健康と青汁タイトル小 <1956年11月25日発行 第10号>
 目次




1.胃下垂の人に

     医学博士 遠藤 仁郎 

     こん度は何にしようかと考えていたら、胃下垂だといって、大変心配して来た人が二三人もつづいたのでこれにすることにした。
     胃下垂だとか、胃腸下垂とか、内蔵下垂などというのは、腹の内蔵が下がっている状態でほんとの病気ではありません。しかも人間にだけしかない状態です。
     四足獣は同体が横になっていますから、この心配はないのですが、人間は直立したので、内蔵を釣っている筋ゃ、おし上げているささえが弱いと下るわけです。ですから、たいがい細長い体つき(虚弱体質)のものや、何かの原因で急に痩せた人にあるものです。
     しかし、たとえ胃や腸か下がっていても、何ともない 何の故障もないのが普通で、医者にかかったり、レントゲンでしらべたりして、はじめてわかるといったこともあります。
     けれども、また中には色々と苦痛を感じて、ひどく悩まれる人も少なくありません。これには、胃や腸の弱いことも多少は手伝うのですが、多くは感じやすい、つまり神経が過敏なためで、近頃の言葉でいえばノイローゼです。
     いいかえれば胃や腸のほんとうの病ではなくて、胃が悪い、腸が弱いと気で病んでいる病気---これが文字通りの病気といえばいえましょうが---です。
     ですから、胃や腸の下垂で苦しんでいるものはみんな神経質な人です。
     どうも胃の調子がよくない、つかえる、もたれるなどと気になり出す。
     心配になって医者にかかると、胃が下がっているといわれる。レントゲンで診てもらうともっとひどく云われる。(レントゲンで検査するのにつかうバリウムは重いものなので、胃はうんと下るから)。やっぱり胃下垂のためらしいと思い出すと、次第に亢じるように感じられ、飯ではいかんのだろうと粥にしてみる。それでもまだ変わらぬ。重湯にする。それでもまだ苦しいからと絶食したりながい間断食したりする。
     もともと痩せていたのがますます痩せる。胃の支えになっていた腹の中の脂肪も、外からの突っ張りになっていた腹の皮の脂肪もなくなって、いよいよ腹の力はたよりなくなり、食後の苦痛は一層はげしくなる。といった調子でだんだん食う気力もなくなり、偏食は甚しく、逆に骨と皮にまでやせてしまい、ほんとの病気(栄養失調症)になってしまう人もあります。
     胃や腸の下垂はほんとの病気ではありません。からだの弱いためです。からだと同様胃も腸もが弱いだけです。弱いからだでも、いたわると同時に、正しい食養をとり鍛練を加えることによって強く丈夫にすることができます。胃腸でも同じです。
     心の安定 まず病気でないこと、やり方次第で必ず治ることをよく理解し、いらぬ心配をせぬよう心を安定させること。
     腹帯 直接の苦痛を和らげるため、腹帯で下がった胃腸をささえること。腹のうすい人では折角の腹帯もすぐにずり上り、役にたたぬばかりか、却って苦しい。ゲートルの巻き方のように二三回裏返しなどするとよく支えられる。しかしこれはほんの消極的な方法で、これだけで治るものではない。
     正しい食養 胃腸の負担を軽くするため、つとめて無駄のない完全食とし、出来るだけよくかんで食べる。何を食っても飲んでもよろしい。初めは苦しいかも知れぬが、重湯でも粥でも飯でも同じに苦しいのなら、なるぺく栄養の多いもの---普通食にする。口の中で重湯になるまでかみくだくなら、重湯を飲むのと同じ筈です。分量は腹八合。少しから始めてだんだんふやして行く。青汁もぜひやることです。
     鍛練 そして一方鍛練。軽いのは腹のマッサージ、腹をさする、もむ、たたく。も少し強くは腹の運動、力んでふくらましたり凹ましたり、または腹をペコペコはやく走らす。さらに強くは腹部の体操。上体を屈伸したりねじったり、横臥していて、下肢を上下したりぐるぐる廻すなど。姿勢をよくし、全身の運動も大切。また直接胃袋の鍛練には嘔吐運動。指を咽につっこんでゲーゲーやってみる。とてもよい運動になる。 そして時には大いに食い大いに飲み、また時には飲まず食わず飢渇に堪える習練もつみ、幅の広い機能力を養うことです。



2.八十四才翁の長寿法
(同一著者の以前の投稿クリック

    福岡市 M.E. 

     私は数月前の本誌上に於て私の長寿法の概要を述べましたが、聊か重複の点もありますが、順序として其詳細を述べさせて頂きます。
     私は北大の前身札幌農学校の出身でありまして、在学中は貧乏の模範生で、卒業パッタリの仇名を受けて居りました。学生時代は自炊生活をなし、主食は挽割麦のみで、南瓜 玉葱、馬鈴薯等を朝夕味噌汁に入れ昼食は焼味噌で一貫して居りました。
     今日より之を思えば之は長寿食に近いものでした。卒業後五年ばかり農業教育に従事し其後今日まで乳牛の牧場経営に従事して居ますが、卒業後の食物は麦半米半の麦飯と多量の蔬菜類の外、少量の魚と肉は一週五回、豆腐は殆んど毎日副食とし最近、廿五年間は主食の米麦食を廃し、毎食パン四分の一斤を食べます( 欧米都会人と略同様)。
     猶私の食養生の特徴とする所は、過去五十年間殆んど一日も欠かす事なく、牛乳を毎食前二合、即ち一日六合宛を継続的に飲用した事であります。此外、朝食前は成る可く果実を食し、最近は柿葉、ホーレン草、ケール、果実、人参等をミキサーに依り青汁を製造し粗糖蜜を加え一日一合乃至一合五勺を飲用して居ます。青汁の御蔭で毛髪が黒くなりました。「ケール」は遠藤博士より種子を頂戴しましたが、多量の厩肥を敷肥とせば葉の巻かない大甘藍が出来て味もよく重宝です。
     以上は単に私の食養法丈でありますが人間の寿命は食養法のみで延長出来ない事は勿論です。私の精神養法は、私は怒る事は極めて稀です。時あって義憤を感ずる事がありますが、此場合には怒ってから一日静思し、而 後人に対して怒る事に極めて居ります。
     人に欺かしてもこれ我愚の致す所でありますから人を怨みません。家庭に於ては、家族が互に相感謝して生活して居りますから年中和気藹々たるものがあります。
     私は八十四才になりますが、物心両様の養生法に依りて身体頑健、頭脳もぼけませんが、只脚が弱り、挙動に敏捷を欠くの点は免かれません。今日猶村内には自転車を乗り廻わし、演説しても六七百人位の聴衆ならば拡声機の必要はありません。終に臨み皆様方に青汁と牛乳との御飲用を特に御勧めします。



3.川柳

    水島 T.H. 

     青汁へ自給自足の種(ケール)をまき



4.岡山県児島郡の 清浄野菜の栽培

    胸上小学校長 R.K. 

     わが国で清浄野菜をとり上げたのは昭和二年京都大学農場でタイ肥と豆粕でチシャ、セロリ−を作り都ホテルに入れたのが最初です。
     また大阪府下の一農家がイチゴの清浄栽培をしたこともあります。戦後オリンピックの東京開催に備えて清浄野菜運動が急に展開されようとしたが、第二次大戦で中断されました。戦後駐留軍や一般外国人の需要により栽培農家がふえましたが、それは本格的なものではありませんでした。
     清浄野菜のポイントは寄生虫の問題であって、昭和廿八年頃から、わが国では人糞を使用するのでどんなに駆虫剤を服用してもダメであることが世人に認識されたのです。
     洗浄野菜栽培は金肥とタイ肥のみが考えられていまが、現在全国では一カ年間に三百万トンの人糞を使用しています。その内容を分析し、化学肥料に換算してみると二百二十二億円となるので、この大きな資源をにわかに農業経営から締め出すことはなかなか困難であります。
     そこで対策としては改良野ツボを造ることであります。その経費は一基に六千円程度で、保健所に規格があります。その半額は手続をとれば補助金がでることになっています。これはニ槽になって一方側に六ヶ月間放置すれば寄生虫が死滅します。回虫は摂氏七十度でわずか二十-三十秒で死んでしまうし、またタイ肥では自然熱で除かれることになっています。
     次に食べ方として昭和二十九年の国民栄養調査によると、カロリーは増加しているがビタミン、カルシウムは減少していることが発表されています。この欠点は野菜を生食する習慣を養うことによりおぎなわれます。日本人の食生活で一人一日の野菜量は五百グラムで必要ですが、実際は二百グラムしか使用していません。
     ビタミン剤が年間百五十億円消費されることは食生活の改善が未だ十分でない証拠です。
     残念ながらわが国では生食といえば薬程度であって欧米人は多量の野菜を生食していますが、日本人は回虫、ギョウ虫、十二指腸虫などの寄生虫がいますので生食をきらっているのです。回虫保卵率は都市で五〇%、農村八〇--九〇%であって、その原因は野菜が経路であることは申すまでもありません。
     年中生食するためには計画栽培をしておくことで、まず土壌検査を保健所に依頼するのです。もし菌があれば一カ年放置し八月の炎天に露出しておけば皆無となるのです。
     倉敷中央病院の遠藤博士の青汁食は必ず清浄野菜でなければなりません。ミネラル、ビタミンは生食であるのが有効です。また製造直後に飲用する必要があります。清浄野菜は全国では神奈川、千葉、愛知、静岡各県で試みられていますが、ツケ物程度で本格的ではありません。
     清浄野菜は集団給食には是非必要です。本校の給食では清浄野菜を三カ年継続し、おかずに調理し、家庭へ啓発し、全国の保虫率平均四三%が、本校では駆虫剤を使わず一〇%に低下しています。今後皆無になると確信しています。



5.虚弱兒と青汁

     学校における虚弱児対策は、現在わが教育界の悩みの種であるが、この倉敷西小学校でおさめられた 成果こそは、これに対する明るい希望の曙光をあたえたものといっても少しも過言ではないでしょう。そしてこれを発展させることにより、児童の体位向上は約束され、健康にめぐまれぬものの減少することは間違ないでしょう。手のかかる調査と資料を提供下さいましたことを心から感謝いたします。
     倉敷市の西小学校では、かねて虚弱児対策として青汁をとりあげていたが、昨年度(昭和三〇年)は虚弱児を主とする一五〇名を対象として、毎日登校日に学校でつくった青汁を、約一合づつ飲用させ、その経過を詳細に観察した。
     年間を通じて飲用した八二名の成績は表及び図に示した通りで、青汁服用児の身長、体重、胸囲の増加率は、おおむね西校平均および全国平均を上廻っている。しかも身長の割に体重ことに胸囲の増加が目立ってよい。
     このことは現在全国的の傾向として、体重、胸囲に比べ身長ののびる、つまりひょろ長い体格になりつつあることや、この成績が主として虚弱児を対象としてのものであること、などを思い合わせると、まことに注目に値するといわねばならぬ。
     そして健康状態も著しくよくなった。食欲がすすみ好き嫌いがなくなり、夏痩もなくなった。血色がよくなり、授業中よく起こしていた頭痛や腹痛などもなくなった。風ひきが減り、軽くすむようになり、持病であった喘息やジンマシンが治ったもの、凍傷せぬようになり、クサの出ぬようになったものもある。
     そして休みがちであった児童の病欠日数もめだって減って来た。根気のなかった児童が落ちついて勉強するよになり、学業の成績も上がった。などなどと総体的によくなり、性格も明朗となり活気が出て来て頑張りもきくようになった。
     今年の夏の初の体操祭で市内二十数校の児童が市営球場に集ったとき、それはむし暑い日であったが、開会式で卒倒児が続出、救護室は超満員となり、各校とも患児の出ぬところはない有様であったが、西校だけは一人もたおれなかった。
     平素でも、以前は少しながい朝礼などでは、よくたおれる児童があったが、今年は全然こうしたことはなくなったということである。同校て目下児童二五〇名、校長以下全職員三五名が飲用している。今年度はさらにかがやかしい成果があけられることであろう。
     私どもは大いに期して待ちたいと思う。


     詳しくは 本会発行 貝原邦夫著「こどものからだとグリーンジュース」頒価五〇円をごらん下さい。








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