病腎をいたわるタイトル
    病腎をいたわるタイトル絵
    はじめに

     同じ腎炎でも経過はまちまちで、いつも蛋白は出ていながら、そのまま、何事もなく、長生きする人もあれば、わずかの間にどんどん悪化する人もある。
     どうしてそうなるのか。
     ひとつには体質の違いによるのでもあろうが、いまひとつ、養生のしかた、つまり病腎のいたわり方のちがいも、大いに関係があるように感じられる。 < 遠藤仁郎 >

    以下に続く………

目次


1-1 病腎をいたわる


    続いて………

    その原則
     一旦病気した腎臓は 抵抗力・回復力(健康力・生命力)が弱っており、無理がきかない。
     そこで、できるだけ大切に扱われなければならないわけだが、この弱い腎臓をいたわりまもるには、どんな病気の場合にも言えるように、為にならないことは出来るだけ減らし、為になることは出来るだけ増やす。すなわち、腎臓の受ける負担を軽くすることと、腎臓がはたらきやすくなるようにしてやることだ。

    負担を軽く
     負担を軽くするには、腎臓の重荷をなるべく少なくすることと、腎臓の代わりをする働き(代償機能)をさかんにすること。

    負担を少なくするには
     蛋白質・食塩をへらし、刺戟物、有害有毒物をさけること。

    蛋白質の制限
     腎臓の働きの内、最も重要なもの、したがって、もっとも負担の大きいものは、尿毒症の原因とされている蛋白質の分解産物の排泄。
     だから、蛋白質は必要の最小限にとどめ、とりすぎないようにすること。
     とはいえ、蛋白質は絶対必要な栄養分であり、病腎の修復のためにの大切なもの。
     そこで、それを少なくて済ますためには、

    1. 利用効率のたかい良質のものをえらぶこと。
      •  それは、蛋白質は多数のアミノ酸でできており、その構成が不完全(質的に劣った)であるほど多量が必要となり、それだけ腎臓の負担がますことになるからだ。

    2. 熱量源やその代謝に必要なビタミン・ミネラルが十分であること。つまり、栄養のバランスがよくと れていること。
      •  熱量源(糖質など)が不足すると、蛋白質がそれにあてられ浪費されるので、それだけ必要量がふえ、分解産物が多くなる。ビタミンやミネラルが不足すると、代謝が不完全となり、有害な分解産物ができ、また蛋白質の必要量が増すことになる。
         すなわち、食全体としてバランスがうまくとれている(とくにビタミン・ミネラルが多い)場合は、そうでない場合(不完全食)に比べ、蛋白質は少なくて済むことになり(節約効果)、それだけ腎臓の負担が軽くなる。

    食塩の制限
     食塩の排泄は主に腎臓であり、かなりの負担になる。つとめて減らす。

    その他の刺戟物
     香辛刺戟物、アルコール、タバコ、また、有害有毒食品(農薬をはじめとする生産用薬剤や各種添加物による汚染、それらの中には、腎臓を負担するものもないとはいえない)など。医療用の他の薬品類また同様。

    代償機能を高める
     皮膚、腸、肺などには腎臓の代わり(肩代わり)をするはたらきがある。

      皮膚
       呼吸・発汗などによって腎臓から出るべき老廃物が排泄される。皮膚を清潔にし、日光浴や摩擦したり、温めること、さらに発汗することで、このはたらきを高めることができ、それだけ腎臓の仕事が軽くなる。


       腸管にも、同様、老廃物を出すはたらきがあり、また、肝臓から排泄したものを運び出すことによって、腎臓の働きを助けている。尿毒症で、下痢することがよくあり、そういう尿毒症は比較的経過がながい、という事実もある。だから、腎臓の病気の場合、少なくとも便通のよいことが大切。


       呼吸によっても老廃物が出る。
       尿毒症の人の息や部屋に一種の臭い(尿臭)があるのはそのため。この働きを強めるには、深呼吸。また、歌をうたい詩を吟ずるなどは、精神的の効果もあって、いっそう有利といえよう。

    働きやすくする
     腎臓をはたらきやすくするには、腎臓の血の流れをよくすることと、その血をきれいにしなければならなない。

    血のながれ
     血の流れが十分であるためには、心臓のはたらきがよくて、血圧や血管が正しい状態にあること。

    血圧
     ここで注意すべきことは、腎炎では多くの場合血圧が上がっており、なるべく下げようとされていることだ。というのは、このさい血圧が上がっているのは、血管が痙攣(ケイレン)して細くなり、血の流れが困難になるので、それに打ち勝って十分の血を送るため、心臓が強く働き、血圧をおし上げているわけで、上がる必要があって上がっているのだ。だから、これを無理に下げると、腎臓のはたらきが衰え、かえって症状が悪くなることがある。そこで、食べ物その他の注意で、自然に下がるのはともかく、強い薬でむやみに下げるのは問題だ。

    血管の痙攣を防ぐ
     からだを冷やすと、反射的に腎臓の血管が収縮し、血行を妨げるので、いつもからだは温かくすることが大切といわれている。また、腎臓部(両腰部)を叩くとか、バイブレーターをかける。あるいは按摩、指圧、体操など機械的に刺戟したり、温罨法、懐瀘(カイロ)、電気フトンなどで温めることもよい。

    血をきれいに
     腎臓がうまく働くためには、腎臓におくられる血に、腎臓に必要なすべての栄養がそなわっており、きれいであることが望ましい。それは、ただ、腎臓の働きをよくするだけでなく、同時に、からだ中のすべての働きをよくして、体力、抵抗力、回復力(健康力、生命力)を強めることにもなるから、腎炎の場合もっとも恐れられている感染を防ぐにも大いに役立つ。
     さて、血をきれいにするには、食を正しくすることとともに、心身の過労をさけ、便通、睡眠をよくし、 適度の運動、心の安定、強化(不安動揺をさけ、確乎たる信念をもつ)など、日常生活の合理化をはかり、代謝をよくすることだが、なかでも大切なのは食の安全化・完全化=自然化。

    食の安全化・完全化
     食品はすべて安全なものをえらび、有害有毒食品(農薬その他生産用薬剤や添加物に汚染されたものや、そのおそれのある既成食品、インスタントものなど)はつとめてさけること(安全化)。そして、良質ナッパ(ビタミン・ミネラルにとんでいるだけではなく、動物蛋白に匹敵する優秀蛋白質のある)を十分そえて、栄養のバランスをよくすることだ(完全化)。
     これには、緑葉食・青汁、イモ・マメ・ナッパ・青汁食が、現時点で可能な、もっとも合理的なものではないが、と考えられる。
     すなわち、
       主食には、イモ類を主にし、雑穀、豆類の併用。
       蛋白質には、大豆を主とし、乳、卵、小魚類。
       それに、良質ナッパを主とする野菜・山菜・海藻を十分(主食・蛋白食品の2〜3倍)そえ、ナッパはなるべく多くを生食し、青汁にもする。
       青汁、1日3合(もとのナッパ700〜800グラム)以上。4合でも5合でも。多いほどよい。
       調理は簡単に。
       味付はうすく、塩分だけでなく、糖分もなるべく少なく。香辛料、化学調味料はさけること。
       嗜好品にも十分注意。
       果物 最上。西瓜(スイカ)などとくによいようだ。ただし農薬汚染のないもの。
       菓子 栄養のバランスをみだし、添加物の害もある。なるべくさける。
       ジュース類 また同様。
       茶 農薬汚染がいわれている。
       むしろ、安全な草茶(カワラケツメイ、アルファルファ、クミスクチン、キササゲ、トウモロコシ毛など)の方がよかろう。
       コーヒー 控えめ。
       コーラ よくない。このため、よくなっていたのが悪くなった例がある。
       酒類 禁。あるいはつとめて節酒。
       タバコ 禁。

    青汁絶食
     なお、時々、腎臓の完全休養をはかるため、1週間〜10日に1回、絶食ことに青汁絶食(絶食して青汁だけのむ)日を入れる。また、やや緩和な 野菜(または青汁)果物日でもよい。

     これを要するに、病腎をいたわるには、これまでに言われている慢性腎炎の養生法(身体を冷やさないこと、適度の運動、心身の安静、労働と休養のバランスをとるなど)をまもり、できるだけ腎臓の負担を軽くすることと、同時に、食の合理化(安全化、完全化)によって血をきれいにし、健康力、生命力(抵抗力・回復力)の強化をはかるよう努めることが根本であり、これを続けていれば、次第によくなり、あるいは病勢の進行はおさえられ、ドンドン悪化して透析の厄介にならねばならぬようになることは、ずっと少なくなるだろう。(1980.10)


1-2 それでがんばって下さい

     「わたしの腎臓は慢性で、調子はあまり、よくありません。少しでも悪いものを食べると、すぐ、身体にこたえます。青汁や野菜を食べなければ、おそらく、あの世行きの、油断できない状態なんです。10年前、ひどい時には断食を2週間やり、それで命拾いし、その後も、毎年、1週間か2〜3日の断食を続けています。 辛い物好きの私は、一時は、大変困りましたが、無塩食にしてからは、少しでも塩気のあるものは食べられなくなりました。時々、身体が痒くなることがあり、そのときは、バーモント・ジュースといって、リンゴ酢と蜂蜜と水をコップにいれて飲んでおりますが、すぐ痒みがとまります。ご飯・パン・うどん など食べると、悪くなるので、イモ類、野菜しか食べません。果物は、スイカ、グレープフルーツ、リンゴ、バナナ、オレンジといろいろ食べています。豆類も好きで、大豆、ピーナツ、アーモンド、ウォナツ(クルミ)、カシューナッツと、硬いものもバリバリと、少し多い目に食べています。少しもの足りなく、ご飯など食べたいですが、我慢しています。が、ときに、一口二口食べてみますと、後がいけません。痛みや痒みが出ると、すぐ断食というやり方です。私には、もう、あまり食べないようにするしか治療法はないと思っていますが、調子の悪いときには、無性になにか食べたくなります。その時には、いつも、青汁の新聞を読んで力づけられて、野菜や青汁をつくるようにしています。先生は、青汁をはじめられて35年といわれていますが、私はまだ8年余り。これからも、イモ・マメ・ナッパと青汁で、病み疲れた身体を、体質的にかえるようがんばってゆきます。」

     これは、アメリカ在住のH・ヒロカネ夫人から頂いた手紙の要旨です。
     これについて私の考えを書いてみます。

     ながい間の体験から実行されているこの食べ方は、理論上からも正しいと思います。(私の家内も、以前、腎臓をやったとき、同じようなイモ・ナッパ・青汁の無塩食で治しました。)そういう食べ方では、蛋白質が不足する、という人がよくあります。しかし、必要な蛋白質は、マメ・ナッツ類とナッパから十分補われますし、これで不足していないことは、身体の調子が悪くないことが証明しています。論より証拠です。
     次に、穀物や砂糖は差し支えないと言われていますが、これがよくないこと、そして、イモ類の方がよいことも、飯やパン、うどんより、イモの方が身体の具合のよいことが教えているとおりです。
     また、イモ類や野菜・果物では、カリウムが多いため、よくないという人もあります。それは、腎臓のはたらきがが悪くなると、カリウムが排泄されにくくなり、血中にふえて、悪い影響をおよぼす、といわれているからです。けれども、カリウムの少ない穀類や肉類を食べると、必ず体調が悪くなり、カリウムの多いイモやマメ、野菜では調子がよくなるのですから、これも論より証拠。少しも気にかけることはありません。

     イモ・マメ・ナッパ・青汁食では、なるほどカリウムは多いでしょうが、同時にカルシウムその他のミネラルや、すべてのビタミンにもとんでいます。そこで、栄養のバランスが完全にとれ、栄養分(熱量・蛋白質)の利用がよくなり、したがって、必要量が減ってくるので、そうでない場合に比べ、腎臓に対する負担が、ずっと軽くなるわけで、それがよいのでしょう。
     その他、野菜ことに良質ナッパには、まだ科学されていない大切なもの(未知因子)があるからかも知れません。ともあれ、こういう食事にしていれば、たしかに体調はよくなるのですから、そうである間は安心して、続けて下さい。そして、もし、体調がくるって来、調べてみて、血中のカリウムが非常にふえているようなら、そのとき、やめればよろしかろう、と考えます。(1978.10)


1-3 ご飯もよくない


    腎臓病にはご飯もよくないと先生はいわれますが、何故ですか。

  • ご飯はよい、差し支えない、と腎臓病の大家がいわれ、学会でも、それが定説になっています。そこで、みな、そう信じ、そう指導されています。しかし、私は、米食よりは小麦の方が蛋白の出方が少ないし、身体の調子もよい。イモ類では、さらによい。という経験上の事実から、米食はよくない。少なくともひかえるべきものと考えています。


  • 何故か。一つにはビタミンB1の不足によるでしょう。

    B1不足
     米飯といえば白米飯ですが、白米の最大欠陥はビタミンB1の不足。
     米の1カロリーに対するビタミンB1の理想量は1ガンマですが、白米100グラムには、351カロリーに対してB1は僅か90ガンマしかありませんから、大変不足しています。ところで、腎臓はB1不足だけでも悪くなるといいますし、ことに病腎はB1不足に敏感だ、といわれています。

    栄養のバランス
     つぎに、栄養全体のバランスからみると、米には、カロリーは多く、蛋白質もかなりありますが、ビタミンは、B1が乏しいだけでなく、AもCもありません。また、アルカリやカルシウムその他のミネラルにも乏しい。
     そこで、これらを補って、バランスのよくとれた完全食にするためには、良質(ビタミン・アルカリ、カルシウムその他ミネラルにとんだ)ナッパの約3倍量が必要です。小麦の場合は2倍、イモなれば半量のナッパですむのですから、バランスのとれにくいという点も、米のよくない理由といえそうです。
     もっとも、B1不足はB補給源(ビール酵母など)を加えればよい筈ですし、栄養のバランスは、ナッパの分量しだいで、完全にみたすことができますから、ナッパさえ十分ならば問題はない筈です。
     けれども、そうしていても、やはり米食は腎臓を刺戟し(尿の蛋白がふえ)、身体にこたえますから、あるいは、なにか、もっとほかの有害成分があるのかもしれません。
     こういうわけで、理由はもひとつはっきりしませんが、ともかく、経験上よくないので、学会の定説にもかかわらず、米はあまり食べない方がよい、と言っているしだいです。(1978.11)


1-4 透析について

     この広兼さんから、
     「少しづつ元気になり、人々との交際が多くなり、いろいろと用事ができ、今まで寝ていた時と違い、大変忙しい日を送っております。でも、こうして、少しづつでも仕事のできるのを幸いと感謝しております。この頃は、健康食品だ、食事法だと、いろいろ出ており、あれをやり、これをやり、失敗したり苦しんだりしましたが、やはり、今の私には先生の青汁とイモ・マメ・ナッパの食養生が確実で、健康的に一番よいと、神を信ずるように信じて、これにうちこんでいます。こうまでしても調子の悪い時には、「食べないのも養生の中」と何も食べないで、ゆっくり身体を休ませていますと、また元気になり、頭もすっきり気持ちのよい生活ができます。」
     との知らせがあり、「透析について少し教えててほしい」とあった。

      透析とは
       透析というのは、尿毒症のとき、人工腎臓という器機にかけて、血を洗ってきれいにすることです。
       尿毒症は、腎臓のはたらきが極度におとろえ、腎臓から排泄されねばならない老廃物がたまっておこる中毒状態で、そのままでは絶対助からないものですが、透析をくりかえしておれば、完全に、健康者同様の生活ができるのですから、まさに救命的の効果があるわけで、腎臓の悪い人にとっては何よりの福音です。
       けれども、透析をやりだすと、まだ多少はたらける腎臓でも、しだいにダメになります。それは、ちょうど、頭や手足を使わなくなると、ボケたり、動かなくなる(専門語では廃用性萎縮といいます)ように、腎臓も仕事をとりあげると、やがて働けなくなってしまいます。
       そこで、一度やりだしたら、生涯続けなければならない。ですから、状況がそこまで切迫していて、もう猶予できないほどになっていればともかく、いくらかでも余力が残っているのであれば、あまり急がず、むしろ、なるべく遅く始めるほうがよいのではないか、と思います。

      一つの例
       慢性腎炎で、イモ・マメ・ナッパ・青汁を中心とする食養生をすすめたことのある方の例を、あげてみましょう。

       一年あまり熱心に実行して、すっかりよくなり(蛋白はなくなり、血圧も正常)、ふつうの仕事ができるようになりました。調子がよくなると、つい、ノドもと過ぎればのたとえどおり、しだいにゆるみだし、いつしかもとの生活にもどり、つき合いの多い職業から、ご馳走づくめの日々がつづき、菓子も、酒も、タバコも、ということになってしまいました。そして、3〜4年たったころだったでしょう。調子がおかしくなって診察をうけたところ、ひどく進行しており、すぐ透析をやらねばならぬ状態だといわれた、と相談にみえました。

       私は、ともかく、もいちど、徹底的にやりなおしてみてはどうか。それでもよくならなければ、そのとき始めてもおそくはないだろう、と答えておきましたが、それから間もなく、入院して透析をうけている。との知らせをうけました。おそらく、もうどうにもならないところまで悪化していたのでしょう。それとも、現在、透析をうける人が非常に多く、その設備のある病院はどこもいっぱいなので、イザというとき、いつでもすぐにやってもらえるとは限らないのが実状だから、かも知れません。

     それはともかく、この方は、折角よくなっていたのに、不養生のため透析しなければならぬほどにしてしまった不幸な例ですが、広兼さんの場合、日本でなら、あるいは、もうとっくに透析が問題になっているのではないかと想像されますが(日本では、ちょっとやりすぎている傾向があるやに感じられないでもありません)、それが、熱心な合理的な養生で、いまだに、というより、ずっとよくなっていられるのだし、透析が必要といわれながら徹底したイモ・マメ・ナッパ・青汁食で、そのままおし通している人もありますから、いかに正しい養生が大切であるか、また、いかに油断がおそろしいかがよくうなづけましょう。
     もちろん透析が必要かどうかを決めるのは、病状や血液の検査成績によるのですから、かならず定期的に検査をうけ、そのデータを参考しながら正しい養生をおこたらないことが、もっとも賢明かつ安全というものでしょう。(1980.9)


1-5 透析と青汁

     川崎市の31歳の主婦の方から、昨年の10月に、
     「私は、腎臓が悪く一昨年から透析をしています。透析するようになったら、身体の調子がガタガタくずれ、何をする気もなくなってしまい、食欲はなく、胃の調子が悪く、おなかはいつでもボコボコ水の音がし、舌に白くコケのようなものがはえるななど、悪いことずくめです。これではいけないと、青汁を、カリウムにさしつかえない程度に飲もうと思っています。青汁のよさは十分にわかるのですが、尿があまり出ないものにはカリウムがたまり、心臓をとめてしまう、と医者からいわれています。一杯か二杯くらいならさしつかえないものと思いますが、効果的な飲み方などよい方法がありましたらお知らせ下さい。」

     といってみえた。

       透析をやるやらぬにかかわらず、尿毒症の場合、かならず野菜や青汁が問題になります。それは、尿毒症の末期になると、腎臓からのカリウムの排泄が悪くなって、血中にたまり(高カリウム血症)、そのため、病状の悪化することがあるから、野菜ことにナッパ類はカリウムが多いので、ひどく恐れられ、青汁などとんでもない、ということになるわけです。
       けれども、尿毒症にも程度がいろいろで、危険な高カリウム血症になるのはいよいよ末期の場合だけ。ですから、尿毒症というだけで、すぐさま野菜ことに青汁をとめるのは、いささか行き過ぎの感がしないでもありません。
       青汁には、なるほどカリウムは多いが、それ以外に、栄養を完全にするために絶対必要なビタミンやミネラルも、そろってたくさんあります。そこで、とかく偏食(不完全食)になりがちな腎臓食で、カリウムだけを恐れて青汁をきらい、食全体のバランスをみだし、血のにごりを強めることが、はたして当を得ているかどうか。
       それに血液のカリウムがふえておそろしいのは心臓に悪影響があることですが、この影響は、ただ、血液のカリウムが多いことだけではなく、カルシウムが減ったり、酸度が強まる(アルカリの不足)ことも関係しています。そこで、その治療には、アルカリやカルシウムの注射が行われています。
       ところで、ナッパや青汁には、このアルカリやカルシウムも、ともにウンとありますから、たとえ、カリウムが多くても、その悪影響は十分防がれる仕組みになっている、ともいえます。ですから、腎臓が悪いから野菜はダメ、青汁はいけない。危険だときめつけるのは、見当ちがいというべきですし、事実、透析が必要と考えられた人でさえ、少しも差し支えなかったばかりか、それでよくなった人もあります。それに、たとえカリウムが多くても、透析でかなりとりのぞかれもするでしょう。現に、私は懇意な透析センターの院長に試してもらいましたが、「カリウムはふえない」ということでした。
       なお、透析で体調がくずれるのは、悪いものがとりのぞかれるのと同時に、よいもの、身体に必要なものまでもってゆかれるためでしょう。で、それだけ多く補われなければならないから、なるべく栄養分のよくそろったものが望ましいわけで、それには、良質のナッパに超すものはない、と考えられるからです。
       そのうえナッパには、科学的にまだ解明されていない、しかも生命維持になくてはならない成分(未知因子)があると想像されていますから、いっそう大切といえましょう。そこで、腎炎の場合同様、透析のさいにも、少しも差し支えないばかりか、むしろウンとナッパを食べ、青汁を飲むべきではないか、と私は考えています。
       そのひとつ、さきの院長から聞いたことですが、
       透析をうけている子供は発育が阻害されるものですが、青汁をのませておくと、それが防げるというのです。とはいえ、カリウムが非常にふえれば、思いがけない事故にもなりかねませんから、病状なり、血液の検査データを慎重に見まもりながら無理をしないよう続けてみて下さい。

     と返事しておいた。

     その後、電話がかかったが、「飲んでいると調子がよく、気だるさが減り元気が出てくるようだ。」とのことだった。そして、この1月15日の通信には、
       「昨年の10月から、1日おきに横浜の青汁スタンドへ飲みにいっています。2年前、透析しだしてからピッタリととまっていた生理が、1月には、以前のように5日ありました。貧血がとてもよくなり、先生も驚いていました。一時くろずんでいた肌も白くなってきました。食欲もいくらか出てきました。でも、カリウムが高くなるので安心して飲めないので困ってしまいます。先日も、3日間で2リットル飲んだところ、カリウムが6.8になりました。」

     といって来られた。
     カリウムはたしかにいく分高くなってはいる(正常値は3.5〜5.0)。
     けれども、青汁2リットル(もとのナッパは少なくとも2.5キロ)飲んで、この程度の上がり方であれば、少し気をつければ大丈夫だし、体調がよくなっていることは疑いのないところだから、分量を加減しながらずっとつづけてゆくべきだと思う。(1981.1)


1-6 透析障害と青汁

     「透析をしている主人が浴室のタイルに足をとられてころび、大腿骨折をやりました。病院で手術し、入院中ですが、「血液のカリウムが多いから」と、青汁をとめられてしまいました。これまで、毎日5〜6本(2.5合〜3合)飲んで、とても調子がよいとよろこんでいましたので、大変不安がっています。どうでしょうか?
     また、少し貧血があるそうで、カロリーが不足してはいけないと、くだものの缶詰など糖分の多いものがよくつきます。これも気になるのですが…」
    との相談。

     「青汁のカリウムのことは、腎臓の病気の場合、いつもつきあたる問題です。ちっともかまわぬ。いや、絶対必要だと私は確信していますが、医学の通説ではいけないことになっています。
     透析の場合、とくにやかましくいわれますが、骨折の治りをよくするためにも大切なんですがナア。ご存じのように、透析で骨折しやすいのは、血液を洗うとき有害物(尿毒)とともにカルシウムが失われ、骨がもろくなっていることと、カルシウムそのものの吸収が悪くなっているからでもあります。
     それは、カルシウムの吸収に必要な活性ビタミンD(腎臓で出来る)が減っているからだそうです。そこで、十分のカルシウム、しかも吸収しやすいかたちのカルシウムがほしいわけです。」
     「薬はもらっているそうです。」
     「そうでしょう。しかし薬のカルシウムの吸収はあまりよくはありません。食べ物でもカルシウムの多いものがつかわれている筈ですが、それらにもあまりよいものがありません。例えば小魚など、酸性食品のカルシウムは利用がよくないし、アルカリ性であり吸収がよいといわれる牛乳も、熱処理してありますから吸収率は悪くなっています。その点、ナマの良質ナッパ(例えばケールの青汁)はアルカリ性が強く、カルシウムの含有量も多く(牛乳の2倍)、しかもイオン化したカルシウムなので、大変よく吸収されます。また、その他のミネラルやビタミンなど代謝に関係するあらゆる成分があり、おそらく最高最良の理想的カルシウム源といってよいものです。それが利用できないのは本当に残念なことです。
     なお、カロリー補給のため缶詰のくだものなど糖分の多いものがよくつくそうですが、これもいささか理解に苦しみます。くだものにはカリウムは決して少なくはありませんし、糖分の多いだけでもカルシウムの吸収は妨げられます。その上、栄養のバランスをみだします。また、そういう加工食品には添加物の害もさけられませんから(農薬の心配も)、おっしゃる通り、たしかに気にかかります。
     次に貧血ですが、腎臓の悪いだけでもおこります(尿毒のため)が透析の場合は、血液をつくるために必要な成分、鉄分やビタミン(葉酸)などが失われることにもよると考えられます。したがって、これらの十分な補給がのぞまれますが、これら鉄や葉酸(名前があらわしているように葉にあるビタミン)などにもっともとんでいるものは、これまた良質ナッパしかありません。」

     透析に伴う傷害には、これら骨の異常(骨折その他の骨の病変や発育障害)や貧血のほか、体調のくずれとか、いろいろな感染症、癌、肝炎、あるいは高血圧や心臓障害などがいわれていますが、いずれも、透析によってカルシウムや鉄や葉酸などのほかにも、大切な栄養分が失われるためと、それらが十分補給されていない結果に相違ありません。そこで、できるだけ完全な栄養、健康人よりもなおいっそう完全な栄養があたえられなければならず、とくに不足がちなミネラル・ビタミンの補給が大切です。もちろん、薬で補われてはいるでしょうけれども、薬になっているものだけでは決して十分ではありません。

     それは、必要な栄養分には、いままでに解明されているものの他に、まだわかっていないもの(未知成分)がいくらあるかわからないからです。私どもは、経験上、いわゆる難病 ─── 現代医学の手におえないようなものにも、青汁の大量で奇蹟的な効果のあることを知っています。が、これらは、ミネラル・ビタミンの大量効果かも知れませんが、なにか未知の、ごく僅かしかないが、これなしには本当の健康はえられないというものの効果ではないかと考えています。少なくとも、そういうものの存在は否定すべきでないと思いますが、それはもちろん薬にはなっていません。

     すなわち、わかっているものと、まだわかっていないもののすべてがそろって、はじめて完全な栄養といえるわけですが、それらのすべてが完全にそろっているものは良質ナッパしかありません。緑葉は、大地と太陽との恵みによって生命をつくり出しています。そして、野生の動物の唯一の食料であることからもわかるように、生の葉には生命を維持するために必要なあらゆる栄養分があり、しかもバランスよくそなわっています。つまり、完全無欠、完璧な食べ物です。問題のカリウムについてみても、良質ナッパはアルカリ性が強く、カリウムも多いが、同時にカルシウムにもとんでいますし、その他のミネラルやビタミンも十分にそなわっています。このことは、血液のカリウムのふえた時(高カリウム血症)の治療に、アルカリとカルシウムがあたえられるという事実を合わせて考えると、よくわかりましょう。つまり、良質ナッパにはカリウムの害を防ぐ用意がちゃんとととのっているわけです。

     しかしこのことは、良質ナッパ以外の野菜・くだものにはあてはまりません。アルカリ性ではあるがカルシウムなどが少ないからです。ですから、良質ナッパ以外の野菜・くだものではカリウムの害がおこりやすいでしょうが、良質ナッパ・青汁ではおこらないか、少なくともおこりにくい筈なんです。事実、また、透析による体調不良が青汁でよくなること。停止していた生理があらわれ順調になった、あるいはこどもでは発育が妨げられるそうですが、青汁でそれが防げるほどです。
     要するに、透析に伴う諸障害の問題は、透析によって大切なものが失われることと、カリウム故に野菜ことに良質ナッパが不当におそれられ、はなはだしい不完全栄養になっている結果であり、これをコントロールするには、良質ナッパ・青汁の活用がもっとも合理的であるといえましょう。(1986.3)


1-7 透析と生野菜

     「透析中ですが、生野菜や青汁はいけない、といわれます。」
     「生はいけない? 煮たものはいいんですか?」
     「そうなんです。」
     「透析中だけでなく、腎炎に野菜はいけない、といわれています。それは、カリウムが多いから、というんです。が、私は、「生」の良質ナッパや青汁は差し支えない、と考えています。それは、「生」のナッパや青汁には、カリウムの害を中和するカルシウムが多く、しかも、もっとも利用されやすいイオン化したかたちにあるからです。
     しかし、それは「生」の場合だけのことで、煮る(熱を加える)と、そのイオン化がこわれ、カルシウムの利用が悪くなります。事実、透析中でも青汁をすすめ(勿論血液カリウムの動向には注意しながらですが)良効を見ています。
     だから、「生」はいけない、煮たものならよい、という説には、どうも、私は同調しかねるんですがねェ。なお、そのほかにも、「生」のものだけにある有効成分がないとはいえないとも考えられます。」 (1989.9)


1-8 治りにくい腎炎

     こんなことがあった。
     知人の子息が腎炎で寝ているというので、わが家の無化肥・無農薬の野菜を持って見舞いに出かけた。ところが、奥さん、大変恐縮されて、「まことに申しわけ御座いませんが、野菜はよくないと、一切とめられていますので」とことわられ、唖然として引き下がってきた。その後、この子息、そう悪いようにもなかったらしいのに、なくなったと聞いた。

     身体は懸命に治ろうとしている。邪魔さえしなければ、大抵の病気は自然に治る筈。腎炎もそうだと思うが、どうして治りにくかったり、透析が必要になることが多いのだろう。
     邪魔が多すぎるのではないか。

     邪魔の第一は、腎臓を刺戟したり、負担になるものとして、運動、寒さ。そして食べ物では、蛋白質、食塩、香辛料などがいわれているが、これらのことはよく知られており、むしろ神経質すぎるほどに注意されているから、まず問題ではなかろう。がもう一つ。しかもあまりいわれないので、見逃されがちなのは、食べ物全体としてのあやまりによる血のにごりではないだろうか。

     腎臓がわるくなるのは、もともと抵抗力が弱いからだろう。この弱い腎臓は生まれつきもあろうが、日常生活の間の不摂生。つまり、日常生活ことに食べ物のあやまりによって招かれた血のにごりのために弱くなる。あるいは、その傾向が強められるのでもあろう。
     逆に言えば、正しい日常生活、ことに正しい食によって、いつも血をきれいにしておけば、たとえ、弱点をもっていたとしても、そうそうむやみにやられるものではあるまい。
     血をきれいにするには食の合理化・自然化をはかること。すなわち、カロリー・蛋白質と、その代謝に不可欠のミネラル・ビタミンとの釣り合いをよくすることが、何より大切だ。カロリー・蛋白質が多過ぎ、ミネラル・ビタミンが不足すると、血は酸性にかたむきがちなので、腎炎の場合、とくに十分であること(バランスのよくとれた、むしろミネラル・ビタミンに余裕のある食)が望ましい。

     ミネラル・ビタミンのもっとも有力な給源は良質ナッパだが、事実、ナッパ・青汁中心の完全食、緑葉食青汁、ことにイモ・マメ・ナッパ・青汁食で、腎炎は治りよいし、不治とされている慢性腎炎でも治り、少なくともドンドン進行することは防がれるようだ。
     それどころか、透析が必要といわれたほどのがよくなったり、透析中にあった不快症状がなくなることもある。それなのに、なぜいけないのだろう。
     野菜ことにナッパにはカリウムが多いから、というらしいが、実際カリウムがジャマになるのは、腎臓の機能が極度におかされた場合だけだろうに。腎炎とさえいえば、どんな場合でも厳禁されてしまうのはおかしいのではないか。
     あるいは、ミネラルやビタミンが必要なのであれば薬で補えばよい。その方が、危険を伴いかねないナッパより安全だ、というのでもあろうか。
     しかし、ナッパの大切さは、決してそう単純なものではない。
     それは、青葉が草食獣の唯一の食べ物であることからわかるように、青葉には生命を維持するため必要なあらゆる成分がそなわっており、しかも、理想的バランスを保った、自然のもっとも完全な食べ物。つまり、既知の栄養分はもとより、未知の、したがって薬にはなっていないものも、すべてあり、それらすべての総合効果として完全な血、そして完全な健康が保たれている。
     すなわち、青葉を食べることは自然をそのまま食べることであり(自然食)、それは、青葉全体によってのみ得られることであって、薬によっては到底その完全さをみたすことはできないからだ。
     ともあれ、良質ナッパ=無化肥・無農薬でつくられた、自然の青葉に最も近いナッパが悪かろう道理がない。ただカリウム一つにとらわれて、食全体とのかかわりを無視し、自然のめぐみをかえりみないことこそ、自然のはたらきにたいする冒涜であり、ジャマ立てではないか、と思われてならないのだが、いかがなものであろう。 (1989.5)


    カリウム量(ミリグラム)
    ソバ粉336ブタ肉250
    小麦粉130鶏肉250
    白米115牛肉245
    大豆1360タイ422.3
    アズキ1080カツオ312.8
    ゴマ480〜490サンマ280
    落花生440イカ280
    サヤエンドウ250カキ260
    ヤシガシラ492ハマグリ221
    サツマイモ455牛乳160
    ジャガイモ360鶏卵98
    パセリ1000タケノコ468
    ホウレンソウ416シイタケ(生)160
    ケール410バナナ320
    コマツナ252ミカン156
    キャベツ235ナツミカン140
    タマチシャ220リンゴ115
    大根葉152乾ノリ3800
    タマネギ120コンブ(トロロ)3500
    ニンジン47ワカメ2700
    ダイコン43
    トマト37
    キウリ16
    (日本食品標準成分表昭和39年版、ケールはシャーマン氏による)





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