玄米
政府が中国から輸入した玄米の一部から黄変米が発見された事件について、厚生省は国立衛生試験所で精密検査をしていたが、21日「221トンが黄変米菌に汚染されていた」と発表した。
汚染の米の混入率は1−2%。同省はこの米が玄米なので、精製して白米にした上で再検査し、黄変米菌が検出されねば食糧に回してもよいと食糧庁に通知した。
危険な添加物 お酒の防腐にサリチル酸
「お酒を飲むと肝臓が悪くなるのは、お酒の中にサリチル酸がはいっているからではないか」――公明党の近江巳記夫氏は21日の衆院科学技術振興対策特別委員会で、食品添加物の問題を取上げ、政府の無策ぶりを激しく攻撃した。
近江氏によれば、サリチル酸を食品添加剤として許可しているのは世界中で日本だけ。この薬は、角質軟化剤として水虫、タムシの外用薬に多く処方されるものだが、わが国では明治時代から日本酒の防腐剤として、1.8リットルあたり0.5グラム程度が使われている。
近江氏によれば、その総使用量は全国で一年間に300トンに達するという。「サリチル酸を長く飲めば、肝臓障害を起すといわれるが、政府はなぜこれを放置しているのか」と、近江氏は追及。
これに対し松尾厚生省環境衛生局長は「ほかに適当な防腐剤がないので、日本酒に限って、やむを得ずサリチル酸の使用を認めている。決して無関心でいるわけではない」と答えた。
そのほか、近江氏は
- 「最近の牛乳は三日も四日も腐らない。なにか防腐剤が使われているのではないかと町ではウワサしている」
- 「北洋の魚の鮮度を保つため、テトラサイクリン(抗生物質の一種)が使われているが、これは食品衛生法第七条に違反している。なぜ取締まらないのか」
- 「レタス、ミツバ、キャベツの鮮度保持にストレプトマイシンを含む農薬が昭和31年から使われている。こういう事実を知っているか」
- 「ナスやトマトのツヤ出しのためホリドールや、エンドリンなどの農薬が収穫直前に散布されているが、政府はどういう取締りをしているか」
- 「豆腐にも殺菌剤の一種が入れてあるというが、厚生省は知っているか」
と矢つぎばやに質問した。
これに対し、松尾局長は
- 「北洋漁業での抗生物質の使用は法律でも認められているが、必要最小限にしたい」
- 「ストレプトマイシンを含む農薬は知らなかった」
- 「必要があれば抜打ち検査も致します」
と受身の答弁に終始した。
(朝日新聞43.3.23)
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4. 戦時中以来の水虫がすっかり治った
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倉敷市 T.W.
昨年夏のことです。他のある病気のため、遠藤先生に教えられて、毎日、青汁を5合6合と飲み、その他は、牛乳以外、大豆やトウフと、ジャガイモやサツマイモ、それからソバ粉その他の雑穀粉ばかりを食べました。
ところが、戦時従軍中以来、かれこれ30年間冬でも足のあちこちに残っており、夏になるとこれが悪化して困った水虫。もうどうにも仕方がないものと、実はすっかりあきらめていた水虫が、きれいに治ってしまいました。
それというのは、7月初め、胃潰瘍がひどく悪化して、今すぐ手術を、ということになったのです。けれども、秋まで、どうしても手がはなせない仕事があったので、どうしたものかと、遠藤先生に相談してみたわけです。
すると、先生は、タバコも酒も甘いものも、きっぱりやめるだけでなく、必ず毎日の食物全体を、徹底的に改善しなさい、そうすれば、秋まで手術をのばすことができよう、そして、あまりムリをしなければ、毎日仕事に出てもよかろう、とのことでした。
そこで、先生に教えられたように、極力つとめたわけです。ところが、そうした食べ物が、結構おいしく食べられるのです。そして、だんだん胃の調子がよくなり、気分もすぐれてきて、毎日仕事に精が出ました。
それだけではなく、思わぬ事に、もう、少し悪化しはじめていた水虫が、すっかり治り、きれいな足になったのです。そして、ただ今も、水虫らしいものは、どこにも見あたりません。
さて、この頃は、手術前のような食べ方はしていないものの、毎日せっせと青汁を飲み、その他の食物もよほど改善しているので、この夏、はたして、水虫ができるかどうか、楽しみに待っています。
なお、9月下旬に手術をうけたのですが、7月初めより、はるかに栄養状態がよくなっていたらしく、別に輸血の準備をする必要もなく、無事、手術がすみ、その後の経過も、しごく順調でした。そして、意外に早くから仕事に出はじめたのですが、別にこれといったことも起こらず、しごく丈夫になって、毎日仕事に精が出ています。
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5. 女児のゼンソク
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唐津市 H.O.
女児のゼンソクにて青汁を思い立ったのですが、現在キャベツの外葉、人参、レンコン、ヨモギ。それにミカン中2箇くらいを加え、ハチミツ大さじ1杯位入れて、全部で200c.c.位を、一日一回のませております。
青汁をのみ始めまして50日になりますが、顔色がグンとよくなり、ゼンソクも殆んどおこらなくなって来ました。
〔ご注意〕
青汁は緑の葉っぱばかりからつくるべきです。なお人参は入れない方がよろしい。人参にはビタミンCをこわす成分があり、青汁のCをへらすからです。
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6. 自然にまかせ
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吾輩在外の頃は、孰れの動物園でも、熱地産の猴や鸚哥を、不断人工で熱した室に飼たが、近時は之を廃止し、食物等に注意さえすれば、温帯寒暑の変りに馴染み、至って健康に暮すという。何事も余り世話焼は致さぬがよろしい。
(南方熊楠全集第二巻)
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7. ちょっとコッケイ
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8. 四本元気で
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東京都 H.T.
去年まきましたケール、消えてしまうかと案じましたが、4本が元気に生育し、巾30センチ、長さ40センチ位の葉になり、ナス、キウリと同居し、おしあいへし合い、弱いのは負けて消え、いま4本で、毎日しぼってのんでいます。88の低血圧なので、今のところまいっていますが、がんばって保育所に通っています。キウリの葉は全く苦いですね。
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9. 生活のたのしみ
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愛知県 H.I.
野の草など芽ぶいてまいりまして、青汁の材料に混ぜて、春の香りをたのしんでいます。中風後遺症の治療につとめている私にとって、春はまことにうれしく、青汁材料の若草を探して摘んで来て、青汁にして毎日いただく。得もいわれぬたのしさです。
ほんとうに青汁は健康のもといです。ケールも自分で毎日畑へ出て栽培いたし、自らの手でつくった青葉から、自らしぼっていただくたのしさは格別です。
私だけでなく、祖父(84才)、私の檀那寺の方丈さんの分まで、毎日、休みなく、しぼって飲んでいただき、大変によろこばれています。
よろこばれるうれしさに畑へケールをつくり、若草を野に探して摘み、青汁をしぼることが生活のたのしみになって、生き甲斐をおぼえ、身体の健康にもよく、病人と思えない色つやとなり、他に同病でなやんでいる人をもはげましているほどです。
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10. 驚くほどの健康に
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11. 咽喉がよわい
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水戸市 K.T.
昨年6月より青汁を始めましたが、咽喉の弱い小生には、きいたらしく、殆んど故障なくすごすことが出来ました。ただし、本年一月にはカゼをひいて大熱をだしましたが。また、心臓、血管系が少し悪く、血圧が高いのですが、青汁を飲んでいると、大変よいようです。
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12. ムシ歯の日
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6月4日はムシ歯の日。
子供達にムシ歯がすごく多いので、毎年毎年ハミガキ運動がやかましくいわれている。
しかし、とんと、ききめはないとみえ、歯科はますます繁昌している。
水道にフッ素を入れるとよいそうだが、ウッカリすると、とんだ大事になりかねぬ物騒なもの。
大切なのは、何といっても正しい日常生活、ことに食べもの。砂糖をへらす(菓子をやめ、味つけの砂糖を少くする)。
白米飯やパンよりは、イモ、マメ、ソバ。肉や魚の代りに、骨はらわたとも食べられる小魚や大豆もの。良質ナッパをうんとそえ、つとめて生食。せめて青汁だけでも、しっかり飲む。間食はクダモノ、いり豆といったもの。そして、みんなよくかむこと。
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13. 質問箱
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問
ケールにアブラムシがまぶれついて少しも大きくなりません。よい駆除法はありませんか。
答
指でつぶすのがもっとも簡単かつ確実ですが、タバコの煎じ汁(タバコの吸殻を濃い茶のように煎じ、粉石鹸を少し入れて)を筆でつけるのもよいでしょう。
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コラム紹介
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