健康と青汁タイトル小 <1962年1月15日発行 第65号>
 目次




1.青ナッパブーム

     医学博士 遠藤 仁郎 

     青汁の声がたかまるにつれて、ケールを栽培しようとする人がたいへん多くなりました。ケールブームというところでしょうか。
     しかし、青汁はケールでなければならぬのではありません。だいたい、青汁をすすめているのは、良質の青ナッパをナマで食べることが、私どもの習慣食のあやまりをなおす有力かつ簡便な方法であり、栄養のまちがいのためから来ている健康上の欠陥や、病気のなおりをよくするのに役立つからです。
     そして、ケールがすめられているのは、成分がすぐれている(つまり邦食に不足しているミネラルやビタミン類がそろって多い)ことはもとよりですが、味の比較的よいこと、周年栽培できること(もっともこれは土地の条件によることですが)、また、収量が多く大量の供給に適しているからです(事実、これが導入によって、はじめて病院や学校での給食や市販も実現されるようになりました)。

    1、ほかの野菜でもよい
     しかし、同じように質のよい野菜なれば何でもよいので、カキハダイコンの葉(ふつうのダイコンの葉はからい)、コマツナ、カブの葉、ミズナ、アブラナ、キャベツやハナヤサイの外葉、パセリ、シソ、ニンジンの葉など、いずれも適当です。
     ですから、これらをつくっておくと、いろいろ都合のよいことがあります。

     その1 ケールはもともと成長がおそく、ふつう種子をまいて葉がとれだすまでには、少くとも2〜3ヶ月はかかりますから、急の場の間にあわぬうらみがありますが、ダイコン、コマツナなど速成種を併用すれば、その欠点を補うことができます。
     その2 ケールだけだと思いもかけぬ天候異変のための見込みちがい、たとえば、予想外のトウ立ちのためや、はげしいベト病の蔓延のため、材料難に陥るといった場合などにも、大いにたすかります。
     その3 真冬のケールの汁はひどくねばって、しぼりにくくなり、とれる分量も少くなるのですが、その際水分の多いナッパ類があると、その加減にも便利です。
     その4 青汁ということは、結局、大量の青ナッパを食べる方便にすぎませんから、こうしたやわらかい野菜類を、そのままパリパリやれば、青汁の分量は少くてすむし、だいいち、そのほうがおいしくもあります。また青汁をのんでいる場合には、それだけミネラルやビタミンに余裕ができて、一層青汁の効を増すことにもなります。

    2 どのケールでもよい
     また、ケールには、たけの高いもの、低いもの、葉の大きいもの、小さいもの、分厚いもの、うすいもの、ちぢんだものなど、いろいろの種類があります。
     私どもは、葉が大きくてやわらかいツリーケールを推賞していますが、それは、汁がよくとれるのと、たけが高いと何か清潔感もあるからなので、べつに、これに限ったことではありません。
     たいがいの種苗会社にはポルトガルケール(葉が分厚くて、丈の低い、キャベツによく似た品種)の種子くらいは持ちあわしているのですが(カキハ甘藍とか、羽衣甘藍、あるいはチキンケールなどといって)、おかしなことに「このケールはニワトリには食わせるが、人間が食ってよいかどうかわからぬ」とか、「人間の食うものでない」などといっているようです。
     このことは、ケールばかりではなくカキハダイコンやレ−プ、CO(いずれも飼料菜)でも同じですし、ふつうのダイコンやニンジンの葉でも、わかい時は食べても、たけたものは人間の食うものでない、食ってはならぬものときめられているようですが、動物の食っていいものが、なぜ人間に悪いのか、なぜ食っていけないのでしょうか。いやいや、とんでもない人間どもがよろこんで食っている所こそ、ほんとうはカスで、動物たちがいただいている所こそ、もっともすぐれた食べものなのです。
     ニワトリの産卵率にも、牛乳の乳の出方にも、青葉で最大の効果があがることを知っていながら自分みずからのからだに応用しようとしないのは、人間の思い上がりというものでしょうか。
     それはともかく、青汁ブーム、ケールブームも結構ですが、もっとひろく、青ナッパ(良質の)ブームになってほしいと思います。


2.川柳

     医学博士 遠藤 仁郎 

    めでたさは家内そろって阿呆しるの味
    いつまでも変らぬ若さ青いつゆ
    年を経て青汁味いよよよき
             (青汁狂)

    青汁に暮れ青汁に明け
    朝の雑煮も憾む元旦
    屠蘇機嫌覚めて青汁思い出し
             (船曳、田辺)


3.青汁に対する 受け答えのタイプ(1)―大別すると五つ位ある―

     友成 左近 

     青汁の効用を身をもって体験したものは、互いに、その喜びを分かちあい、その効用を語りあう。機会さえあれば、それを人にすすめる。私も、その一人だ。
     人に青汁をすすめてみると、受け答えの仕方が、人その人によって、いろいろ異なる。これも互いに語りあうことだが、中国のだれかがいったように「海の中にはいろいろな魚がいる」ことが、よく分かる。が、これも、いくつかのタイプに類別してみることができる。
     こころよく受け入れて、青汁に親しみ、その効用を身をもって体験して、互いに喜びを語りあうようになるタイプ――受容型と、容易に受け入れないタイプがある。  容易に受け入れないタイプにも、テンから耳をかそうとせず、いやな顔までして拒むタイプ――拒絶型と一応は耳をかすが、なかなか親しむようにならないタイプがある。
     耳をかすタイプにも、とにかく、すすめられるままに青汁に近づいてはみるがながくは続かず、なんとかリクツをつけて止めてしまうタイプ――腰折れ型と、いっこうに関心を示さず近づこうとしないタイプ――無関心型と、知ったかぶりに受け答えをするが、いっこうに始めようとはしないタイプ――博識型がある。

     受容型
     いうまでもなく、受容型に出くわすことは、極めて少ない。たまたま運よく、こんな人に出くわして、青汁をこころよく受け入れてくれると、こんな嬉しいことはない。やがて必ず丈夫になって、その喜びを語りあうようになる。時間のたつのも忘れて、青汁談に花をさかせることもある。あたかも長年の知己であるかのように、好意にあふれた交わりに入ることも、少なくない。

     拒絶型
     案外少なくないのが拒絶型だ。この型に出くわすと全く面くらう。
     が、えてして、この型の人には、偏食がはげしく、栄養状態も悪く、からだのあちこちに故障のある人が多い。で、つい、すすめてみたくなる。
     よっぽど上手にもっていったつもりでも、顔をしかめて、固く耳をとざしてしまう。おそらく機会あって青汁のことを聞いたこともあるらしく、いまにも吐きそうな所作までする人もいる。
     なんだか悪いことをいったような気がする。が、なんの風の吹きまわしか、そのうち、始めてみようかと相談にくることも、タマにはある。知らぬ間に始めていて、オヤオヤと思うこともマレにはある。

     腰折れ型
     腰折れ型は割合多い。人のすること、すすめることは、なんでもやってみようと、気が多いせいか、あるいは、どこかからだに不調があって困っていたのか、とにかく、すすめられるままに飲み始める。
     が、やがて、どうもムカづいてショウがないとか、下痢して困るとか、いっこう効き目がないとか、どうも飲み忘れることが多くてとか、いろいろリクツをつけて続けない。
     だが、こんな人には、そのうち、からだ具合が悪くなったり、またなにかキッカケがあると、再び始めるものが多い。あるいは、せめて子供にはと、子供には続けて飲まそうとするものもいる。なかには、悪趣味のせいか、知ったかぶりに青汁にケチをつける手合がいる。

     無関心型
     最も多いのが無関心型である。一応耳はかしてくれるが、マアこれまで通りでと、サッパリ手ごたえのない現状維持派だ。
     どうも他に忙しいことがあって、というもの、別にそんな変ったことをしなくても、これまで通り人並にやったら、というもの、食べなれたもの、うまいものが一番身につく、というもの、あるいは、ごらんの通り丈夫で、と、なかば拒絶するもの、いろいろだ。
     ときには、なんぞ特別な健康法をやっているのか、マトモに聞きいれようとしないもの、逆に、タカが青菜ッ葉の汁に何の効用がある、と説法に及ぶものもいる。青虫をつぶした汁みたいなものを、と、マゼツかえしてくるものもいる。
     あるいは、丈夫になろうと、なにか分かったような分からないようなものを求めているが、青汁がオアツラエでないため、縁なきものと、関心を示さないもの、からだによいそうですが、どうも私はダメなんで、とみずから寄りつこうとしないものもいる。
     こうした型の人にすすめていると、張り合いのないことおびただしい。からだ具合が悪くなって、少々閉口するまでは処置なしの手合いか。
     だが、ときには、子供はウンと丈夫に育てようと思って、子供にはしっかり飲ませ、やがて、おうた子に教えられていることもある。

     博識型
     博識型も少なくない。青汁がマスコミに乗ってからは、割合多くなっているようだ。
     この型にあって、談たまたま青汁にふれると、シャカに説法といっては失礼ながら、こちらが恐れいることがある。青汁には、ヤレ葉緑素が多いの、ビタミンなんとかがどうの、どんな病気によくきくの、だれそれさんは青汁で難病を治したの、と、いろいろ説明してくれる。材料や作り方のよしあしまで教えてくれることもある。

     が、さて、ご本人は、というと、青汁を口にしたこともないのがいる。そのくせ、からだに故障をもっている場合も少なくない。なんだか、丈夫になる方法を知っていることと、丈夫にすることとを、すりかえているのではないか、「医学博士」になっただけで、こと足りているかのように考えているのではないか、と思われる。
     いうまでもなく、この手合いが最もにが手た。
     全く人さまざま、十人十色である。タカが(というほど些末なものではないが)青汁をすすめたぐらいのことで、その受け答えが、人によって、こういうふうに異なっているのは、いったい、なぜなのだろうか。


(以下次号クリック

4.特集 小学校の青汁給食 座談会



 
 遠藤会長の挨拶

     本日は、日曜日で、ごゆっくり休養されたいところを、わざわざお集り下さいまして、まことにありがとう存じます。  お互いに喜ばしいことですが、35年秋以来、主婦の友が熱心に青汁を取りあげているためか、青汁が急速に普及してまいりした。とくに小学校の給食に青汁を取り入れているところが、岡山・広島両県内だけでも、もうすでに40校以上となりました、これから始めようとしている学校が、全国的に非常に増加しているようです。倉敷西小学校には、全国各地から、毎日のように問い合わせがくるようになり、直接視察にこられる方も、目立って増加しています。私のところにも同様です。
     申し上げるまでもなく、小学校時代は、体の基礎作りをする重要な時代です。とくに、入学までになおしていない偏食などは、ぜひこの時代になおして、正しい食事をするように習慣づけないと、あとでは容易にできません。これには、皆さん方が直接経験しておられる通り、給食に青汁を取り入れることが、最も確実で安全な方法です。ぜひ広く、学校給食に青汁を取り入れるようになってほしいものです。
     けれども、青汁は、この頃よほど普及してきましたが、これまでの食習慣からみると、少々風変わりなものです。これを学校給食に取り入れるには、子供に対する深い愛情はいうに及ばず、青汁についての的確な理解と強い信念と慎重な努力が必要であろう、と思います。
     で、すでに学校給食に青汁を取り入れておられる皆さん方は、これまで、いろいろと苦心されたことと思います。そこで、お互いの経験や考えを交換して、よりよい青汁給食をするのに役立てたらと思い、また、これから始めようとしている学校の参考に資することができたらと思って、この座談会を開いた次第です。
     司会は貝原先生にお願いしましょう。



 小学校の青汁給食 座談会 その1
 
4-02. 青汁給食の開始と効果

    貝原
     青汁給食の経験や考えといいましても、範囲が広いことですし、こうした座談会は初めてのことですから、問題点をいくつかにしぼって話し合いたいと思います。

 
 
 4-02-01. 青汁給食を始めたのは

     まず、いつ頃から青汁給食を始めたか、現在何名位飲んでいるか、といったことから話して頂きましょうか。早く始めたところから……
    大熊
     倉敷西小学校では、学校で青汁を作って飲ませる、というふうに厳密にいえば、29年10月からです。が、各家庭で作って飲むように指導し始めたのは、昭和24年です。
     この指導を始め、学校で青汁を作って飲ませるようにした、青汁給食の育ての親は、ご存じの通り、司会者の貝原先生です。
     私は、その頃、同じ市内の万寿小学校にいたのですが、西校の青汁給食の効果に感服して31年から万寿小学校でも始めました。それから、同じ市内の西浦小学校に赴任したのですが、ここでも青汁給食を始めました。
     36年春、青汁給食の本山ともいえる倉敷西校に赴任してきたわけですが、私には、学校給食に青汁は欠かせない、ということが、いわば常識のようになっています。
     なお、初めて青汁給食の道を開いた貝原先生の苦労は、みなさんご存じのように、大変なものでありまして、私は、おかけで、割合らくに青汁給食を始めることができたわけです。これから始めようとする方は、まず貝原先生の苦労に感謝して、これを手引きとしなければなりませんね。(貝原邦夫著「子供のからだとグリンジュース」参照)
     倉敷西校では、現在児童900人中500人が、毎日180cc(1合)ずつ飲んでいます。
    西田
     吉備小学校で始めたのは、33年4月です。現在900人中、300人が、毎日180ccずつ飲んでいます。
    藤本
     福浜小学校は、34年9月で、現在1200人中800人が、毎日180ccずつ。
    大饗
     私のところは伊部幼・小・中学校で、35年7月から、現在約1000人中400人が毎日180ccずつ。
    大森
     富山小学校は、36年6月です。なにぶん児童240人という小さな小学校ですから、最初から、学校で作って給食するというわけにはいきませんので、さしあたり遠藤青汁協同組合から青汁の配達をうけて給食する、という方法で始めました。現在約90人が毎日90cc(5勺)ずつ飲んでいます。

    貝原
     青汁給食は、文部省や教育委員会ですすめられているものではなく、また、どこでもやっている、といったものでもなく、全く目新しいものです。それどころか、青汁そのものが全く目新しいことで、それまでの食習慣からみると少々風変わりのものですから、学校給食に青汁を取り入れる、ということは、いかにも新奇なことです。
     これを始める以上は、その効果に強い確信をもっていたわけであり、また、その効果の早くあらわれることを期待したわけでしょうが、実際あらわれた効果はいかがでしたか。個々の子供に関することは、あとまわしにして、校長先生として、全般的に眺めたところから。


 4-02-02. 卒倒者がなくなる

    藤本
     私が「ここに効果あり」と痛感したのは、この間、鼓笛隊の市内行進のときです。ずいぶん沢山の子供が倒れましたが、私ところの子供は一人も倒れませんでした。岡山市内で本格的に青汁給食をしているのは私ところだけでしたので、青汁を毎日のんでいると、こんなに耐久力がつくものかと思いました。別に私ところの学区か特別であるというわけでなく、まあ普通ですからね。
     私が現在校に赴任してきたときは、どこの学校でも同じようなことでしょうが、むし暑い日の朝礼では、倒れる子供が多く、休養室にある二つのベットはまるでメザシをならべたようになる、といった有様でした。が、この頃では、こんなことは全く見られないようになりました。
    大熊
     学校の行事で、子供が倒れることほど心配なことはありませんね。ところが実際、青汁を飲んでいる子供、とくに長い間のんでいる子供は、よほどのことがない限り倒れませんね。
     よく聞くことですが、「倉敷西小学校に赴任してきた先生が、まず不思議に思うことは、朝礼で倒れる子供がいないこと」「西校にいた先生が他校に赴任して驚くことは、朝礼で倒れる子供が多いこと」だそうです。
    貝原
     青汁を飲んでいると倒れなくなる、というのは、どういうわけなのでしょうか。
    遠藤
     これは脳貧血による卒倒で、起立性調節障害といわれているものです。小学校高学年から、中学校時代に多くあらわれるもので、自律神経の機能(調節)障害ということになっています。
     何分、十代前半、いわゆるローティ−ンの時代は、身体の発育がすばらしく、従って半面、各種の生理機能に不調和を引き起こし易い時期です。それで、成人では、それほどでない栄養の間違いでも、この時期には、すぐ機能障害を引き起こし調節が不安定になるのではないかと考えられます。
     そして、青汁による栄養改善で神経の調節が安定して来るのでしょう。


 4-02-03. ケガが少なくなる

    大饗
     私ところも、倒れる子供が目立って少なくなっています。それから、ケガをしたあと、化膿する子供が、そう見あたらなくなっています。が、私、なぜだろうか、と不思議に思っていることは、ケガをする子供が目立って少なくなっていることです。それかといって、以前と同様に、元気にあばれまわっているのですが。
    藤本
     私ところも同様です。ケガをする子供が少なくなり、それに、気分が悪くなる子供も少なくなってきたので、休養室にくるものが目立って少なくなっています。
    吉川
     私ところも同様です。もっとも休養室に来るものは、そうへってはいませんが、どうも、休養室に来る子供のうちには、何か家庭的な事情もあるのか、私にあまえて来る者が少なくないようです。
    貝原
     これは、いったいどういうわけでしょうか。私も倉敷西校にいたとき、ハラハラするほどムチャなあばれ方をしていても、案外ケガをしないのをみて、これは体育を十分行っているためか、と思っていたのですが。
    藤本
     確かにそういうこともあるでしょう。が、ケガをするのは、とかく落ちつきのない、ソソツかしい子供に多いようですが、青汁を飲んでいると、栄養状態がよくなり、情緒か安定し、運動神経が機敏になるせいでしょうか。
    遠藤
     そういうことも確かにあるでしょうね。
    大熊
     これは面白い問題ですね。相変わらずあばれまわっているが、ケガをするものが少なくなった、ということは確かに事実のようです。もっと、そうした事実を調査して、その理由も調べてみたいものです。


 4-02-04. 要注意児童がなくなる

    西田
     私ところの青汁給食は、要注意児童に重点をおいて出発したのですが、すばらしい効果をあけました。初め児童約1000人中30人ほどいたのですが、現在では、1年生に2人と、他に、もうしばらく念のため気をつけたら、というのが3人です。
     1年生と2年生では、どんなに少なくても、虚弱児のために、養護学級をそれぞれ作っています。そして給食には特に気をつけながら、全員に毎日180cc以上の青汁を飲ませています。この効果はすばらしく2年生となり、3年生となると、全員、他の子供に少しも劣らない位丈夫な体となってきます。授業も落ちついて受けるようなり、普通の学級に移してからも少しも劣らずに、やっていけるようになっています。
     かっては、いろいろな栄養剤を与えていたのですが、こうした効果は殆ど見られませんでした。が、青汁を加えた給食の改善で、全くすばらしい効果をあげたわけです。


 4-02-05. 出席率がよくなる

     このため、学校全体の出席率が目立ってよくなり、この頃では、病気欠席は、900人中、平素は5―6人です。

    藤本
     私ところも出席率か目立ってよくなりました。欠席は、長期欠席や事故欠席も含めて、1200人中12―13人です。病気のため短期間欠席する者はホンの僅かのようです。


 4-02-06. カゼをひかなくなる

    大饗
     私ところも出席率が非常によくなってきました。長期欠席以外の病気欠席は、大部分カゼか腹こわしのようですが、青汁を飲んでいる子供は、カゼをひきませんね。ひいても早く治り、欠席しても僅かですね。腹こわしをすることも少なく、下痢しても早く止まるようですね。


 4-02-07. 顔のハタケがなくなる

     それから、顔にハタケ(顔面白癖)ができている子供がかなりいたのですが、この頃あまり見あたらなくなりました。文部省では、補助金まで出して、この治療を促進しようとしているそうですが、青汁を飲んでいると治りますね。

    藤本
     私ところもそうです。実は、このハタケについて面白い話がありましてね。青汁給食を始めようという気運か起ったときに、PTA役員一同と共に、倉敷西校の視察に行った折のことです。行く前に青汁の効能について、いろいろ説明しておいたわけですが、ある役員が、ハタケが治る、ということをよくおぼえていて、倉敷西校の子供に、ハタケのあるものはいないか、よく注意していたが、一人も見あたらなかったそうです。この方はモノごとに熱心であると共に、役員のうちで有力者であったので、青汁の効果疑いなし、ということが、役員の間にひろまって、青汁給食の開始を促進した、というわけです。


 4-02-08. 回虫保有者が少なくなる

    大熊
     話が前にもどるようですが、よく貧血をおこして倒れる子は、回虫をもっている子に多いようです。ところが、青汁を飲んでいると、回虫がわかなくなるようです。私のところでは、回虫をもっている率は、青汁を飲んでいる子は2%で、飲んでいない子の4分の1となっています。
     子供の回虫駆除は厄介なことで、もっている子は、何回駆除しても、相変わらずもっている、という有様で、これが一つの原因となって栄養状態が悪くなるようです。常識通りに、生野菜を食べないように、食事前に手を洗うようにしている家庭の子供も相変わらずもっているようですが。
    遠藤
     回虫を防ぐには、いうまでもなく、人糞を使った野菜(従って殆どすべての菜ッ葉)は必ず熱を通して食べることが大切です。が、回虫卵は、生野菜についているだけでなく、教室のホコリの中にも、家庭のタタミの上にも、いな至る所にいます。だから、食べ物を清潔に扱うと共にたえず手を洗うことが大切です。
     けれども、こうした消極的な方法のみでなく、積極的に回虫がわかないように、体を丈夫にすることが大切です。青汁を飲んでいると、回虫がわかなくなるのは、胃腸の粘膜が丈夫になり、たとえ口から回虫卵がはいっても、体内に通さないからです。


 4-02-09. 食欲がまし偏食がなおる

    西田
     青汁を飲ませていると、給食を残さず食べるようになりますね。この指導には、ずいぶん苦労してきたものですが、青汁を飲ませていると、いつの間にか、そう注意しなくてもよいようになります。で、なんとか、すかしたり、おだてたり、教えたりして青汁を飲ませ始めると、あとはそう苦労しなくても、偏食をなおすことができ、ボリボリ食べるようになりますね。


 4-02-10. 根気がつく

     それから、なんとなく、落ちつきができ、根気がつき、そう疲れなくなるようですね。学校で何か行事をするとき、こうしたことがよく分かります。


 4-02-11. 体格がよくなる

    大熊
     確かにそうです。それから、いうまでもなく体重、胸囲、身長といった体格が目立ってよくなりますね。貝原先生が細かい統計を取って示している通りです。(「子供のからだとグリンジュース」参照)
    貝原
     私の作った統計はまだまだ不充分なものであり、比較する統計も、もっと適切なものを取り上げてみなければ、と考えています。それから、お互いに研究して、青汁の効果を的確に理解できるような統計を作るようにしたい、と思いますが。
     校長先生として、ザッと全般的に見渡したところを伺ってきたわけですが、個々の事例については、いかがですか。話し始めたらキリのないことですから、これは、といったことを一つ二つ。


 4-02-12. ヒキツケがなおる

    吉川
     生来、胃腸が弱くよくヒキツケをおこす子が入学してきまして、就学延期にしたら、という意見も出ましたが、保護者の希望もあって、養護学級に入れて、とにかく青汁をしっかり飲ませました。
     入学前は、ほんとに少食で、偏食もはげしかったそうですが、入学後も、いつも給食を食べ残す、といった有様でした。で、とにかく青汁だけは、毎日必ず180ccのませ、できるだけ給食を残さないように指導してみました。ところが、だんだん食欲が出てきて、1学期の終わり頃には、毎日少しも残さず食べるようになりました。と共に、ヒキツケをおこすようなこともなくなり、普通の子と、そう見劣りしない位になりました。


 4-02-13. 痔の痛みが軽くなる

     それから、痔を患らっている先生が、しょっちゅう、うかぬ顔をして休養室に来ていましたが、青汁を飲み始めてから、いつの間にか、そう来なくなりました。あまり痛まなくなったそうです。


 4-02-14. ムネヤケがなおる

    藤本
     私ところの先生に、胸やけのはげしい方がおりまして、いつもむつかしい顔をしていましたが、青汁1週間で、らくになり、その後すっかりよくなりましてね。大いに青汁をすすめるようにりました。
     また、私ところの青汁給食が円滑に出発したのは、校医が、青汁で大病から救われ、青汁に熱心であったからです。


 4-02-15. 胃カイヨウがなおる

    大森
     これは私自身のことですが、胃カイヨウで閉口していたとき、藤本先生から青汁の話をきき、早速始めたところ、意外の効果があらわれました。こうした体験から、この度、学校で青汁給食を始めたわけです。
     私は、要注意から要治療というところまでいったのですが、青汁で、普通の勤務ができるようになったのです。


 4-02-16. ハナ血が出なくなる

    西田
     私のところでは、たえずハナ血を出していた子がいまして、保護者も心配していました。青汁給食の効果第1号は、この子にハナ血が出なくなったことです。これがキッカケになって、校内で青汁が深く認識されるようなったようです。


 4-02-17. 便秘がなおる

    吉川
     私のところに、ひどい便秘のため、しょっちゅう、休養室に来ていた子がいましたが、青汁1週間で、便通がよくなり、見るからに朗らかになりました。


 4-02-18. フキデモノが出なくなる

     それから、先生にも子供にも、たえず顔にフキデモノが出て、いろいろ手当をしても、治らない方がいましたが、青汁を飲み始めてから、いつの間にか、出なくなりました。それだけでなく、皮ふが引きしまって美しくなりました。最も手近な美容法として、大いに宣伝しています。


 4-02-19. 肩こりがなおる

     その他、いちいちあげていきますと、キリがありませんが、肩こりがなおって、体がなんとなく軽くなり、ビタミン注射と縁ぎれとなった方が沢山います。



 小学校の青汁給食 座談会 その2
 
4-03. 青汁給食の動機と開始の手はず

    貝原
     青汁給食を始めるに当って、校長先生や他の先生、あるいは、その家族や友人が、青汁で大病から救われた経験が、大いにあずかっている場合が多いようです。けれど、これを学校で始めると、ずい分苦労されたことと思います。で、その動機は。
    西田
     青汁給食を始めて痛感したことは、子供のために、どんなによいことでも、ただ「教師」であっては実行できず、「狂師」にならなければならない、ということです。子供のために本当によいことであれば、まるでキチガイみたいに、ひたむきに取り組まねば、実を結びませんね。とくに青汁のように、広く理解されないものには。

 
 
 4-03-01. 「完全給食」という栄養上不完全給食

    藤本
     全くそうです。あつかっている子供を、ただきまりきった通りに教育していては、本当の教育になりませんね。とくに体の基礎作りの時期の子供ですから、なによりもまず健康で丈夫な体を作りながら、よいしつけをつけ、しっかり勉強するように指導しなければなりませんね。
     それにつけて思うのですが、現在の学校給食は、いうまでもなく、しないよりは、はるかに有効ですが、それにしても、もっと工夫する必要がありますね。「完全給食」といっても、それは1食分として、いわばサラ数がそろっている、という程度のことです。給食費その他の関係で、むつかしいことではありますが、おいしく食べられるかどうか、ということも、さることながら、栄養上からみても、いろいろ問題があります。


 4-03-02. 子供の食事全体が完全栄養となるように

    大熊
     学校給食は、それが名実とともに完全給食であるためには、まず第一に、その1食分だけでも栄養上完全でなければなりません。でないと、完全栄養食を弁当にもってくる子供には、トンダおせっかいとなるわけです。
     第二に、今一歩すすめて、子供が毎日とる食事全体が完全栄養に近づくように、家庭でとる食事で欠けている栄養分を、学校給食にウンと盛りこむことが大切です。学校給食は、子供の1日当りの食事全体の6分の1か4分の1位ですから、よほど思いきった献立が必要です。
     と共に第三に、子供の食習慣の改善をはかり、さらに、これを手がかりとして、家庭の食習慣をも改める、という意気ごみが必要です。


 4-03-03. 青汁給食の追加が最も確実で安全で安価

    西田
     全くそうです。私は、現在校に赴任してから、まず第一に着手したのが保健教育とくに虚弱児対策です。そのため、完全給食を始めると共に、とくに要注意児童には、スープその他を追加したり、栄養剤を与えたりしてみたました。が思うような効果が出てきません。
     よく考えてみると、給食1食だけでも、栄養上不完全であり、家庭でとる食事も、恐らく給食とそう変りはないわけです。そこで、大熊先生のいわれる第一と第二の目的をはたすには、どうしたらよいかと考えていたところ、倉敷西小学校の経験や遠藤先生貝原先生の話をきいて、青汁を追加することが、最も確実で安全で、しかも安価な方法である、ということが、よく分かったわけです。
    大饗
     私ところも、全く同様な動機で始めました。とくに体の弱い子供をみると、しつけや勉強ばかり云っておれませんね。まず体を丈夫にして、他の子供といっしょに遊べるようにしてやらねば、かわいそうでね。
    大森
     私のところは、保護者が極めて教育熱心で、子供の学業成績はかなりよいのですが、どうも体の丈夫でない子供が多いのです。体格も比較的小さく、ケガをするものが多く、遠足に行ってヘタバルものが少なくないのです。弁当も栄養上不十分なものを持ってくる子供が少なくないのです。で、勉強も大切であるが、同時に、もっと体を丈夫にしなければ、と考えて、この度、青汁給食を始めたわけです。


 4-03-04. 青汁給食開始の手はず

    貝原
     それにしても、いよいよ始めるとなると、職員や保護者や市町村当局の理解と協力をはかるのに苦労されたことでしょう。どういうふうにされましたか。
    大熊
     私は、まず最初に、前々任校の万寿小学校で始めたのですが、幸い、これは倉敷西校の近くであったので、職員も保護者もよく理解していたので、積極的に協力してくれました。また、貝原先生が模範を作ってくれていたので、そう苦労はしませんでした。
     が、西浦小学校に赴任して始めたときは、同じ倉敷市内でも、倉敷西校から遠い所で、少々様子も異なっていたので、慎重にやりました。
     まず、西浦校の子供の体が他校に比べて劣っていることを、職員や保護者にとくと分かってもらいました。それから、子供の体を丈夫にするには、学校給食や栄養剤の投与のみでは不十分で、ぜひこれに青汁を追加する必要がある、ということについて、職員や保護者に理解をはかり、とくに貝原先生と遠藤先生に一回ずつ来て頂いて、話をしてもらいました。
     こうして、青汁給食の必要は広く理解され、いよいよ始めようということになりましたが、施設に必要な資金の出所がないのです。そこで私は、自分の金を直接出して始めると私ごとと誤解される恐れがあるので、自分の金を10万円預金して、これを担保にして借入金をして、施設をしました。もちろん独立採算制です。
     こうして始めたのですが、この努力が、子供の体にかきこまれていくので、何とも嬉しいことでした。
    西田
     私のところでは、学区内に遠藤青汁協同組合の支部があるので、保護者のうちには、ここから配達する青汁を飲んでいる者がいたので、全く無知ではなかったわけです。
     で、まず、貝原先生を招いて、職員一同に話してもらい、遠藤先生を招いて、保護者の集会で話をしてもらいました。それから、職員、保護者の代表が倉敷西校の視察に行って、青汁給食の効果と必要の理解をはかりました。他方、前記の業者に青汁を配達してもらって、要注意児童の一部希望者に飲ませてみました。
     ここで考えたことは、業者から配達してもらって給食するか、学校に施設をして作って給食するか、ということです。いろいろ考えもし、相談もしてみた結果、学校の保健教育という点から考えて、すでに給食もしていることですから、学校で作って飲ませる方針を立てました。
     そこで、職員やPTAにはかって、この方針を確立して、実施にふみきったわけです。そこで、町当局にお願いして、7万5千円支出して頂き、学校の購買部から2万円借りて、ごく小規模ながら施設をしました。そして、養護学級には全員のませ、その他は希望者のみ、ということで、独立採算制で出発しました。
     いよいよ給食の第1日目に、1年2年の養護学級の子供には、前々から云ってきかせてはあったのですが、涙をボロボロ出して手を出そうともしない子がいまして、これは大変なことを始めた、と心配しました。が、翌日、まさに、その子がまっ先にグッと飲んで、大声で、「ごちそうさん」と叫びましたので、それにつられ、他の子供もみな、グッと飲んで、ごちそうさん、と叫びました。このときは全く感極まりましたね。
    藤本
     私ところは、大熊先生か西浦校で始められたときと同様に、まず第一に、福浜校の子供が、他校に比べて、体格が劣っていること、病欠の多いこと、ケガをするもの、しかもそれが化膿するものが多いこと、それから、学校の給食は1食分としても栄養上不完全であること、これを完全にし、さらに1日分の食事が完全栄養に近づくようにするには、青汁を追加することが最も適切であること、といったことを職員や保護者にとくと理解してもらいました。このため、保護者の参観日に、遠藤先生と貝原先生を招いて、話をしてもらいました。
     幸い、学区内に倉敷レイヨンの工場があって、ここに、遠藤青汁協同組合が配達する青汁を飲んでいる保護者がかなりいましたし、校医が青汁で大病から救われた方で、この方が熱心に青汁をすすめていたので、青汁給食の必要が割合早く理解されました。とくに校医の方は、組合の青汁やその材料をよく検査して、これなら安全と、よく説明してくれたので、青汁給食の機運が非常に促進されました。
     そこで、百聞一見にしかず、というわけで、職員と保護者の代表が倉敷西校の視察に参りまして、いよいよ青汁給食を開始することにふみきったわけです。施設費は農協から10万円借り入れて、独立採算制で出発しました。
    大饗
     私ところの青汁給食は35年7月からですが、私が赴任した32年頃には、もう、青汁給食を始めては、という意向が保護者の間にチラホラ出ていました。私も、保健教育を重視していたので、ぜひ始めたいと思って、早速、PTA代表と共に、倉敷西校に行き、貝原先生の話をきいたり、青汁給食の施設を見たり、青汁を飲んでみたりしました。が、このときは青汁給食が主たる目的ではなかったので、開始の機運はそう強く起らずじまいでした。
     その後、やはり保健教育を主たる目的として、西田先生の吉備校の視察に参りました。そして、ここで、PTA代表が一様に驚いたことは、虚弱児らしい子供が殆ど見あたらず、給食は残さず食べていることです。西田先生の話を伺って、これは青汁給食の成果であることが、PTA代表みんなによく分かりました。
     そこで、PTAの集会に、貝原先生を招いて話をしてもらい、いよいよ開始することにきめ、さらに理解をより深めるために、始める前に、遠藤先生を招いて話をしてもらいました。
     最初、借入金をして、給食室の一隅に簡単な施設をして始めたのですが、始めてから、藤本先生の福浜校の視察に参りまして、青汁給食は、衛生管理上、給食室とは別の部屋でしなければならないことを一同痛感しました。
     そこで、20万円借り入れて、15坪ほどの部屋に施設をし、10万円借り入れて機械器具を整備して(5年間で返却する計画で)本格的に始めました。校内希望者が300人、近くの幼稚園と中学校や、学校付近の家庭からの希望者も合せて400人分(1人180cc)を作り始めた次第です。
     こうして、青汁給食を始めたのですが、学区内の家庭にも、青汁の理解が深くなり、また近くの小学校でも、始めようという機運が起ってきました。


 4-03-05. 青汁給食は学校で作って飲ませることが望ましい

    大森
     私ところは、ついこの間始めたばかりで、取りあえず業者から配達を(90cc市価14円位のところ8円で)うけているのですが、児童数240人位でも、やはり学校に施設をして、作って飲ませるようにしたい、と考えていますが。
     西田 ぜひそうした方がよいと思いますね。業者の青汁が信用できない、というわけではありませんが、大切な子供をあつかっていることですからね、衛生上からも、栄養成分を十分なものにする上からも、学校で作った方がよい、と思います。
     それに、そうすれば、配達の青汁の半額、180cc約7円ですみ、毎日180ccずつ飲ませても、保護者の負担はそう重くなりません。また、毎日これ位飲ませませんと、子供の毎日の食事全体が完全栄養近づかないようですからね。


 4-03-06. 200―300人給食で安価で採算がたつ

    大森
     だいたい毎日どれ位作れば、青汁給食が安価で独立採算でやっていけるものでしょうか。
    貝原
     私の経験や、これまで方々で聞いているところでは、200人分(1人180cc)で、どうにか安価で採算もたつようですが、300人分となれば、十分やっていけるようです。


 4-03-07. 開始手はずの要点

    遠藤
     青汁給食、とくに学校に施設をして作って飲ませるようにするには、本当に苦労されますね。とくに職員と保護者によく理解してもらって協力して頂かなくてはなりませんが、この場合とくに重点をおかねばならないことを、さきほどから伺ったところを要約してみると、こういうことだと思いますが。


 4-03-08. 子供の体の実状の理解

     第一に、小学校の間は、勉強やしつけと同様に、体を丈夫に作り上げることが大切である、ということをとくに認識してもらうことですね。そして、自校の子供の体格や健康状態や栄養状態が、国平均に比べ、また他校に比べて、実情がどうであるか、とくに理解してもらうことですね。


 4-03-09. 完全栄養食の必要

     第二に、体を丈夫に作り上げるには、いろいろなことが大切ですが、わけても毎日の食事を栄養上完全なものにすることが大切であること、それから、どことも平素の食事は栄養上不完全であり、このため体も丈夫に育ちにくいし、病気にもかかり易く、かかれば治療に手間どるようになっていること、こういうことを、よく理解してもらうことですね。これは、何分お互いさまのことですから、統計などを示して、トックリと説明しなければなりませんね。


 4-03-10. 青汁が完全栄養食への最も確実で安全なみち

     第三に、栄養上不完全な主要点は、ミネラル(とくにカルシウム)とビタミン(とくにA B2)が著しく不足していることであり、これは、生の青野菜で補うことが最も適切であり、また、これ以外に、これといった方法がない、ということ、青汁は、この生の青野菜を、胃腸をいためずに、できるだけ沢山に、しかも効果的にとるための工夫であること、そして青汁は、どんなに沢山とっても、決して間違いは起らず、多ければ多いほどよいこと、といったことを、とくと理解してもらうことですね。


 4-03-11. 青野菜・青汁には既知未知の栄養素が豊富に調和よく含まれていること

     第四に、こうした理解をはかるとき、生の青野菜には、これまで明さらかにされている栄養分だけでなく、未知の栄養分が数限りなく、豊富に含まれており、しかも、それがよく調和していること、これを青汁にすれば、あらゆる食品のうちで、栄養上最も完全で優秀なものであること、ここを、よく理解してもらうようにしたいものです。
     どうも、この頃、食事はまアこれまで通り、できればもっとおいしいものを食べ、体具合が悪くなれば、薬をのむ、少し気のきいた人は、予防的に、食事以外にビタミンその他の栄養剤をのむ、といった傾向が強いようです。これは、いかにも愚かなこと、気はきいているがマのぬけたことです。
     というのは、こういうわけです。薬剤とくに栄養剤には、これまで科学的に明らかにされているものの、一部分しか含まれていません。ところが、科学的に明らかにされている栄養分は、体に必要なもののホンの一部分であって、大部分のものは、まだサッパリ分かっていないのです。で、平素の食事は口先まかせにして、そこに不足している栄養分を栄養剤で補なおうとしても、とうてい十分な効果はえられないわけです。
     完全栄養をはかるには、どうしても既知未知すべての栄養分が豊富に含まれている自然の食物を十分にとる以外に妙手がないのです。青野菜とくに生の青野菜には、こうした既知未知すべての栄養分が最も豊富に、しかもよく調和して含まれているのです。
     こうしたことは、小鳥やニワトリなどに、生の青野菜をやったり、やらなかったりした場合どうなるか、といった事例で説明するとよく分かるようです。


 4-03-12. 青汁の効果を事実によって示す

     第五に、やはり、なんといっても、青汁を飲んで具体的にあらわれてきた効果を、個々の子供について、また統計的に示すことですね。それには、青汁を給食している学校を視察して、こうした事実をよく見てもらうことですね。
     いうまでもなく、こうしたことは、相手をみて、どれに重点をおくか、うまく工夫しなければなりませんが・・・・。



 小学校の青汁給食 座談会 その3
 
4-04. 青汁給食の運営法

    貝原
     青汁給食を、業者が配達する青汁でするのであれば、運営の苦労は少ないわけです。といって、青汁の製造販売という事業は、ごく最近始まったばかりであり、まだ、ごく一部の地区に限られています。で、こうした業者のいないところで青汁給食をするには、どうしても学校に施設をして作って飲ませなければなりません。
     が、たとえ業者がいる地区でも、青汁給食は、保健教育上、できれば学校に施設をして、材料は外から取りよせるが、青汁は学校で作るようにするのが望ましいことです。が、これには運営に苦労が伴います。まず施設の点から。

 
 
 4-04-01. 独立した青汁給食室を

    大熊
     まず第一に、独立した青汁給食室を作ることが肝要ですね。同じ給食といっても、他のは熱加工しますが、青汁は、用器などの消毒以外は、全然熱を加えないので、衛生管理には格別の注意が必要です。試験的とか暫定的といっても、やはり独立した部屋でしたいものです。
    西田
     全く同感です。私ところも、始めるとき、このことについて、とくと考え、独立した青汁給食室を作りました。
    大饗
     私ところは、最初やむをえず、試験的に給食室の一隅に施設をしましたが、実際、これでは、とうてい衛生管理に万全を期することはできないと考えて独立の部屋を作りました。


 4-04-02. 施設費約30万円

    貝原
     この頃では、おおざっぱにいって、どれ位かかるでしょうか。規模の大小によっても異なりましょうが。
    大饗
     私ところが最も新しい経験ですが、建物があれば、営繕設備に20万円、機械器具に10万円というところでしょうか。


 4-04-03. 子供の負担金 1日6-8円

    貝原
      どことも独立採算でやっているわけですが、子供の負担はどれ位になっていますか、1人1日180ccというのが原則のようですが。
    大熊
      私ところは、月定制で150円ですが、西浦校では、日数制で7円でした。
    西田
      私ところは、給食数が少ないためか、日数制で7円です。
    藤本
      私ところは、給食数が多いためか、日数制で6円です。
    大饗
      私ところは、まだ償却費が多く、給食数も少ないので、日数制で8円です。
    大森
      私ところは、業者の青汁で半分の90cc8円です。学校で作る場合の2倍ですね。
    貝原
      材料は、だいたい貫当り60-70円で納めてもらっているようですが、これから約15人分がとれるので、子供の負担金6-8円のうち、約3分の2は材料費、あと3分の1が人件費その他となるわけですね。
    藤本
      今後従業員の手当も増額する必要がありますし、また、設備機器の補修費も考えなければなりませんので、予算決算に当って10万円以上の予備金を作る必要がありますね。


 4-04-04. 従業員の要件

    西田
      青汁給食の従業員は、公務員として扱ってもえないので、いろいろ気をつけてあげねばなりませんね。が、これから採用するに当って考えなければならないことは、第一に、当人はもちろん家族も健康であること、第二に子供ずきであること、第三に清潔家で衛生に十分理解があることなどです。で、できれば高校卒にしたいものですね。
    貝原
      その上、青汁を飲んで、この効果を体験していることが、ぜひ必要です。
      西校の従業員は、必ず青汁を飲むという約束で採用したのですが、実際のんで、自分自身も、家族の方も、これまでそう気にもとめなかった体の故障がよくなって、大の青汁ファンになりましてね。仕事にも本当に熱がはいり、細かい注意もするようになり、子供に対する影響も非常によいのです。
    西田
      確かにそうですね。それから待遇を他の給食従業員と同等にすることが必要ですね。それにつけても、必ず労災保険に入れておく必要がありますね。僅か月25円位のことですから。本人も、なんとなく心丈夫になりますから。


 4-04-05. 衛生管理上の留意点

    貝原
      青汁は何分ナマものですから、運営上とくに衛生管理には、念には念を入れねばなりませんが、とくに、どんな点に気をつけていますか。
    大熊
      神経質といわれる位、よく注意しなければなりませんね。


 4-04-06. 設備と器具の清潔

     まず、施設の清潔についてですが、第一に、前にも申しましたように、青汁給食室は独立した施設にすることです。
     第二に、設備の配置ですが、清潔なものと、そうでないものとの置き場所を、はっきり区別して、仕事がうまく流れるようにすることです。そして、とくに清潔な場所には、金網をはるだけでなく、従業員以外は決して立ち入らなくても用が達するようにすること、立ち入りにくいようにして、決して立ち入らせないことです。
     第三に、部屋の内部は、すべてタイルかコンクリートにして、水道の水をホースで吹きつけて洗えるようにすることです。
     第四に、器具は、しぼり袋以外は、できるだけ金属製品にして、すべて毎日煮沸消毒をして、清潔に保管することです。
     第五に、設置してある機械器具は、煮沸消毒ができないので、水道の水をホースでタップリ吹きつけて、よく洗うことです。部屋の内部も同様です。


 4-04-07. 従業員の清潔

     つぎに、従業員の清潔についてですが、
     第一に、手と顔以外は、清潔なビニールや布でおおい、マスクをかけること、
     第二に、爪を短かく切り、仕事前に、ジャ口から出る水で、ブラシを使って、数分間念入りに洗うこと、仕事の合い間にも、少しでも不潔なものにさわった場合には、同様に手をよく洗うこと。
     第三に、清潔な部屋から外へ出るときは、必ず清潔な外被をとることです。
     第四に、毎月検便をして、もし寄生虫その他の有害細菌がいたときには、全治するまで仕事をさせないこと、もし下痢した場合には、早速検便して、その結果が分かるまで仕事をさせないこと、同居者に下痢患者が出た場合も、これに準ずることです。


 4-04-08. 材料の清潔

     それから、材料の清潔についてですが、これは、農薬や人糞を一切使わずに作るだけでなく、そうしたものがとんでくる、流れてくる恐れのない場所で作ったものであることが、まずもって肝要です。
     が、こうして作った材料の扱い方として、
     第一に、これを採取する方に、まず手をよく洗って採取するように(とくに当人や家族に下痢があった場合には格別よく手を洗うように)指導すること。
     第二に、採取した材料は、必ずおおいをかけて、不潔にならないようにして運搬し、不潔にならないような場所に保管することです。
     第三に、材料の洗浄は、次亜塩素酸ソーダを使うだけでなく、水道の水をタップリ使って、念入りに洗うこと、ブラシかスポンジを使い、ジャ口から出る水をかけながら洗うことです。たとえ清浄栽培をしたものであっても、風に吹かれてどんな細菌がとんできているか分かりませんので。また、念入りに洗えば、こうした細菌を十分洗い落とすことができますので。
    遠藤
      念のため一言つけ加えますと、次亜塩素酸ソーダは、棚ざらしとなると無効になるので、つねに新しい有効なものを使うことが大切です。また、もと葉のまま、あまり傷つけないように洗うと共に、この溶液には必要以上に長時間したしておかないことが大切です。こわれるビタミンがあるので。
     が、考え方としては、薬剤によって消毒するというよりも、不純物は水で洗い落とす、ということが肝要です。水道の水には、すでにかなり塩素がはいっていることでもありますから。
     なお、放射能灰も、こうして洗えば、表面についているものは、だいたい落ちます。中性洗剤を使えば、なおよく落ちますが、中性洗剤には、ベンゾールが含まれている疑いがあるので、もし、これを使った場合は、これを十分洗い落とすことが大切です。いっそ、これは使わない方が賢明かも知れません。


 4-04-09. 手ぬぐい、ふきんは使わないこと

     それから、青汁給食室、とくに清潔な場所には、手ぬぐいやふきんをおかないこと、従業員も、作業室内では手ぬぐいを持たないことが大切です。私たちは、手を水で洗うと、すぐふく習慣がありますが、この手ぬぐいやふきんを清潔にすることは、実際上困難であるからです。また作業上、手をふいたり、器具をふいたりする必要はないからです。
    藤本
      青汁給食の衛生管理には、本当に気を使いますね。幸い、私ところでは、校医がこの点によく注意してくれているし、材料や青汁も度々検査をしてくれますので、助かっています。また保護者の方も信用してくれます。


 4-04-10. 危険な農薬の検査は

    大饗
      私の方は、先輩校の経験を生かして、青汁給食の清潔によく気をつけているのですが、心配なのは材料です。寄生虫などは、検査すれば分かりますが、風に吹かれて、とんできた程度のものであれば、十分洗い落とすこともできますが、農薬とくに滲透性農薬の検査はどうしたらよいものでしょうか。
    遠藤
      実は、これが悩みの種です。自分のところでは一切こうした農薬を使っていなくても、付近の田畑で使えば、とんでくる恐れがありますからね。
     けれども、ただ今のところ、野菜にこうした農薬が含まれているかどうか、簡単な検査法がないのです。例えば、二千倍位のパラチオン溶液にしたした野菜でも、二日間かかって検査しても、検出し難い、といった始末です。しかも、内部にしみこんでいるので洗っても落ちないし、細菌ではないので、煮ても無毒化しないのですからね。全くもって始末に困ります。で、私たちとしては、さしあたり全く原始的な検査法しか使えないわけです。
     第一に、虫くいのあとがあるかどうか、虫がついているかどうか調べてみて、そうなっておれば、一応安全とみたらよいしでしょう。
     第二に、毎日、とどけてきた材料を小鳥に食べさせてみることです。もし小鳥に何ぞ異常が起これば、農薬の疑いがあるので、後手ではありますが、早く気がつくわけです。


 4-04-11. 材料の確保

    貝原
      青汁給食の衛生管理には、まずもって、材料が安全清浄なものなければならない、といっても、これを学校で自給するわけにはいきませんね。どうしても外部に委托して供給してもらうわけですが、これには苦労しますね。
     この夏から秋にかけては、需要が急に増したのに、天候の関係で不作でもあったので、材料入手難となって、青汁給食が毎日できなかった学校もあったようです。製造販売業者でも、材料を自給していなかったところは、配達が毎日できなかったようです。
     幸いここに集まっている学校は、うまく材料入手ができて、毎日給食したようですが、今後のこともあるので、これは、どうしたものでしょうか。
    大熊
      私とこに供給している長山さんは、まことに誠実な方で、学校で不自由しないよう、よく気をつけてくれています。しかも青汁業者に出せば、貫当り100円以上であるのに、学校には60円です。こんな方が学区内にいると本当に安心できますね。


 4-04-12. 栽培供給者の要件

     私ところの経験から云いますと、栽培供給者に必要な条件は、
     第一に、学校の子供のためには、と誠実な方で、人々から尊敬されるいる方であることです。
     第二に、研究熱心な方であることです。何分、ケールなどの安全清浄栽培は全く新しいことですから、人まねができず、不作となることもおこりますから。
     第三に、できれば学区内に住んでいる人であることです。そして、ただ人々の話だけでなく、校長や青汁給食の担任職員が個人的に知りあって、信用できる方である、と得心のいく人であることです。


 4-04-13. 二、三カ所から納入

    藤本
      確かにそうですね。それから、おいおい家庭の青汁や、学校や職場の青汁給食が広く普及するようになると、それだけ材料入手に苦労が伴うようになるかも知れませんので、学校に納める方を、一人とするのでなく、二、三人から、それも同じ地区でなく、はなれた地区で栽培している方から納めてもらうようにする必要があると思いますが。もし一カ所が不作となったり、事故が起ったりした場合の予防措置として。


 4-04-14. 栽培用地の要件

    大饗
      そうした措置もおいおいしなければなりませんね。が、さて、新たに栽培を委托する場合、土地は、どう選定したらよいものでしょうか。
    遠藤
      遠藤青汁の会として、青汁材料用農園の指定ということを考えているのですが、その場合、土地の要件は、まずもって農薬や人糞で汚染される恐れがない、ということです。
     それには、
     第一に、水田には、今のところ、どうしても農薬を使うので、その付近でないこと、
     第二に、果樹園その他、農薬や人糞を使う畑の付近でないこと、
     第三に、付近の畑より高い目の所であって、人糞その他の汚水が流れてくる恐れのないこと、
     第四に、新たに開墾した土地でも同様ですが、これまで使用していた畑を使う場合、必ず保健所に依頼して寄生虫などの土壌調査をすること、もし寄生虫などがいた場合は、他の野菜の清浄栽培をして、なくなるまで待つこと、
     こういったことが必要です。
     なお、土地の化学的な検査は面倒ですが、寄生虫の検査は簡単です。で、青汁材料の清浄栽培をしている畑でも、時折、検査することです。


 4-04-15. 栽培技術の指導が必要

    西田
      そうした栽培は技術的に高度なものでしょうね。材料栽培を委托するときには、同時に、栽培技術の世話もしなければなりませんね。
    遠藤
      そうです。安全清浄栽培という点からもそうですが、年中ケールなどの青物だけ作って、しかも、きらさないように、年間平均して、大量に供給する、という点からも、普通の野菜栽培の常識と異なっているので、技術的にいろいろ研究工夫する必要があります。
     倉敷西校に納めている長山さんは、実によく研究しているので、近いうち、その栽培法を公開して頂きたいと思っています。
    大森
      ところで、青汁材料には、さらに成分の方も大切ですね。
    遠藤
      そうです。ただ今、青汁材料とくに学校給食用、ケールが主なものとなっており、それにCOなどが少々加わっています。こうした品種は、成分表の上では最も優れているのですが、やはり作り方によって優劣が出てくるようです。
     実は、普通の栽培法のように、化学肥料にたよって栽培すると、成分も劣ってくるのです。有機質肥料を十分に使い、適量の石灰を施こして作ると、成分がよくなり、味もよくなり、その上丈夫に育って、虫もあまりつかなくなり、最近の問題である放射能灰の点からも有利らしいのです。


 4-04-16. 座談会むすび

    遠藤
      本日は、おつかれのところ、長時間にわたって、貴重な経験をお話し合い頂きまして、まことに有り難うございます。
     これまで、個々にお伺いして、本当に苦労の多いことと思っていましたが、こうして互いに話し合ってみると、問題は数限りなく、いよいよ骨の折れることと存じます。
     が、大熊先生でしたか、いわれましたように、そうした苦労は、子供の体にかきこまれて、丈夫に成長して、報いられることですね。ぜひ、いろいろ困難な問題を解決して、立派な青汁給食ができますように、青汁給食が広く普及する礎石と模範を作って頂きますように、お願い申します。できる限りのお手伝いもしたいと思います。(おわり)


 4-04-17. 付記

     この記事は、36年10月29日午后2時より約4時間、遠藤先生宅で開かれた座談会の概要です。不馴れなため、お話の重点や真意を十分に書き表わすことができなかったようですが、ご参加の方々のおゆるしを願いたいと思います。また読者の方々、とくに学校における青汁給食に関心をよせておられる方々には、知りたいと求めていることに書き表わせたかどうか心配です。が、これから回を重ねて開かれるようですから、だんだんと補足していきたいと思います。
    (友成左近)









ご意見・ご要望はこちらへクリック
階層リンク 田辺食品 青汁 健康と青汁 上の階層へ
サービスリンク 更新記録 全体構成 商品紹介 注文方法

Copyright 2004 02 田辺食品株式会社