<1960年7月15日発行 第47号>
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目次
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1. 療病講座 赤痢禍にそなえて
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医学博士 遠藤 仁郎
昨年は、早くから赤痢や食中毒の多発が懸念されていましたが、いかにもそのとおりで、あまつさえ方々で数百名にも上る集団発生さえみられるという盛況でした。
昔から、赤痢や食中毒は好景気にはつきもの、といわれていますが、5年つづきの豊作のあとのことです。今年も、どうやら、また随分出そうです。もっとも、このごろの赤痢は症状がかるいので、表沙汰になることは少いようですが、かくれた患者は相当多いのではないかとうたがわれます。(統計による患者数だけでも十数万をこえるほどですが、実際にはその数倍に上っているだろうといわれています)
これほど医学が進み、よい薬が次々に出来ているのに、なぜ、こうしたことが繰返されるのでしょうか。その一つには、保菌者がふえているからだといいます。(東京での調査などでは、0.6%以上だそうです。)よい薬が出来、薬屋でらくに手にはいるので、ちょっと変だと思っても、すぐに飲む。すると簡単に調子はよくなり、下痢もとまりますから、当人は治ったつもりでまたすぐ、薬はやめてしまいます。そして「なま殺し」のバイ菌は、いつまでも生きながらえて、住みついてしまい(保菌者)、たえずまき散らされます(排菌者)。そして、何かの機会に飲食物を汚染することとなりときには恐ろしい爆発的の発生をみるといった大騒ぎのもとになります。
また一つには、たしかに油断もありましょう。だいたい軽い上に、よく効く薬があるので、「たとえ罹っても世話はない」という安心感から、とかく、物ごとすべてにルーズになりがちです。そこへ、味覚をそそるうまそうなもの、珍らしいもの、しかも、どんな所で、どのようにしてつくられたかわからぬ、いかにもいかがわしい飲食物が氾濫しており、一方では危険な排菌者はふえている。と来ているのですから、じっさい、いつ、どこでバイ菌を食べさせられ、飲ませられるか知れたものではありません。
ところで、困ったことには、肝腎のこの特効薬のききめが少々あやしくなって来ました。「おかしい」と思っては飲み、「予防のためだ」といっては飲む。それを、誰れも彼れもがしょっちゅうやっているものですから、バイ菌のほうはしだいにこれに馴れて来てついには抵抗するようになります(耐性菌)。
しかもそれは、ただ赤痢に対して薬を飲む場合だけではなく、ほかの目的で使うときにも起るそうですから厄介です。たとえば、結核だとか化膿症だとかの、赤痢とは全然関係のない病気にも、赤痢と同じ薬が使われますがながくつづけているうちに腸の中に普通にいる大腸菌に耐性が出来ます。この大腸菌は、赤痢菌とは親類仲間なので、たがいに接合(二つの菌が合体すること)します。そして大腸菌の耐性が赤痢菌に移されるというのです。ますますもって新薬というものは、無暗矢鱈に飲むべきものでないわけですがともかく、こういう奴(耐性菌)には、頼みにしている薬もさっぱりききません。
これはダメだ、と次の薬にする。それも、やがてダメになる。また新しいのを使う。これもまたダメになる……。これでは、いくらいい薬が出て来ても、結局同じことというわけですが、赤痢が実は、まさにそれなんです。田舎ではまだよろしいが、薬の濫用されている都会ほど、その傾向はひどくなっています。
医者の方では、いろいろ薬の使い方を工夫したりなどしてみてはいるものの、しだいに薬のきかぬ赤痢がふえていることは紛れもない事実であります。こうなると、もう、病気せぬよう気をつけるほかありません。さてその予防法ですが、現代医学で、伝染病に対するもっとも有効な武器とされているワクチンも、赤痢ではトンと役に立ちません。頼りになる薬はないし、ワクチンもダメだとなると全くのお手上げです。そしてやむを得ず、流行の季節になると、みんながかりで手洗い励行だの、なま物や冷いものを食うなとか、食べすぎすな、腹巻を忘れるな、過労をしてはならんぞなどと、古めかしい養生法に声をからしているありさまです。
それもまことに結構なことではありますけれども、この赤痢のはびこった今日です。いかに用心はしていても、どんなことでバイ菌の洗礼をうけぬがものではありません。また今日の赤痢の蔓延はあまりに薬にたよりすぎ、あまりに消極的になりすぎた予防法のために、からだの抵抗力をよわめてしまっているからでもありましょう。そこで私は、この赤痢禍に対処するには、何はともあれ、まずからだを鍛えておくべきだ、と思います。平素から緑葉食青汁を中心とする完全食をとり、寒さ暑さにならし、何でも食べて胃腸をたんれんしておけば、たとえ少々の不養生はやってもビクともするものではありません。その上に、いわれているような注意を怠らなければそれこそ万全の備えというものでしょう。
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2. くろい米と青野菜(3) ―必要な米のくろさ―
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(以前の内容を参照)
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友成 左近
くろい米について考えてみましょう。
わが国では、昔から、米は主食として大切なもの、重宝なものです。
この頃では、どことも、かなり白く精米したのを使っているようですが、昔は玄米のまま使っていたのです。
いつ頃から精白するようになったのか、よく知りませんが、徳川時代では、江戸の上流社会で、白米めしがかなり流行していたようです。そして、当時としては全くエタイの知れない「江戸患い」というものにかかるものがあらわれたようです。また、参勤交替で江戸へ往復する高級武士にもこの病気にかかって苦労したものがあったようです。
その後、だんだん広く、白米めしが流行し始めたようですが、明治時代になって、脚気その他の病気でなやまされ、いろいろ工夫したのが海軍です。けれども当時は、まだビタミンが発見されていなかったので、脚気の原因が、主として白米めしによるビタミン不足であるとは、気がつかなかったのです。
そこで、欧米海軍の食事を参考として、肉食をとり入れたわけです。そして、いく分効果はあげたのですが、白米めしを主食としていた以上、少々的はずれであったわけです。とはいっても、明治15年頃で、病気の原因を食物に関係づけて考えたこと(高木兼寛)は、確かに卓見であったわけです。
けれども、精米機がまだ発達していなかったので、精白度もひくく、また広く人々が、そう白い米めしばかり常食していたわけではありません。ところが、大正時代にはいって、動力による精米機が発達し普及するにつれて、精白度は高くなり、広く人々は、好んで白米めしを常食するようになったのです。そして、それに伴って、脚気その他の病気でなやまされるものも多くなってきたわけです。
ところで、わが国では、大正10年、鈴木梅太郎がヌカから脚気に有効なオリザニン(B1)を発見抽出して、脚気の治療法や予防法がみつかったのです。そこで、おいしくて消化のよい白米めしを食べて、オリザニンで脚気を予防すればよい、というハイカラが現われてきたわけです。また、白米はやめて、7分づきか半つきか、それとも胚芽米か、いっそ玄米にせねば、というもの、あるいは、麦飯にせねばというものがあらわれてきたわけです。
けれども、その後、数多くのビタミンが続々と発見され、また栄養学全体も発達してくるにつれ、この頃では、はたして、白米めしを、しかも主食として沢山食べ、そこに不足しているものをビタミン剤で補ってこと足りるのか。ということが問題となってきているわけです。
すなわち、自然が与えてくれているものをただおいしくなるからといって、ひどく加工し、加工によって消失したものを、これまた加工した薬剤で補うということで、ことはすまされないのではないか、昔の人の知恵に学んで、もっと自然に近いすがたで食べることが必要なのではないか、ということです。
それなら、いったい、米は、昔のように玄米にせねばならないのか、それともどの程度に白くしたらよいのか、というわけです。これから生れて育ってくるものはさておき、私たちの胃腸にとっては、玄米めしでは、炊き方を工夫してみても、どうも負担が重くかえって消化も良くないようです。それに、炊事にも手数がかかり、口ざわりも悪く、どうもおいしく食べられないようです。
そこでビタミンその他の栄養素の消失防止、消化の促進、口ざわり、炊事の手軽さ、といった諸点をかねそなえるには、どうしたらよいか、というわけです。
まず第一、ごはんを食べる主たる目的は、熱量素となる炭水化物をとることです。もっとも、米には蛋白質その他もかなり含まれているので、沢山とれば、それ相応に、そうしたものも沢山とれるわけです。
けれども、米の蛋白質は性質がそうよくはないので、米を沢山食べて多量の蛋白質まで期待することは、あまり適切ではないのです。このため、最近の栄養審議会の答申では、米一人一日当り330グラム(31年度摂取量は363グラム)が目標となっています。そうすれば、米から1,118カロリーとれるので、基準量2,180カロリーに足りない分は麦、芋、油その他からとるようにするわけです。
ところで、空気がなければ石炭は燃えないように、炭水化物が燃えて熱量となるには、ビタミンB1B2その他がぜひ必要です。B1についていえば、その最低必要量は1,000カロリー当り0.3ミリグラムとなっています。ところが、こうしたビタミンは、米を重要な熱量給源とする以上、米以外に求めることは、かなりむつかしく、どうしても米と共にとり入れねばなりません。けれども、こうしたビタミンは、固い表皮や胚芽に含まれているので、消化がよくないわけです。そこで、こうした点を考慮に入れれば、1,000カロリー当り1ミリグラムとらねばならない、ともみられています。
そこで、米330グラムは約790グラムのめしとなるのですが、標準食品成分表をみると、精白米めし700グラム(サッと6杯)で980カロリーB1、0.14ミリグラム、7分づきめし700グラムで987カロリーB1、0.35ミリグラムです。それで、7分づきであれば、一応B1は不足しないことになるわけです。
それで、どんなに白くしても、7分までというわけですが、消化吸収上の損失その他を考えれば、もっとくろくというわけです。そして、どの程度くろくしたらよいかということは、その他の食品の取り合わせ方や、めいめいの歯や胃腸の強さ、炊き方、かみ方などによって定めればよいわけです。
(つづく)
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(以下次号)
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3. 浮腫に對する青汁の大なるききめ(下)
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(以前の内容を参照)
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富山市 S.S.
6月24日以後此の病気にて手術を受けてから1年と2ヶ月目に胆汁の滲出を見ないこと6日間に及んだ。此の6日間を盛んに滲出していた過去と比較すると、身体の活気や気分が大変に良くなったことを自識され、愈々これから胆汁瘻が閉塞するものと確信を持つに至ったが曽って入院中にも此のようなことが二三回あったけれども、それが持続せずに又滲出した失望的な経験もあり、此の際再入院して主治医が胆嚢の剔出より外に方法がないという御意見であれば、それに決めようと思って2度目の入院をした。
主治医の曰く「先づ体力を附けてかかってその結果を見て最善の方案をとろう。」と。
私の最も信頼される温良沈着な主治医先生の言葉であった。
私はそれが至極順序に腑に落ちた。入院の即日から先生の深慮ある栄養治療の方案が実施され、一意専心渾身の努力をして下されることが自らわかり誠に有り難く思った。
輸血も幾日か続いた。大小の注射は毎日六七回。かうして約40日間に体力は大いに増進して来た。そして滲出は完全に閉止した。
さて此の入院中にも毎日2合の青汁を家から持ち来らしめてその飲用を怠らず、又ジャガ薯も直ちに食事出来るようにして家から持ち来らしめ大抵の日はイモ食事を欠かさなかった。私は今や殆んど全快して大体に於て痛痒を感じるものはない。
再入院は7月始めであって8月上旬に退院したが、時は三伏の酷暑であって痩躯で之れに堪えるのは容易でなかった。唯道楽の漢詩をを以って苦熱を忘れることにつとめ、辛うじて自らを慰め過した。
併し此の慰撫は前後2回の入院中に於ても無聊を打消す好趣味であった。
病院の内服薬は退院と共に打切り青汁は休まず持続飲用し,夏時蔬菜の豊富な頃は胡瓜をおろしかきで卸し、食事の時のお菜の一品に加えた。又菜や大根の若葉、大きい葉の先の方は二杯酢にして之れ亦食事の一品に重視した。今も尚ほ然うである。要するに私の重痾はムクミを去ったことに快癒の第一歩を印したのであって、これに著効あらしめたものは青汁であったといいえよう。尚ほ近時特に血色が良くなって田上老先生や知人などから病気以前よりも顔色が良いといわれる。私も然う思っているが、之れも青汁のお蔭生蔬菜重用に基因する所と確く信じている。
最後に田上老先生が青汁の卓効の福音を伝えて下された限りない恩愛と未だ御面識を得ていないが遠藤先生の博大な智識と至厚なる仁愛の精神で之れを世人に推奨されている御熱意に対しまして衷心感謝と敬意を表します。
病褥中に賦吟したものの中から数首を左に載録さして貰い、同好各位の御一粲を得たいと存じます。
仰臥病床賦感
微呻病棟漏声長
枕側菫花徒愛傷
痛歇雖吟猶欠点
覆離被架似亡羊
33.05.22
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看護婦
急患一身日赤追
大医率下合看為
挺身看護名利外
退院誰純情不思
33.07.05
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青汁
蔬菜菁菁緑葉茎
欲生栽菜不如耕
未癒宿疾愁嘆夕
青汁霊功蘇我生
34.09.22
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宿疾
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偶成
34.05.26
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勅題「窓」
己亥頌春瑞気宸
城南隠士安清貧
病躯難奈唯危坐
斎裡凭窓拝百神
34.正月
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大寒
衾衽雖温両足蹲
睡中欲潤側妻呑
徐醒有想宸光未
硯海不流唯待暾
34.01.26
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勅題「光」
年余養病似超濤
唯恃老来意気豪
寒夜擁炉詩作楽
起望窓外月輪高
35.正月
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晩秋登于立山弥陀原
欲愛晩秋立山晴
耶嬢与息早朝行
乍飛雪襲孱顔曲
皓白粉粧美女平
34.11.22
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最後の詩は今年11月22日往復乗物を利用して立山弥陀原へ遠足した時の作です。これ程までに丈夫になったことの表われに一首載せた訳です。
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4. 発ガン物質あれこれ
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ドイツ生まれで米国公衆衛生局癌研究部のヒューパー博士は、30年前から発癌物質カルシノーゼンの研究に没頭している専門家であるが、その説によるとタバコはともかく、空気汚染は確かに癌発生因子の一つであり、また重視すべきは食物、化粧品、薬物であると力説する。
このうち食物については特にパン、ひき肉にはポリオキシエチレン・ステアレートをふくみ、これが発癌因子で、ラットの実験から膀胱癌が認められ、またバターやマーガリンに加えられる黄色色素のベーター・ナフチラミン誘導体も同様で、この色素は口紅にも使われ、くちびるから体内に浸透して発癌因子となるという。
さらに女性ホルモン剤エストローゼンも動物に癌を起させ、婦人には乱癌の原因となると主張するのを裏づけるように、米国医師協会誌の編集者タルボット博士もその誌上で、アミノトリアゾール色素で色づけられたキャンディーや野菜類は発癌物質と警告している。
(Newsweek Jan.11,’60)
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5. 腹痛治る
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玉島市 Y.S.
私6月19日腹部痛により御高診いただきまして、29日X線診断をうける予定でございましたが、ご教示の通り生野菜青汁を嗜み、かつお薬を服用いたしましたところ、23日より快き便通を見、以来病苦を忘れ、お蔭さまにて元気をとりもどし、家事に精出しておりますから、29日にはまいりません。
(34・6・27通信)
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6. 頗る元気
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東京都 T.O.
青汁のおかげで頗る元気です。(35、1、1)
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7. 青汁飲用の結果報告(その2)
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(以前の内容を参照)
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(次号参照)
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8. ベトナム便り(モーイ族のこと)
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サイゴン T.T.
4月17日新緑の日本を出発。その日の夜、西貢に到着。
以来C38−40度の暑さになれるまでには相当汗を流しました。
お蔭で体に異常なく、頗る元気でありますが、居住が決定せぬ関係上、まだ青汁と玄米飯をいただく段階に至らず、少々弱っています。いずれ落着きましたらば青汁PRは徹底的に実施するつもりでございます。
ケールの種子は所々に委託して蒔いています。写真は山に住む原住民モーイ族であります。焼畑で稲をつくり(目下新芽を出しています)、毎朝その日の食料だけ籾から二分搗きとして炊いて用います。
塩および乾魚、生野菜、木の葉、たまに獣肉などですが体格は立派なものです。ダラツト市に出てダンスを見せるに衣装を着ますが、部落では腰巻のみです。自然人には病はありません。
(1960・5・2通信より)
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9. ボーフラのわいた水
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10. 質問箱
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八百屋の青葉 松戸市 井内千鶴子
八百屋で求めます青葉ではいけませんでしょうか。
ライポン等の中性洗剤は如何でしょうか。少し心配になるのですが。
答
市販の野菜には必ず下肥がかかっています。
農薬の危険もあります。非常にていねいに洗えばよいわけですが、それでも100%安全とはいえません。(ことに浸透性の農薬はどうにもなりません)ライポンなどの洗剤も要するに洗い落すのに便利なだけで、これで消毒は出来ません。またあと洗いが充分でないと(洗剤の成分が残っていると)、長い間には悪い影響がないとは云えません。
結局きれいな水でよく洗う方が簡単で安全というものでしょう。いずれにしても清浄で安全な材料をつくることがもっとも大切です。家庭菜園または信頼できる農家への委託栽培をおすすめします。
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コラム紹介
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